012_エメ
ご愛読ありがとうございます。
やっぱりヒロインは必要ですよね。
「何だ、お前は!!?」
ルギウスは振り向きざまに裏拳をエメに喰らわせる。
だが、エメは片手で何なく止める。
そして掴んだ、拳を握りつぶす。
「ぎゃあああああああああああっっっっ」
バキバキともメキメキとも着かない鈍い音が聞こえる。
「ああ、これは失礼しました。私はエメ。マスターのゴーレムです」
「ああああああああああああああっっっっ!!」
「またもや失礼、手を離します」
拳を潰されたルギウスは悶えている。
「マスター、ご無事ですか?」
「何とかな。体の痺れは徐々に減っている。もう少しすれば自分で治療できるよ」
「それなら良かったのですが、前から伝えてる通り無理はされてないで下さい」
「いや、そうなんだが…」
「あなたは弱いのですから。しかも無理に相手に合わせた戦い方だけはやめてください」
「はい…」
何とか立ち上がったルギウスはこちらを向きながら、話しかけてくる。
「ご、ゴーレムだと…?まさかゴーレム錬成士だと…」
「ああ、そうだ。俺はゴーレム錬成士だ」
「ゼペットが最後のゴーレム錬成士だと思っていたが…そうか、アインか。思い出したぞ、ゼペットに孫がいた事を」
「その孫が俺だよ。全てを伝える前にジジイは死んじまったがな」
「タージュ達が殺したと聞いていたが…、生きていたのか。クソ!」
「で、マスター。あいつを殺していいですか?」
エメは無表情なまま、俺へと聞いてくる。
その表情は動かすことが出来ないが、すさまじく怒っているのを感じる。
俺が危険な目に合うことが、エメにとって一番嫌な事らしい。
「俺もそうしたいが、殺すのはダメだ。生きていればいい」
「善処します」
エメは俺が与えたアイテムボックス型ゴーレムから長い棒を取り出す。
俺が作った、特殊な棍だ。
「では、まずは足を潰しましょう」
「ふざけるなぁっ!!」
ルギウスは速さに自信を持っている。
だが、エメの前では無理だろう。
「な、もう追いつくのか!?」
「うるさい。まずは足を潰します」
持っていた棍を回転をつけて、勢いのまま足へとめり込ませた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっっっ!!」
「反対側も潰します」
そして反回転し、棍を逆に足へと叩きつける。
「がああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!」
距離を取ると、根を回転させポーズを取る。
エメなりに毒攻撃を警戒しているようだ。
「な゛んで、ごんな゛小娘が…」
2年前、俺は一度エメを失った。
ハノンの街で再起を図った俺は、エメの体を新しく作り直した。
もう二度とエメを失いたくない一心でエメの新しいボディは、俺が思った以上の性能になった。
都度いい素材が手に入ればエメへとつぎ込んでいった結果、とんでもない化物級になっていた。
【ステータス】
名前:エメ
年齢:4歳
職業:ゴーレム
Lv:--
HP:1556/1556 《2136/2136》
MP:232/232
力:1145 《1627》
体力:1256 《1948》
早さ:943《1316》
魔力:156
運:47
【装備】
変形棍型ゴーレム[棒術スキル 7]
【スキル】
[自動HP回復スキル][自動MP回復スキル][隠密スキル][隠蔽スキル][魔壁スキル][頑強スキル][金剛力スキル]
「ぐぞぅ、ごんな゛どごろで…!」
「次は腕ですかね。厄介な能力もお持ちですし、入念に潰しましょう」
「頼むから、殺すなよ、エメ」
「善処します」
ボリスの兵が到着するまでの間、俺はルギウスの悲鳴を延々と聞くことになった。
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「今日は呼び出して、すまないね。アイン」
「いえ、こちらこそ再び男爵様とお話出来るとはありがたい限りです」
