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ひまわりくんの冒険

「ひまわりくんの冒険」


ある野原に、大きなひまわり畑があります。


それは、きれいなひまわり畑でひまわり達は今日も元気に顔を太陽に向かけて微笑んでいます。


そんなひまわり畑の真ん中に、一人だけ元気の無いひまわりがいました。


元気のないそのひまわりは、そのひまわり畑で一番最初に生まれたひまわりです。


周りのひまわりが心配そうに言います。


「どうしたんだい?ひまわりくん。」


「こんなに仲間に囲まれて、太陽もこんなに明るいのに何を落ち込んでいるんだい?」


ひまわりくんは言います。


「まだ、この野原にひまわりが僕一人だったころの話だけど、僕が枯れそうになっていた時に友人のもぐらくんに助けてもらったんだ。」


「また必ず会う約束して、もぐらくんは旅に出て行ったけど旅から帰ってこない。」


「もしかしたら、このまま会えないんじゃないかと考えると心配で仕方がないんだ。」


まわりのひまわり達が心配そうに言いました。


「気持ちはわかるけど、僕たちはひまわりだ。この畑でもぐらくんを待つしかできないじゃないか。」


「そんなに元気が無いと種をまけなくなってしまうよ。」


そう、まわりのひまわり達に言われても、ひまわりくんは元気がないままでした。


そして、ひまわりが種をまく季節になり、周りのひまわりはたくさんの種をまく中、ひまわりくんだけは種をまけなくなりました。


ある日のこと、地面の穴から一匹の白いヘビがやってきて、ひまわりくんに言います。


「おまえはなぜ、種をまかない。ひまわりなら種をまくのが仕事だろう。」


ひまわりくんは言います。


「僕はひまわりだからたくさんの種をまくのは当然だ。僕を助けてくれたもぐらくんともそう約束した。でも僕はもぐらくんのことが心配で仕方がないんだ。」


すると白いヘビは言いました。


「ならば、おまえが会いに行けば良いだろう。」


「おまえが昔枯れそうになった時、もぐらに助けてもらって飲んだ水は私の水だ。」


「私の水は、飲んだ者の本当の願いを一つだけ叶えるチカラがある。」


「本当にお前が願えば、もぐらに会いに行けるぞ。」


しかし、ひまわりくんは「歩く足の無い僕がどうやってもぐらくんに会いにいくんだよ。」と言ってため息をつきました。


その様子を見て白ヘビが「ならば、私が歩けるようにしてやろう」と言ってひまわりくんに襲いかかりました。


びっくりしたひまわりくんは地面から抜け出てしまいます。


ひまわりくんは逃げようとしますが、細い根では早く逃げられません。


白いヘビが「待てー」と言いながら追いかけてきます。


ひまわりくんは「ひーひー」泣きながら、力いっぱい逃げます。


逃げて逃げて目を閉じながらも必死で逃げます。


どのくらい逃げたかわからないぐらい目を閉じて逃げました。


ひまわりくんは目を開けて周りを見いいました。


するとそこは、もうひまわり畑の外です。


ひまわりくんは根を見て驚きました。


ひまわりくんの細かった根は、力を入れて必死で逃げていた間に頑丈な太い足になっていました。


ひまわり畑の方から白ヘビが言います。


「私の水を飲んだお前から取れる種には、私の水と同じチカラがある。」


「お前の種も食べた者の願いを一つだけ叶えることが出来るのだ。」


「だが、もしチカラを悪事に利用したりされたりしたらお前の足はまた根に戻ることを忘れるな。」


そう言うと白ヘビはひまわり畑の中に戻って行きました。


ひまわりくんは白ヘビの話と自分の姿に驚き、そしてオドオドしているとひまわり畑のひまわり達が言いました。


「僕たちが種をたくさんまいて、今よりももっとおおきなひまわり畑にしているから、ひまわり畑は僕たちに任せておいて。」


