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謁見と意思確認

「ようこそ使徒様、我らがアルトリア王国へ。私たちの召喚に答えて下さりありがとうございます」


 純白の光が止むと共に先ほどの浮遊感がなくなる。すると目の前にピンク色のドレスを着た金髪の綺麗な女性が優雅な一礼と共にそんなことを言ってきた。

 突然のことすぎて困惑しているとこちらの様子を察したのか女性が話を続ける。


「突然の召喚で困惑されていることだと思います。まず私はアルトリア王国第二王女エリシア・フォン・アルトリアといいます。早速ですが、皆様を召喚することになった理由についてご説明をさせていただきます。現在、この国は敵対している国と人類の共通の敵である魔族と戦っています。皆様にはその戦いに力を貸していただくために宝具たちの力を借りて召喚させていただきました。短い説明で申し訳ないのですがどうか、どうかお力を貸していただけないでしょうか?」


 エリシア王女が先ほどの一礼とは違い必死な感情が伝わってくるように深々と腰を折る。ふと周りを確認するとここは召喚するための部屋のようだ。エリシア王女と俺たちの間には宝具が置いてあると思わしき台座がある。逆にそれ以外にこの部屋の装飾は照明器具とエリシア王女の後ろにあるいかにも重そうな鉄製の扉く位だ。


「どうか王女様、お顔をあげてください。王女様の真摯なお言葉に心を打たれました。微力ですがこの白鷺聖也は力になりたく思います」


 一歩前に出てエリシア王女に声をかけたのは長身で年齢は大学生くらいの年齢のアイドルのような男性だ。白鷺さんの声に王女様は顔を上げる。その表情は本当に安心しているようだ。


「セイヤ様、ありがとうございます。他の皆様はどうでしょうか?」


 再度エリシア王女が問いかけると他の人たちも口々に賛成をする。この王女様は態度から誠意のようなものが伝わってくるので俺も同意を示すように声を出さずとも頷いておく。

 全員からの賛同が得られたからなのか目尻に涙を溜めながら再び深々と礼をする。


「皆様、本当にありがとうございます。皆様の待遇はこの国にいてくださる限り保証をお約束いたします。皆様にはこれからこの国の国王である父と謁見していただきます。王の間には今回はこの国の代表たちが集まっています。お疲れのところ申し訳ないのですが、もう少しだけお時間をいただきます。今から移動いたしますので皆様は私についてきてください」


 そう言うとエリシア王女は扉に手を触れるとその重そうな扉はズズッと音を立ててひとりでに開く。王女は優雅な足取りで部屋を出て行く、それを白鷺さんを筆頭に後を追う。俺たちと入れ替えにこの城と思わしき建物で働いていると思われるメイドさんたちが入れ違いに先ほどの部屋に入り、台座に置いてあると思われる宝具を丁寧に桐のような箱にいれている。俺はそれを見つつエリシア王女についていく。


 そこから何度か階段を昇り長い廊下をしばらく歩く。奥に見えた大きな扉の横には純白の甲冑をきた騎士と呼ぶしかないような格好をした人たちが立っている。俺たちが扉の前に到着すると騎士たち?は遮るように俺たちと扉の間に立つ。


「王女様、召喚の儀お疲れさまです。後ろの方々がこの度召喚された使徒様たちでしょうか?」


「はい、この10名の方々がこのアルトリア王国にお力を貸して頂く皆様になります。国王に謁見をいたしますので扉の方をお願いしますね」


「畏まりました。それでは少々、大きい声を出しますのでお気をつけください」


 俺たちに一声かけてから一礼すると騎士は大きく息を吸う。


「エリシア王女様及び使徒様方10名、王の間に入室いたします!!」


 腹の底に響くような大声を出し騎士たちは左右の扉の取っ手をそれぞれ持つと同じ速度で開く。


「それでは参りましょうか、使徒様方。国王が幾つか質問をすると思うのでそれに応えていただければ謁見は終わりますのでもう少し頑張ってくださいね」


 王の間と呼ばれる部屋はまるで学校の体育館のように広く、その奥には玉座のようなものがありそこにはエリシア王女の面影を持つ男女がそれぞれ座っている。どうやらあの2人がこの国の王様とその妻の王妃様なのだろう、王様と王妃様からは遠目からでも人の上に立つものの風格のようなものが窺える。その左右に控えているのは先ほどの騎士たちよりも装飾のある甲冑を着た騎士や華美な礼服を着た人たちがずらりと並んでいた。何人いるんだよこれってくらいの人数がこの広間に集まっているようだ。

