表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

黒い娘と白の苦悩 始終譚 その3/10

挿絵(By みてみん)


「おおっ!! キタキタぁー。白の願いは叶えられ、主人くろさまの(のぞみ)を達成するー」


 光に包まれた白の叫びが終わる頃。

 小さな猫の姿は、徐々に肥大化する。


 明るさが薄れると、そこに立つのは一人の少女。

 大きな目に、金色を含んだ白く極め細やかな細い髪が流れる。

 そして、猫耳が頭部に二つ。これはサービスよ。


 顔の造形は十代前半かしら。

 白いスーツ姿は背伸びした高校生……?

 いや、これはせいぜい中学生ね。一年生かしら? うふふ。



「なっなんでぇー!? ちょっとくろさま、若すぎますよ。それに、なんですかぁこの耳はぁー!!」


「これ以上は無理よ。要望は全部入っているでしょう?」


 彼女が想像する変身後は、成人女性のビジネスウーマンだったようだ。

 

でも……実はわかっていたのよ。

 その辺は悪魔だけに悪意を込めたの。

 ぷっ、可愛いわね。


「そんなぁー。白の威厳が……これじゃハッタリが効かないじゃないですかぁ……」


 そんな事を考えていたの……

 そこまではわからなかったわ。アホらしい。


「年齢まで変える余力は、今の私にないのよ。諦めなさい」


 嘘だけど……


 しょんぼりする白は、下を向き独り言を呟きはじめる。

 その姿を見て少しスッキリした。

 さあ、行きましょう。


「そんなに嫌なら、そのまま家に居なさい。出掛けてくるわね」


「いえー、もういいですよ。行きます。これがくろさまの精一杯ですからね。仕方がありませんよ。次です、つぎのチャンスですー」


 なんだかムカつくわね。

 でも仕方がない。すでに無駄な力の行使をしてしまったわ。

 使った力は戻らないので諦めましょう。


 部屋中のタップ式節電コンセントで電気を消す。

 最後に戸締まりを行って、再び外に出る。


「夜風が気持ち良いわね。今晩は上手くいきそうな気がするわ」


「絶対に手に入れましょー。そして、こんなチンチクリンの変な姿じゃなくて、立派な女性の姿を手に入れましょうー」


 あなたのためじゃないのよ?

 それに魂を得ても、白の容姿を変えるつもりはないわよ。


 でも勝手に勘違いしているのは彼女だから、あえて訂正もしないけど。


 気合いを入れている自分の使い魔を横目に、やっと見つけた心からの願いを持つ人物の元に向かう。


「くろさまー、飛ばれないのですか? 早く行かないと横取りされませんかー」


「歩くのは嫌いなの? 理由は……そう、万が一のために節約よ」


「だからぁー!? なんで、失敗することを前提にしてるんですかぁー。かっさらうぐらいの気持ちを持ちましょー」


 本当に面倒だわ。

 どうせダメだった方が多いのだから、無駄に存在力を使って枯渇したら困るじゃないの。でもどうせ言っても聞かないでしょう。

 もう無視よ。


「……」


「聞いてるんですかー。くろさまー」


 大きくなって猫より声量が上がったわ。

 次はネズミにしましょう。喋らない方が良いわね。


「絶対に変なこと考えていますよねー。目が怖いですー」


 騒々しい使い魔と共に、目的地に向かい二つの影は進む。

 やがて一棟の大型マンション前で立ち止まり、上部階層を見上げる。


「くろさまー。ここですか? 今回の契約者は凄いところに住んでますねー」


「ええ、そうね。彼が住んでるのは、ここの1506号室よ」


「よくわかりますねー。追跡していたなんてやるじゃないですかー。見直しましたよー」


 なんで自分の使い魔に、私は見直されているのかしら?

 しかも、微妙に上から目線で気に入らないわね。


 でも、私は心の広い悪魔だから許してあげる。

 使い魔の無礼なんて気にしないわよ。それが大人ですから。


 根拠を答えてあげる。


「別にたいしたことじゃないわ。そう悪魔の勘……」


「信憑性も、なんにも無いですー。悪魔の勘? ちゃんと追跡して確認したのじゃないですか?」


 むかっ!?


「ええ……必要ないのよ。悪魔ですから。このぐらい当然なの」


「……えっと、本気で言ってるんですかー?」


「……」


 もういいわ。さっさと行くわよ。

 こうして、二人はマンションの正面玄関に向かう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