「せっかく立派な足を手に入れたんだ。ひまわりくんはもぐらくんに会いに行くといいよ。」


ひまわりくんは言います。


「ありがとう。僕はもぐらくんを探してくるよ。」


「そして、二人で戻ってくるからこのひまわり畑を頼んだよ。」


「このひまわり畑をもぐらくんに見せてやりたいんだ。」


そして、ひまわり達に見送られながら、ひまわりくんはもぐらくんが旅立った方向へ走っていきました。


ひまわりくんは1つ2つ峠を越えて行きます。


いくつかの峠越えて行くと、道にリスがでてきました。


リスさんは言います。


「きみはどこに行くの?」


ひまわりくんは言います。


「僕はもぐらくんを探しているんだ。」


「まずはこの道をまっすぐ進むつもりさ。」


そう聞くとリスさんは言いました。


「この先に行くと、オオカミがいるんだ。そのオオカミはこの峠で一番怖くて凶暴なんだ。だからオオカミに会ったら、怖がって走って逃げなきゃダメだよ。」


「怖がらないと、食べられてしまうからね。」


ひまわりくんは言います。


「ありがとうリスさん。」


そう言うとひまわりくんは、お礼にひとつだけひまわり畑で拾って持っていた自分の種をリスさんに渡し言いました。


「親切なリスさんに、僕の種をあげるよ。」


「僕の種は食べた人の本当の願いを一つだけ叶えてくれるんだ。」


リスさんは、驚いた顔をしたあとに「ありがとう。ひまわりくん」と言い大変喜びました。


リスさんと別れてしばらく歩いていると、怖い顔をしたオオカミがいました。


そのオオカミがリスさんの話していたオオカミなのですが、ひまわりくんはオオカミを知りませんでした。


ひまわりくんは、にこやかにオオカミに話しかけます。


「僕は友人のもぐらくんを探しているんだけど、もぐらくんは知らないかい?」


オオカミはもぐらくんのことを知っていました。


「そういえば、だいぶ前にこの道を通ったもぐらがいたな。そのことかな。海に行くと言っていたけど。」と、もぐらくんのことを思い出します。


そして、ひまわりくんに聞きます。


「なぜもぐらくんを探しているんだ?」


ひまわりくんはオオカミに今までのことを話しました。


もぐらくんが恩人であること、そしてまた会う約束をしていたがもぐらくんが戻ってこなくて探しに出てきたことを話しました。


オオカミは思います。


「僕がもぐらくんに会ったのはずいぶん前だぞ。早く海に走っていかなくちゃまた会えなくなるじゃないか?」


「早く、ひまわりくんにもぐらくんのことを教えてあげなくちゃ。」


でも、オオカミはいつも怖がらせているリスさんたちが見ているので素直に言えません。


オオカミは思います。


「ここで素直に教えてあげたら、オオカミとしての僕のイメージが崩れてしまう。僕はこの峠では恐れられてる存在なんだ。それがオオカミってもんだ。」


そこでオオカミくんは考えて、ひまわりくんに言います。


「知っているけど教えてやるもんか。早くここから立ち去らないと食ってしまうぞ。」


そう脅すと、顔を海の方へ向け、あごを動かして方向を教えようとしました。


が、ひまわりくん「???」


ひまわりくんには伝わりませんでした。


オオカミは思いました。


「解りづらかったかな。もう少しわかりやすくおしえなきゃ。」


そしてオオカミは言います。


「だから、知っているけど教えないと言っているだろ。食ってしまうぞ。」


そう言って腕を組むフリをしながら指で海の方を指しました。


が、ひまわりくん「???」


やっぱりひまわりくんには伝わりませんでした。


オオカミは思いました。


「なんて鈍いひまわりだ。」


だんだん腹が立ってきたオオカミはひまわりくんに襲い掛かりながら「早くここから立ち去って海に走って逃げないと、食ってしまうぞー。」と言い、海の方へ走って行かせようとします。


