冒険者
翌日、私はベッドから起きて、まずは隣の部屋にいる田畑さんを起こしに行った。
彼は起きていたが、毛布にくるまったままであった。私が来たからには、すぐに準備してもらおうと考えた。そして、私は彼から毛布を剥ぎ取った。
そこには黄色い染みがあった。
「ちょっと、寝る前にトイレに行きなさいよ。」
「ごめんなさい。」
この宿のトイレは廊下の突き当たりにある。たいした距離ではない。でも、今回は大目に見よう。おそらくこれは異世界に来たストレスが原因であろう。カルチャーショックならぬ異世界ショックだな。
「替えの着替えを置いておくから、着替えたら下に降りてきて。」
「はい」
彼が泣き目になっており、気の毒であった。髪はなく、トイレにも間に合わず、まるで赤ん坊である。ただ、彼は大きすぎるのだ。大人は失敗が許されない。心中を察する。
だから、私は彼が立ち直れるようにそっとしておいてあげた。
宿屋の下にはパブがついていて、食事ができるようになっていた。
私は目玉焼きを食べることにした。鶏の卵ではないかもしれないが、周囲も卵料理を食べており、私はとりあえずは目玉焼きを頼んだ。黄身が普通の卵よりも大きかった。口の中に入れると、なかなか味わい深く、なかなか悪くない。
私はここの宿屋は食事がうまいことを知った。
「これって何の卵でしょうか。」
愛想笑いを浮かべて私はマスターに話しかけた。
「魔鳥の卵を使ってます。」
「それってどこにいるの?」
質問が抽象的でバカっぽいと感じた。
「魔鳥ならそこら中の農場で飼っていますし、市場で買うことが出来ます。」
異世界は食事も美味しいと知り、感心した。
気に入った。この街にはしばらく滞在しよう。
私が食事を終える頃に田畑さんが階段を降りてきた。彼は顔が青ざめているように思えたが、粗相を2日連続でしたのだから、当然であるかもしれない。
「田畑さん、朝食の後は冒険者ギルドに行って仕事を受注しましょう。」
彼はうなずくだけで、虚ろであった。
彼がパンを食べるのを眺めつつ、私は彼のことを見ていた。やはり、顔がタイプである。顔がにやけてくる。
すると、彼は急いで食パンを口に突っ込んだ。案の定、彼が食パンを喉に詰まらせて窒息死しそうになったので、背中を叩いて吐きださせた。
顔を赤くし、私を睨んでいた。
彼が怒っているように見えたが、助けてあげたのだから、感謝して欲しい。
彼が食べ終わったので、私は冒険者ギルドに行った。歩いて1分であった。ギルドと宿屋はすぐ近くなので、迷うことはない。
中に入り、最初に受付嬢に話しかけた。
「冒険者になるにはどうしたら良いですか?」
「こちらをどうぞ、どうぞ」
何かSランクカードをもらえた。
「良い依頼はありますか?」
受付嬢さんはそわそわして、ぎこちなかった。新人であろうか?
すると、後ろから声がしてきた。
「東の山のドラゴンでも退治にいったらどうだ?」
「ヒガシノヤマノドラゴンですか?」
ドラゴンがいるらしい。嬉しい。ファンタジーぽいと思った。
「ああ、あんたなら竜の守る財宝をてに入れるだろう。」
コスパが良いな。財宝まで手に入る。
「分かった。そこにする。」
初めての依頼で竜退治に赴くのであった。田畑さんと私の二人でドラゴン退治である。楽しそうだ。
「ギャハハハハハハ」
笑いたいやつは笑え。仕事で私は評価されるのだ。