「いやいやそれはこちらの台詞だよ、アイン。まさか冒険者ギルドに帝国の間者が入り込んでいるとは…。このウィレームの街を救った英雄と言っても過言ではないよ」
「…俺にはそんな資格ないですよ」
「何を言う。君がいなければ、今でもこの街の人間は帝国へ送られていたんだぞ?自身の功績は胸を張って答えた方がいいぞ」
「はい、覚えておきます」
その後、ボリス男爵と歓談した。
どうやら、この数日の間にギルド長が老衰で無くなってしまったとの事だ。
彼はルギウスの悪事には気付いていたのが、体が動けなかった事とルギウスによって監視されていたせいで身動きが取れなかった。
今回の件を報告を聞いたギルド長は満足して、その翌日には亡くなった。
「アイン、僅かばかりだが謝礼を用意した」
受け取った袋を開くと金貨が大量に入っている。
「すまない、地方の男爵だこの程度しか用意出来なかった」
「そんなとんでもない!いち冒険者にこの金額は」
「受け取ってくれ、ここで断られたら貴族の恥になる。それ以外に私に出来る事はないか?」
「では…」
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事件が収束したので、やっと冒険者ギルドへと顔を出した。
「すいません、この街で登録変更をお願いします」
冒険者は各街ごと所在地の登録をし直す。
どのランクの冒険者がどの街にいるかを把握する為だ。
「はーい、ギルドカードの提出をお願いします。って、あれアイン君?」
現れた受付嬢は俺らがよく知っている人物だった。
「あれ、ハノンの街の。えーっと」
「リディよ、リディ!2年も一緒だったのに忘れたの?」
「アハハ…」
「もうアイン君もいい年齢になってきたんだから、女性への扱いに慣れた方がいいわ」
「すいません」
「まったく」
「で、何でここへ?」
「それがさ、どこかの冒険者がここの副ギルド長を逮捕したらしいのよ。聞けば、その副ギルド長は帝国のスパイらしくてさ。その上、ギルド長は老衰で亡くなって、ここの受付嬢の方は先日退職しちゃって。人手が足りないから隣街の受付嬢である私が派遣されたってわけ」
「あー、それは…」
「もしかしてアイン君、関係あるの?」
「まぁ…」
「ここの不正はマスターが正されました」
「ちょっと、エメ余計なことを」
「はぁ…、やっぱりあなただったのね」
リディさんはため息混じりにそう答える。
何だか申し訳ないな。
「すいません、リディさんにまでとばっちりがいって」
「まぁ、それは気にしてないからいいんだけど。それよりもアイン君!ここで会ったのが運命ね。今度こそ、ランク昇格を受けてもらいますからね!」
『風の手』への復讐を果たすために、ランク昇格を止めていたんだ。
もうそれをする必要はない。
「はい、いいですよ」
「あれ、いいの?てっきり断られるかと思ったんだけど」
「さすがにそろそろいいかなと」
「それは良かったわ!フフフ、アイン君がこうしてどんどんランクを上げてくれるなら…」
リディさんの目つきが怪しい。
「で、今日は他に用事は?」
「いえ、今日は登録変更だけで大丈夫ですよ」
「そう、分かったわ。じゃあ、明日ギルドへ来てもらえる?試験について、内容を詰めておくわ」
「分かりました」
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「おら、立てよ、小僧!」
「クソ」
えーっと何でこんな事に…。
翌日、ギルドへ言った俺らはいきなり今日が試験だと伝えられた。
そして出てきたのは新しいギルド長。
それもただのギルド長じゃない。
先日、冒険者を辞めてギルド長へと上がった元冒険者。
Sランク『鮮刃』のガーヴェイ。
年齢は50と、冒険者をやめるには遅すぎる年齢くらいなのだが、その肉体も技も衰えていない。
「おい、一つ聞いていいか?」
俺は立ち上がりガーヴェイさんへと質問する。
「何だ?」
「俺が作るものや、持ち込んだものを使うのは有りなのか?」