 俺たちはそのまま前を歩くエリシア王女に続き王の間を進む。王の前まで着くと王女を優雅に一礼をする。


「国王様、使徒様10名の召喚に成功し、使徒様たちには力をお貸しいただけると口約束ではありますがお約束していただきました。私からの報告は以上になります」


 エリシア王女の言葉に国王は力強く頷くとエリシア王女に声を掛ける。


「エリシアよ。この度の召喚の儀、誠にご苦労であった。我からも使徒様たちと幾つか聞きたいことがある。少々、後ろに下がっていなさい」


「ありがとうございます。それでは失礼いたします」


 エリシア王女は先ほどと同じように一礼すると俺たちの後ろに下がる。


「エリシアから聞いているだろうが我はアルトリア王国、国王クリストフ・フォン・アルトリアだ。使徒様たちにはお疲れのところ申し訳ないのだが、もう少し我から話がある。まず確認なのだが君たちは本当に力を貸してくれるのだろうか?」


 国王の言葉によって自称神の言葉が蘇る。


『もしかしたらここにいる誰かと共に戦うかもしれない、その逆で誰かと殺しあうかもしれないから覚悟はしておいてね』


 俺たちは再度、戦うということを意識してしまった。平和な日本という国で生きてきたが故に争いごとへの心構えが全くない。ルールによって安全が保障されたスポーツなんかとは違い、ルール無用の殺し合いをすることになるのだろう。本当に必要な場面で生き物を殺すことができるのだろうかと自分自身に問いかける。

 言葉に詰まっていると白鷺さんが先ほどと同じように一歩前に出る。


「僕の名前は白鷺聖也といいます。この世界風に言うとセイヤ・シラサギです。正直なところ今はまだ戦うための心構えというものは出来てはいません。ですが、僕たちが敵国や魔族と戦わなければこの国の人々が酷い目に合ってしまうかもしれない。僕にはそれを目の前で静観できるほど人間として終わっていると思いたくはありません。なのでまだ拙いところは多々ありますが何とかこの国の力になりたいと思います」


 イケメンでこんな時にも率先して王様と話すなんてラノベの主人公にいそうな人だなと感心してしまう。よくこんな召喚された勇者のようなことが言えるものだと思う。


「セイヤ殿、そなたの思いはしかと受け取った。これからどうかアルトリア王国のことをよろしく頼む。他の使徒様方はどうだろうか?」


 みんなはまだ心が決まっていないようだ。まあ、ここいらで俺も会話に参加しておいたほうがいいのかもしれないな。ずっと気になっていたこともあることだし。このことだけはハッキリとさせておかなくてはならない。


「王様、自分の名前は麻倉恭弥、白鷺さんのように名乗るのならばキョウヤ・アサクラです。力をお貸しするというお約束の前にこちらからも質問をしてもよろしかったでしょうか?」


「かまわん。我が質問に答えることで力を貸していただける可能性があるのならば分からないこと以外は答えてみせよう。申してみよキョウヤ殿」


「ありがとうございます。自分が聞きたいことは1つだけ。自分たちは召喚の儀によってこの異世界へと召喚されました。役目を終えた自分たちは元の世界に帰ることは可能なのでしょうか?」


 俺の質問に国王は言葉に詰まる。国王の様子に大体察しはついた。


「まずは結論から述べさせてもらうと我らには返す方法は分からない」


 国王の言葉に周りのみんなが息を飲むのがわかる。俺は予想通りの答えに辟易する。


「使徒様方を不安にさせてしまい申し訳ない。この話にはまだ続きがある。国を救ったり、世界を救って頂いた使徒様の中には宝具の力を極限にまで高めて異世界転移を成功させたりスキルを昇華させて元の世界に帰ったという話もある。よって、使徒様たちの能力やこれからの努力次第で元の世界に帰ることが可能だ。送還についても使徒様に頼ることになってしまい一国の王として申し訳なく思う。すまない」


