93 壁役の生き様
エンタリウム歴30年11月1日
side ポトフ
俺の名はポトフ。
ケチな盗人だったが貴族様のものを盗んじまっておまけにへまして壁行になったもんだ。
壁行が決まって、フォークキャンスに連行されることなり、道中必死に脱獄しようとしたのがもう遠い昔の出来事みてぇだ。この町は今度大戦で壁役をやらされる奴が集められた、いわば肥溜めみてぇなとこだ。
ガンガンガンガン!!
朝4時、起床の時間だ。
同室の奴らを起こして回る。
「モック、パンメシ、ガンガ起きろ!くいっぱぐれるぞ!」
1室4名、一番最後に入ってきた奴が世話役っていう雑用をやらされる役だ。
俺はこの部屋で最後に入室したからな、ずっと雑用係だ。
『わーったよ。』『もう朝かよ、かったりぃな。』『ねみー。』
同室の奴らを起こしたら、第7師団の奴らが点呼に来る。
壁役は奴らにも必要な消耗品だからな。
減ってたら洒落にならんってことで毎朝点呼がある。
牢の中の見えるところで整列。
そのまま、待機してると奴らが見回ってくる。
「209号室、モック、パンメシ、ガンガ、ポトフ!
以上4名揃っております!」
揃ってることが確認されると牢の扉が開けられる。
各牢の監察官は2名。
前に一人ついて、もう一人は最後尾だ。
「イチニ!イチニ!イチニ!イチニ!」
俺の号令に合わせて手と足をしっかり振り上げ歩く。
少しでもきびきびしてないと判断されたら監察官から棒で思いっきり叩かれる。
1人でもしっかりしてないと連帯責任で全員叩かれる。
同じ日に2回牢の誰かが注意されたら、もう飯抜きだ。
もう、何度も食らったからな。
さすがにヘマはしねぇよ。
10号室づつ40人集められたら今日の朝勤務の前に体操だ。
この時も同じく、一人でもきびきびしてなかったら棒でぶっ叩かれる。
まぁ叩かれるのはきびきびしてないって理由だが、正直監督官の機嫌次第ってとこが多々ある。
このときはいくら叩かれても飯抜きにはならねぇから、気に入らねぇ奴がいたときは、体操でわざと手や足をぶつけて吹っ飛ばして、監督官に叩かれるように仕向けたりするやつもいる。
まぁ俺は立ち回りがそこそこ上手いからその辺は免れてるが。
体操が終わると今度は朝勤務だ。
勤務なんていってるが、壁役として体力をつけさせるってのが名目だからやらされる内容は酷い。
同室の4人を2人ずつ2グループに分けて片方が、監督官が持ってる棒の長さまでひたすら掘る。
そこまで掘ったら今度はもう片方が埋める。次は役割を交代する。
これを10セットだ。
朝礼に間に合わないやつらは飯抜き。
正直気が狂いそうになる。
狂っても壁役として使えりゃいいって判断だから、やつらにとっちゃどうでもいいことなんだろうがな。
それが終わったら今度は朝礼だ。
さっきの40人が合流して監督官のリーダーから話を聞かされる。
大した話じゃない。
お前らは屑なのにまだ生かしてやってる、だから俺たちに日々感謝しろってなことを言葉を変え言ってくるだけだ。それが終わったら感謝の万歳三唱。
今日は俺からだ。
『万歳三唱!!!始め!』
監督官のリーダーの合図で始めだ。
「本日も総督閣下のご威光により生かさせて頂いております!
誠にありがとうございます!
その感謝を込めて!!
ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」
『『『ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!』』』
各牢で一人づつ持ち回りで出して合計10セットだ。
真面目にやらなかったり、声が小さかったら当然棒叩きで飯抜きコースだ。
それが終わると漸く飯の時間だ。
「イチニ!イチニ!イチニ!」
食堂は40人ずつで、他の奴らとは会えないようになっている。
反乱防止のためらしいがな。
移動は全部イチニイチニの行軍だ。
食堂についたら40人が部屋番号順に並ぶ。
列を乱す馬鹿はいない。
どうなるかもう散々分かってるからだ。
順番が回ってくる。
芋の煮っ転がしと、くず肉が入ったスープ、それと鬼のように固いパンだ。
座る席も、部屋番号順で決められてる。
皆が席に着くと、監督官のリーダーから朝にも聞かされた文句を聞かされる。
その後
『始め!ピッ!ピッ!ピッ!・・・。』
と監督官のリーダーが吹く笛の音に合わせて飯を食べる。
所謂三角食べってやつだ・・。
破ると飯は没収される。
どいつか破る奴はいないか監督官が一斉に俺の食事風景を監視するってわけさ。
5分ほどで笛が終わる。
飯の時間はこれで終わりだ。
食べ終わってないやつは罰則で棒で殴られる。
飯を大事にしないやつはありえないってことだ。
飯が終わったら今度は本当の勤務だ。
まぁ畑の耕しと収穫、屑鉄溶かし、ごみ処理等、牢で同室4人が一つの班として扱われる。
班ごとに勤務の内容は毎回違う。
一番きついのは畑の収穫だな。
絶対に収穫物をちょろまかそうとしてくると確信を持っているらしく、監視体制が尋常じゃない。
収穫物ちょろまかしは、最も罪が重い。
もしばれたら、試し切り用へ直行だ。
同室の奴らも試し切り用へ直行ではないが、独房行だ。
それでも腹が減ってる奴はやる。
ばれた奴も何人かいた。
運よくその場はばれなくても、調子に乗って何回もやるから結局ばれる。
そいつはもちろん帰ってこなかったし、独房にいったやつも怪我が酷く、そのまま死んでいった。
まぁ死んだ方が幸せかもしれねぇけどな。
昼食を食べ、同じように勤務をして夕飯へ。
それが終わったらシャワーの時間だ。
シャワーはシャワー通路の中を行軍するだけだ。
入口で水石鹸を受け取り泡立たせ、上部から水が流れてくるからその中を行軍しつつ洗う。
それで終わりだ。
シャワーが終わると、その日の予定はすべて終了。
この時点で19時らしい。
消灯は21時。2時間だけそれぞれの牢の中で自由時間だ。
その2時間だけ私語が許される。
疲れてる奴は寝ちまうけどな。
こんな生活をもう2~3か月続けてるんだろう。
もう日数間隔がないから詳しくは分からねぇ。
生きててもしょうがねぇって、自殺する奴の気持ちもわかるぜ。
真面目に規則正しく生活する理由が壁役として立派に切り殺されるためなんだからな。
壁役として死に損ねた奴はそのまま試し切り用行なんだと。
つまりどうやっても死ぬしかねぇってわけさ。
やってらんねぇってのが正直なとこだ。
脱走しようとしたやつは星の数ほどいたらしいが、成功件数は0らしい。
本当かどうかは知らねぇけどな。俺が見たわけじゃねぇ。
だが、第7師団のやつらは正規軍だ。
ちょっとやそっとじゃ上手くいかねぇのは分かってる。
そんなことをつらつら考えたが今日はいつもと違うことがあった。
19時半ごろくらいか、モックが話始めた。
唯一の自由時間でも一言も話すことも無く寝るのも結構多い。
疲れてるからだ。だが今日は違った。
『もう我慢ならねぇ。こんなことやっても結局死ぬんだぜ?
