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014_ロザミアの想い

感想・レビューをお待ちしております。


翌日になり、ロザリミアは朝からずっと俺の工房に入り浸ってる。

何日かすればいなくなるだろうと思ったが、それでもずっと俺の工房にやってくる。


「そ、そのこれは何を制作していらっしゃるの?」

「俺が作れるのはゴーレムだけだ。今の既存のゴーレムの改良や発展が出来ないかを調べてる」

「でもアインの作るゴーレムは今のままでもよろしいのでは?傍から見てても十分、素晴らしい魔道具だと思いますわ」


単に人の手伝いや荷物を運ぶくらいのゴーレムなら、そう思ってもしょうがないかも知れないが、俺が目指してるものはもっと上だ。

エメ程じゃなくても、ある程度の自己判断で動けるような戦略的な思考が伴ったゴーレムを制作したい。

ロザミアは気になれば、こう何度も質問してくる。

俺も俺で、それに答えてしまい、都度作業が止まってしまう。

ここ数日は、まともに工房で作業が出来なくなってしまった。


「すまない、ちょっと外へ出てくる」


気分転換も兼ねて、冒険者ギルドへでも行こう。


「そ、そのわたくしはどうしたら?」

「あー、ここにいてくれ」


さすがに冒険者でもないロザミアをクエストに同行させる訳にはいかない。

[鑑定]で見たところ、レベルは20代。

歳の割には高いほうだが、俺とエメが受けるクエストでは足手まといだろう。




「ようこそ…って、アイン君!丁度良かった、ギルド長!」


何事だと面を食らっていたら、奥からガーヴェイさんが姿を現す。


「おう、アインか。丁度いい」

「丁度いいって、何だ厄介毎か?」

「ああ、今日に王都から商人の一行が到着するんだが、どうやらモンスター達に捕まったらしくな。冒険者が護衛についていたんだが、対処しきれなくて応援が入ったんだ」

「なくはない話だが、厄介な相手なのか?」

「護衛についていた冒険者達はCランクで腕は悪くねぇんだが、今回の相手がなぁ。ゴブリンキャップを筆頭に群れで襲ってきやがった」

「ゴブリンキャップか…」


ゴブリン自体はDランクと弱いモンスターだ。

だが、彼らは群れをなして襲ってくる。

それでもCランクもある冒険者なら大した事はないのだが、ゴブリンキャップはゴブリン種の上位にあたる個体だ。

おそらく上位個体がある以上、群れの中にはゴブリンメイジなどの亜種も含まれるだろう。


「了解だ、引き受けよう。報酬は?」

「おう、もちろん出すぜ。ギルドからの緊急クエストとして色をつける。それに助けた商人達からも報酬がもらえるだろうよ」

「エメもいいか?」

「マスターに従います」

「と言う事で、俺ら二人で引き受けよう。早速、場所を教えてくれ」


余談だが、ゴーレムには金がかかる。

まず核となる魔石。

これは買うとなると高い。

こうして冒険者としてモンスターを狩って、魔石を手に入れるのが手っ取り早い。


そしてボディとなる素材。

金属・鉱石類ならボディを構成する事は可能だが、より良いボディを作るなら上位の素材に越したことはない。

魔石はモンスターを狩れば手に入れられるが、ボディに関しては商人を通して買い付けるしか今の所、入手の方法がないのだ。


つまり、ゴーレム制作をするには冒険者をやらざるを得ないというのが本音でもある。


ウィレーム近くの街道からだいぶ外れた森を捜索する。

命からがら逃げてきた護衛の一人である、冒険者が情報を提供してくれたのだ。

商隊は街道を包囲するゴブリンの群れを避け、森のなかにある洞窟に立て込んでいるそうだ。


「いたな…」

「こちらも視認致しました」


洞窟といっても、そんな大きなものでもなく小さい洞と言った所だ。

せまい入り口で冒険者達がゴブリンと応戦している。