 そう言って国王は頭をさげる。その姿を見て周りの騎士や重役たちが慌てている。一国の王が自分たちが呼んだとはいえ何処の馬の骨かもわからない俺たちに頭をさげるなんて異常事態なのだろう。

 そんな状況を気にせず俺は国王に声をかける。


「お顔をお上げください。帰るための手段が存在するということだけ分かれば十分です。生きて自分の元いた世界に戻るため、自分もこの国のために微力ながらお力になろうと思います」


「ありがとう、キョウヤ殿。我らも使徒様の力以外で異世界に帰ったという記録がないかこれからも調べていくとここに誓おう」


 俺は国王に一礼して元いた位置に戻る。

 俺以外の人たちも帰る手段が存在することに多少の心の余裕が生まれたのか次々に力を貸すことを約束していく。


 帰るための手段。それはスキルが成長した先にあるものなのか、ユニークスキルによる力だったのか、俺の宝具のように進化するもののたどり着いた先がたまたまそうだったのかは分からない。帰るための方法を聞いたが案外この世界に馴染んでこの世界に残ったりするなんてこともあるのかもしれない。


 そんなことを考えていると最後の一人になったようだ。


「国王様。ボクの名前は柚木恋叶、レンカ・ユズキといいます。正直に言えば、ボクは戦いたくなんてありません。なのでボクたちに戦う術を教えてくれる人はいるのでしょうか?」


 最後の1人を見て驚く。転移前に見ていたあの美少女がまさか同じ場所に召喚されるとは思わなかった。

 ラノベとかのテンプレだと騎士団長だとか宮廷魔導師だとかが指導に当たるのが定石だよな。待遇を約束すると言っていたから大丈夫だと思うがどうだろうか?


「うむ、レンカ殿たちは平和な国から召喚されたということは言動からよく分かる。一応、使徒様方にはそれぞれ適正によって騎士団、魔法師団とに分かれて訓練をしていただこうと思っている。希望があるならば必要な知識、技術を指導しようと考えているがどうだろうか?」


「それでしたら構いません。もしそれでも戦うことができなかったりする場合は戦うのはボクたちの意思を尊重してもらうことを約束してもらえますか?」


「こちらの都合で勝手に召喚しておるから使徒様方には無理をいうことはできん。もし、戦えないと言うのならば戦いが終わるまではこの城で保護することを約束しよう」


 この王様は俺たちを勝手に召喚したという非があるとはいえどうしてここまでしてくれるのだろう?

 ただ、民のために全霊を尽くす優王であるからなのか、そうすることで将来的に利益があると見越して行動している賢王であるからなのか、はたまた唯の愚王であるだけなのかは今の時点では分からない。

 まあ、これでせっかく召喚したのだから死ぬまで戦えって言われてたら国から逃げ出すとかするところだったけどね。

 柚木さんは少し考えるそぶりをすると国王を真っ直ぐと見る。


「分かりました。ボクの心が折れない限りはこの国の為に戦いましょう」


「ありがとう、レンカ殿。これで一応は全員から同意を得たわけだが先ほど言ったとおりいつでも戦うことをやめてもいい。その時は帰る方法が見つかるまではこの国で保護することを約束する」


 一応、全員からの賛同が得られたからなのか王様は見てわかるほどに安堵している。心なしか周りのお偉い様がたも同じような感じだ。


「使徒様方、これにて此度の謁見は終りだ。色々あって混乱しているであろうにすまなかったな。皆には専属のメイドを一人ずつ付ける。必要なものがあったらその者に言ってくれ。今宵の晩餐は使徒様方だけにする予定にしている。今は同郷の者たちだけの方が心が休まることだろう。エリシアよ使徒様方を部屋へとご案内しろ」


「はい、それでは失礼いたします」


 国王はかなり俺たちに配慮してくれているようだ。エリシア王女は入ってきた時と同じように俺たちを先導するように歩く。

 俺たちは入ってくるよりもある程度緊張感がほぐれた状態でついていく。こうして異世界召喚されてすぐの謁見は終わった。




読んでいただきありがとうございます。

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次話もよろしくお願いします。

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