怪物勇者、会話する
「まめまめまめまめまー」
まずば発声練習。問題ないようだ。よし、次だ。
「出でよ、炎」
イメージするだけで火柱が生じる。これは凄い。
「血の池よ、我の姿を見せてくれ。」
池が私の姿を反射し、自分がどうなっているのかを見た。
「見た目は大して変わっていないな。良かった」
筋肉質になっていたり、髪の色が黒髪から白髪になっていても、誤差の範囲内だ。問題ない。
「それにしても、服が欲しいな。」
血の池で新たな体を手に入れて転生したが、着るものが欲しい。今は誰もいないから良いが、裸のまま町には出られない。次に召喚される奴から剥ぎ取るか。
私が復活して30分後、一人の男が召喚された。
「ここはどこだ?って、裸の女?」
どうやら日本人が召喚されたようだ。口調からすると男のようだ。見た目を言うと、年齢は20代前半、中肉中背、目鼻立ちは整っているようで、なかなか良さげだ。言葉が通じる相手なので、親近感があるが、この際、どうでもいい。
「よこせ。」
「ひ、やめてー」
まずは彼の上着を剥ぎ取り、上から着た。彼は冬服を着ていた。私が召喚されたのが初夏なので、今はそこから半年くらい経過したのだろうか。
「今日の日付は?」
「なんなんだよ、お前はー」
「黙って答えろ。」
私は転生前よりも明らかに凶暴になった。そして、気づいたら彼の首を掴んでいた。気が短くなったよ、私は。
「西暦20××年12月25日だ。」
聞き間違いじゃなければ私が召喚されてから10年が経過している。異世界は時間の流れが違うのか、それとも……
「お前の名前は?」
男が私に名前を聞いてきた。生まれ変わる前の私の名前をそのまま使うことにする。
「佐藤さくらだ。」
「あんた、外人じゃないの?というか、何でここに?」
他にも聞きたいことはあるだろうが、まずはそんなところからか。
「私は日本人だし、ここにいるのはあなたと同じで、分からない。」
気づいたら私がアラサーになっていたのもそうだが、意味不明だ。
「ここ10年の間で何か大きい事件はあった?」
「ニュース見ないから知らない。」
参考にならんな。そんなことより、そろそろ魔族が来るはずだ。あいつらに引導を渡してやろう。
「ん、二人いるぞ?」
「二人召喚されるのも珍しいな。」
「今回は俺が殺る。あの女は強い魔力と肉体を持っている。顔は残念だが、それは俺の種で孕ませてせめて子どもは美形にして産ませてやる。」
てめえごときの子どもなんているか。
「それにしても貴様はゲテモノが好きだな。やってこい。」
「王国は勇者の召喚に成功したようだし、ここ最近の召喚はデータ収集のためだからな。この施設も今年で閉鎖されるし、好きにやってくれ。」
私の力を見抜けないのか、オーク一人で乗り込んできた。
「ひー、やめてください。」
うるさい。女々しい奴、横から見ていろ。ついでに助けてあげる。
「ぐおおおおおお」
オークが咆哮を上げる。ヤル気満々だな。かなりうるさい。
「かかってこい。返り討ちにしてやる。」
転生した私の力を見るがいい……