交代制で敵の侵入を防いでるようだ。


「時間稼ぎには持って来いだが、到着するのが遅かったら全滅だったろうな」


見れば、冒険者達にはかなりの疲労が見えている。

ゴブリンキャップはそれを見逃すはずはない。

良きタイミングで一斉に突撃するんだろう。


「じゃあ、やるか」

「了解」


打ち合わせ通り、俺とエメは二手に分かれる。

俺は入口付近に集まっているゴブリン達に向かって、魔法で蹴散らす。

エメはゴブリンの群れを掻き分けながら、そのボスであるゴブリンキャップを始末しに向かう。


「魔法!?」

「ちがう、これはゴブリンメイジが使えるレベルじゃない!」

「応援か!?」


商人と戦っていた冒険者達の前に、立つ。


「ウィレームの街から応援に来た冒険者だ。そっちは大丈夫か?」


後ろから安堵の声が聞こえる。


「あ、ああ、俺らは大丈夫だ。商人達も荷物も無事だ」

「それは良かった」

「あんた、一人か?」

「俺と仲間が一人いる」

「二人だけか!?それでここを切り抜けられるのか!?」

「まぁ、大丈夫じゃないか」


遠くでゴブリン達が宙に舞っている。

絶賛、エメが大暴れしている。

実力だけ言えば、Sランクにも引け劣らないからなぁ」


「ギャギャギャ!!」

「グギャァァアァ!!」

「ギャウギャウ!!」


突然の事でゴブリン達も動揺している。


「す、すげー、いとも簡単にゴブリン達を散らしているよ」

「なぁ、あんたら何なんだ!?」


ゴブリン達の惨状…いやエメの活躍ぶりを見て、安心してくれたようだ。


「この間、Bランクになったアインと、あっちにいるのはエメだ」

「アイン…エメ、どっかで聞いたような」

「お前、あれだよ!ウィレームで帝国のスパイ捕まえたって話題になっていたアインとエメだろう!」

「そ、そいつらか!しかも『鮮刃』のガーヴェイと互角にやり合ったっていう」


何だか、知らないが王都の冒険者達の間で有名になっているらしい。

あんだけ周りにバレないよう、色々やっていたのに終わってしまえばこうして話が周るのは早い。


「あんたら、ここは任せていいか?ある程度、数を減らさないとさすがのエメもゴブリンキャップに辿り着く前に状況が変わってしまう」

「ああ、ここらへんは数を減らしてもらったからな、何とか持ちこたえてみせるよ」

「頼む!」


俺は、詠唱が完了した片手剣ゴーレムの振るう。


「フレイムウェーブ!!」


炎の波が、目の前のゴブリン達を飲み込む。


「これより、討伐対象へと接近致します」


俺の攻撃で、ゴブリンの群れに隙が生まれたのを確認すると、エメはゴブリンキャップへと接敵する。

ゴブリンキャップはもうすでに逃走態勢に入っていたが、追いつかれると観念したのかエメへと向き合った。


「戦士としての誇りはありそうですね」

「ギャギャギャ!!」


エメは手に持った棍を変形させ、三節棍へと形を変える。

ゴブリンキャップに魅せつけるように三節棍を回し、ポーズを取る。

いつもあれを見るとカンフー少女だよな。

服装こそ、エメの趣味で女性っぽくしているが逆にそれがどこぞのアニメのキャラクターみたいに思わせてしまう。


「ギャーーー!!」


ゴブリンキャップは手に持った片手剣を振るう。

エメが応戦に入ったところで、俺は[鑑定]を発動させる。



【ステータス】

名前:ゴブリンキャップ

年齢:10歳

職業:ゴブリン


Lv:32

HP:869/869

MP:267/267

力:345

体力:287

早さ:367

魔力:231

運:35


【装備】

シルバーソート


【スキル】

[剣術スキル 6][人語理解スキル][指揮スキル]



まぁ、この程度のレベルならエメの相手にはならないな。

にしても、、、[人語理解]?

言葉が分かるって事なのか?