「ああ、有りだ。作った物も手に入れた物は全てその冒険者の実力で手に入れた物だ。それをどう使おうが、構わねぇ」
「フフフ、それはありがたい」
「余程な物を持ってるようだな?」
「俺の本来の力だからな」
しかし、こんな事なら事前に用意しておけば良かったと思うのだが、仕方ない。
スキルを発動させる。
[擬似錬成]
ゴーレム錬成スキルの一つ。
魔石や素材などを持たなくとも、MPのみでゴーレムを錬成出来る。
ただし5分程でそのゴーレムは消滅してしまうのがしょうがないが。
「[擬似錬成]。素材はミスリル。魔石ランクB。"emeth"!!」
構成する物質などによって、使用するMPは変わる。
より良い素材でスキルを発動すれば、MPはかなり喰われる。
俺の近くに錬成陣が組まれ、中からミスリルゴーレムが出現する。
組み込んだスキルは格闘とステータス補正スキルを幾つか。
「ほほー、それがゴーレム錬成って奴か」
「ああ!何を使っていいと言ったな。悪いが二対一でやらせてもらう!」
ゴーレムと共に攻撃を仕掛ける。
「くっ、さすがに二対一だと分が悪いか…!!」
ゴーレムとの連携は何度も訓練した。
俺が得意とする戦い方の一つだ。
「ちっ、これで試験は終わりだっ!!!」
ガーヴェイさんは剣を構える。
だがさっきまでとは雰囲気が違う。
その気配を察知し、ゴーレムを盾にしさらに防御をする。
ブンッ
放たれた斬撃は血のように赤く鋭い一撃だった。
それを喰らったゴーレムはミスリル体にも関わらず、砕け散る。
威力が半減していたが、防いだ俺の手は衝撃で上がらずにいた。
「すげー、あれが『鮮刃』と呼ばれたガーヴェイさんの技だ」
「けど、あの小僧も元Sランク相手にすごいよな」
周りに集まっていた見物客から歓声があがっている。
「おう、小僧、生きてっか?」
「あ、ああ。つーか、そんなに強いのに元冒険者ってどういう事だよ」
「何言ってやがる、この技を防ぐっていう奴はほとんど見た事ないぜ。ったく、俺の衰えを感じるよ」
「衰えって。もっとギルド長ってのは前線に出ない奴だと思ってたんだけど」
「ハハハ、そういう奴もいるが俺は違うってこった。で、次だ次」
「このまま、戦うって事か!?はぁ、戦闘狂だな、あんた」
エメはゆっくりと近づいてくると、ガーヴェイさんの前で立ち止まる。
「ほぉ、話には聞いてるぜ。嬢ちゃん自身がゴーレムなんだってな。まぁ、冒険者登録出来たんだ。俺はそんな細かい事はツッコまねぇ。実力を見せてくれりゃあいい」
「いいでしょう。あなたを地獄へ叩き落としてあげます」
あ、やばい、キレてる。
俺がやられたのがムカついたらしい。
「ハハハ、いい根性だ!冒険者はこうでなくっちゃな!」
「ちょ、頼む!ギルド長、ちゃんと試験で途中で切り上げてくれ!エメも試験だって事を忘れるな!」
「善処します」
試合が開始されるとエメは本当に、本気での一撃を打ち込む。
だが。
「まさか私の攻撃を受け止めるとは…」
「くぅっ、嬢ちゃんの攻撃はかなり効いたぜ」
今回の試験はウィレームの街での語り草となった。
俺の戦いもそうだが、その後の大笑いしながら本気で打ち合うギルド長と涼しい顔をして攻撃を続ける少女。
確かに旗から見たらおかしな光景だ。
「さて、お前らの試験結果だが」
場所は移して、ギルド長の執務室へとやってきていた。
「アイン、エメ。お前らは両方共、今日からBランクだ」
「Bだと?待て待て、試験の内容はDランク昇格じゃないのか?」
「んー、まぁそうなんだが。先日の一件で、アインのギルドへの貢献っていうのはかなりのもんだ。それにお前らの実力はDランクなんてもんじゃねぇ。いや、本当はAランク、ひいてはSランクも狙えるんだが。それは地方支部じゃ勝手に出来ないからよ」
「はぁ…だから、一気に上げるという事か」
「まぁ、悪くねぇ話だろ?ギルドのややこしい問題で有能な人材が潰されるよりは全然いい」
この人なりの配慮だろう。
ありがたく、受け取る事にしよう。