やっとひまわりくんは海へ走り出しました。


オオカミが「やっと向かったか」と安心しました。


が、ひまわりくんは少し離れたところでオオカミくんの様子を見て立ち止まりました。


全然海へ向かってくれないひまわりくんを見て、我慢の限界にきたオオカミくんはついに本音を言ってしまいます。


「だから、早く海に行かなくちゃもぐらくんがどっか行っちゃうだろうー。」


もう、リスさんたちが見ていることや、自分のイメージなんて気にしていられません。


オオカミくんは、ひまわりくんがもぐらくんと会えなくなったらかわいそうなことで頭がいっぱいになりました。


そう怒鳴ると、ひまわりくんをずっと追いかけます。


ひまわりくんはびっくりして海に向かって走って逃げます。


後ろを振り向くと、オオカミがずっと追いかけてきます。


ひまわりくんは、泣きながらずっと逃げます。


峠を1つ越え、2つ越え、3つ越え、オオカミくんはひまわりくんを追いかけ続けます。


オオカミくん怖い顔でひまわりくんに言います。


「走れー。走れー。早く海に行かなくちゃもぐらくんに会えなくなるぞー。」


ひまわりくんはずっと泣きながら走って逃げます。


そして海が見えてきました。


まだ、ひまわりくんとオオカミくんの追いかけっこは続いています。


二人ともヘトヘトです。


そして、砂浜まで追いかけるとオオカミくんは力尽きて倒れこみました。


オオカミは鼻をクンクンさせると、もぐらくんがまだ砂浜にいることが匂いでわかりました。


オオカミくんが言います。


「もぐらくんはまだ砂浜にいるぞー。走れー。」


ひまわりくんは「は、はい!」と泣きながら走り続けました。


その言葉を聞いてオオカミくんはニッコリ笑って歩いて峠へ帰っていきました。


そのころ、もぐらくんは、浜辺で夕焼けを見ていました。


もぐらくんは思います。


「ひまわりくんは元気でやっているかなー。」


「あれから、手紙もしてないから、寂しくて泣いてないといいけどなー。」


そして、もぐらくんのおなかが「グー」となきました。


お腹空いたと思い、もぐらくんは砂浜を立ち去ろうとすると、砂浜の向こうから何かが走ってきます。


もぐらくんは目を細めて、何かなーと見ています。


それは、泣きながら笑いながら走ってくるひまわりくんでした。


もぐらくんは驚きながら言います。


「ひ、ひまわりくん!」


ひまわりくんは言います。


「もぐらくーん。会いたかったよー。」


「おなか空いたろー。僕の種食べるかーい。」


そういうと、ひまわりくんから、今まで出てこなかった種が出てきました。


もぐらくんとひまわりくんは会うことができました。


もぐらくんは言います。


「どうしてここにいるんだ。野原は大丈夫なのかい?」


ひまわりくんは言います。


「今はもう、野原は立派なひまわり畑になったよ。たくさんの仲間がいるから、みんなにひまわり畑を任せて僕はもぐらくんを探しにきたのさ。」


そして、ひまわりくんは今までのことをもぐらくんに話しました。


もぐらくんを心配していたら種がまけなくなってしまったこと。白いヘビに追いかけられていたら足ができたこと。自分の種には一つだけ願いを叶えるチカラがあること。種を悪事に使われたら自分の足は根に戻ること。そして、もぐらくんを探している途中でオオカミくんにここまで追いかけられたこと。


もぐらくんは驚いて言います。


「その白いヘビは野原の神様だよ!」


ひまわりくんも驚きます。


そして、もぐらくんはひまわりくんに言います。


「ひまわりくんが僕に会いに来ることを神様が許したなら、きっと僕と神様の約束は達成できたんだろう。よかった。」


そういうと、もぐらくんは安心した顔をしました。


まわりくんはもぐらくんに尋ねます。


「もぐらくんはまだ旅を続けるの?」


もぐらくんが答えます。


「まだまださ。まだ見てないところがたくさんあるのさ。」


ひまわりくんは言います。


「それじゃ、ぼくもその旅に連れていってくれないか?」


「ひまわり畑のみんなに、もぐらくんと二人で戻る約束をしたんだ。一人じゃ戻れないよ。」


もぐらくんは微笑みながら言いました。


「じゃ、僕がおなか空いたら、ひまわりくんの種をもらって、ひまわりくんがのどが乾いたら、僕が地中から水を汲んであげるよ。」


「二人で助け合いながら旅をしよう。」


もぐらくんの言葉を聞いてひまわりくんも、ニッコリ微笑みうなずきました。


そして、二人は砂浜から歩き出し新しい場所へと旅に出ました。



それからずいぶんと時間が過ぎた頃、オオカミくんはいつもの峠に戻ってきました。


もう夜です。


ヘトヘトになりながら、元の場所に戻るとリスさんたちがやってきて言います。


「オオカミくん。君が優しいのはみんな昔から知っていたんだよ。」


「でも、君がみんなから恐れられたいと思っていたから、みんな君を傷つけないように、そう振る舞っていただけなんだ。」


「でも、もうやめないか?ぼくらはオオカミの君が好きなんじゃなく、優しい君が好きなんだ。素直になって仲良くやっていこうよ。」


そういうと、リスたちは、オオカミくんに葉っぱのコップに入れた水とたくさんのどんぐりと食べかけのひまわりくんの種を渡しました。


オオカミくんは、リスさんの言葉にあっけにとられていましたが、やがて大笑いします。


それは、自分が今まで無理をしてこだわっていたことが、実はばかばかしいことだと気づいたからでした。


道端の原っぱを笑いながら寝転がって、やがて夜空を見ながら、オオカミくんは言いました。


「なんてきれいな星空なんだ。」


「それに比べて僕のプライドはなんてちっぱけだったんだ。」


オオカミくんは、しみじみ思い言いました。


「明日から少しづつでも素直になっていこうかな。」


そういうと、オオカミくんはニッコリ笑いました。


オオカミくんの様子を見て、リスさんもニッコリ笑います。


そして、オオカミくんとリスさんは、きれいな星空を見ながら、もぐらくんとひまわりくんの旅の無事を願うのでした。



つづく。


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