もう少し、こいつについて知りたいなと思ったが、気付けばエメがすでにボコボコにしていた。

奴の剣筋はことごとくエメの三節棍によって、振り落とされ、相手がミスった瞬間に剣を弾き飛ばしていた。

そこからは問答無用のラッシュだ。

エメが強打で吹き飛ばしたのが、俺の近くだったのでトドメをさそうと近寄る。


「…ぎゃ、みんなと…あん…しんして、、、くらしたかった…」

「何だと…?」


俺の視界のはずに写っているこいつの鑑定結果ではHPが0になっていた。

問いかけても、こいつは既に死んでいる。


何とも後味の悪い討伐だ。

群れのリーダーを失ったゴブリンは、混乱しきって烏合の衆とかしていた。


「きゃあああああ」


悲鳴のあったほうを振り向くと、ここにはいないはずの人物がゴブリン達に攫われていく。


「クソ、あいつ大人しくしてろと言ったのに」

「マスター、申し訳ありません。私も気付くのが遅くなりました」

「いや、いい。それよりも追いかけるぞ」

「了解しました」


攫っていったゴブリン達の姿は、森に溶け込み見えなくなっていた。

だが、方角は分かるので今から追いかければまだ間に合う。


「お、おい、今のは?」

「すまない、見逃す訳には行かないんだ。もうゴブリン達は散り散りになっているからもう安心してウィレームの街へ行けるだろう」

「そ、そうだな」

「エメ、護衛にまわってくれるか?」

「了解しました」


俺は後のことをエメに任せると、追いかける。




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本当に失態ですわ。

アインは待っていろと仰いましたが、きっとわたくしを除け者にしようとしてたんじゃないかと思って、勝手に後をつけさせてもらいました。

すると、アインは冒険者ギルドに立ち寄るとすぐに街の外へ出てしまいましたわら。

慌てて追いかけると、気付けばアインはゴブリンを相手に必死に戦っておりました。

わたくしも騎士学校と魔法学校で修練した身、王都の騎士達とモンスターを退治した心得があります。

アインの力になろうと戦いに参加しようとしましたが、いざわたくし一人だけで戦うとなると手が震えてまともに剣を握る事が出来ませんでした。


わたくしは今まで様々な人に助けられて生きていたという事に、その時になって初めて気付かされました。

ゴブリン達はわたくしを捕まえると森の奥へと連れて行きます。

ゴブリン達はナイフ片手に迫ってきました。

その眼はわたくしを獲物として見ている眼。

とても恐ろしく、声すらも出せずに震えました。

もう駄目だと、思ったその時、目の前でアインがゴブリンをやっつけてくれました。


「大丈夫か、ロザミア?」

「アイン!!」


残りのゴブリンもアインはいとも簡単に倒してしまいました。

わたくしの為に、戦ってくださるアインはとてもかっこよく移ります。

ゴブリンを全て倒したアインは私に。


「もう大丈夫だ」


その一言を聞いた瞬間に、わたくしは涙が溢れアインにまた抱きついて泣いておりました。

先日、アインに同じく抱きついて迷惑をかけたばかりですのに。

けれど、アインは何も言いませんでした。

抱きついた事にも、私がここにいる事も、迷惑をかけてしまっている事も。

あえて言わないアインに、わたくしは気付かされました。

わたくしは本当に足手まといなのだと。


その後、街の寄宿舎へと戻ったわたくしは再び泣きました。

アインが助けてくれた事、そしてわたくしの力不足に。

翌日になり、アインさんのゴーレム、エメさんが訪ねていらっしゃいました。

この方、本当にゴーレムとは思えない可愛さがあります。

ちょっと信じられない面持ちでいたら、彼女はわたくしの手を顔に当てさせます。

その感触は人間では無いもの、冷たい金属そのものでしたわ。


その後、仲良くお茶をしておりましたが、エメさんがふとわたくしにアインの事を話し始めました。

それを聞いたわたくしは、その話を信じられずにいました。

ですが、アインさんとずっといらっしゃるエメさんの話は嘘であるはずがない。

アインは一人で帝国と戦おうとしている。

エメさんはそれ以上喋りませんでしたが、その目はまともに戦えないわたくしは足手まといだと、そう伝えてるようでした。

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