なら、やる意味がないってもんだ・・。』
モックが言うとすぐに反応するやつがいた。
パンメシだろう。
『確かにかったりぃよな。
俺もやってられねぇとは思うが、じゃあどうするんだって話だ。』
『ンゴーンゴー。』「すぅーすぅー。」
ガンガは既に寝てるようだな。
俺も寝てるふりしておいた。
間違いなくやばい話だろう。
『起きてるのは俺らだけらしいが、パンメシ!一か八かに賭けねぇか?』
『お前に策があるなら乗ってもいいぜぇ。』
周りを見渡し小声になるモック。
『やるなら、ごみ処理のときだ。
焼却したゴミを川に投げ捨てる時に一緒に川に入って逃げる。』
『今までやったことのある奴は多そうじゃねぇか?』
モック同様に小声になったパンメシ。
『今寝てる二人も川に放り込んで、囮にしようぜ。どうせついてくるしかねぇ。俺らが抜けたら独房行だ。』
巻き添えにしようってか。あめぇな。俺がそんな阿呆なことに付きあうかよ。
それにお前らは知らねぇだろうが、ごみを捨てる川には水の中に槍がびっしり並べられてる。
飛び込んだら、囮を出してようが何をしようがお陀仏だぜ・・。
単細胞はこれだから困る。
『そりゃいい手だモック。このまま死ぬならそれに賭けてもいいか。
決行は今度のごみ処理の日だな。』
『ああ。それまでこの話題は無しだ。怪しまれるからな。寝るぜ?』
『分かったぜモック。俺も寝るわ。』
さて、当然一緒に地獄行なんて勘弁願うが問題はいつ監督官に告げ口するかだ。
同室4名は基本ずっと同じ行動だ。
トイレだって牢の中だ。
うーむ。
決行日が近くなったらモックもパンメシもピリピリするからいつもと違う行動を取るのは無理だろうな。
次のごみ処理は5日後だ。
なら明日だな。
何とかうまくやれるといいんだが。
翌日、昼食後の勤務のときに俺は腹痛を催したことにした。
「いてえええ。はらがああ。」
他の3人は嘲笑する。
『馬鹿が、土でも拾い喰いしたんじゃねぇか?』
『ちげーねぇ。』『柔すぎるな。』
俺が痛がってるのをしばらくうっとしそうに見ていた監督官は、俺がずっと痛がってるのでしょうがなくこっちに来た。
『貴様らさぼるんじゃない!お前が原因か!このクズが!』
他の3人は巻き込まれは御免だと作業に戻って行った。
監督官達が棒でひたすら殴りつけてくる。
「いてぇ、いてぇんだ、せめて便所でいい!いかせてくれええ!」
『うるせええ!このクズが!てめぇらは生きてるだけでありがたいと思え!』
もうぼろぼろだった。加減をせずにひたすら殴りつけられ続けたせいで意識が朦朧とする。
監督官達は、大分すっきりしたのか、しょうがねぇ便所くらい行かせてやると俺を強引に立たせた。
確実に肋骨あたりは折れてるな・・。
便所まで行って周りを見渡し2人の監督官しかいないのを確認したあとに告げ口した。
『本当なんだろうな?嘘だったらお前の命はないぞ?』
『だが俺らも手柄をあげるチャンスじゃねぇか。』
『これが本当なら確かに手柄になる。
よし、本当だったらお前は脱走には関係ないといってやろう。』
何とか信じてもらえたようだ・・。もう体もぼろぼろだがな・・。
便所に行った後、ぼろぼろで体も痛かったが強引に勤務させられた。
身体の痛みは引かなかったが何とか4日はつつがなく過ごした。
そしてごみ処理の日だ。
昨日の夜にすでにモックからの話で、どうせ残っても独房行だししょうがねぇとガンガも参加を表明している。俺も同じだと適当に合わせておいた。
ゴミの燃えカスをスコップで手押し車にいれて運ぶ。
他の3人も同じように手押し車で川まで押してきた。
俺は監督官達を見て頷いた。
向こうも分かったようで頷いてくれたようだ。
『俺とパンメシはしんがりをしてやる!一瞬早くガンガとポトフがいけ!』
手押し車をひっくり返してゴミを入れるふりをしたモックが
『今だいけっ!!』
とガンガの背中を押した。ガンガはいきなり押されたので落ちながら焦っていたが、すぐに川に飛び込む体制を付けたようだ。
モックはガンガのすぐ後ろから飛び込む。
見るとパンメシも俺を押そうとしてきた。
だが俺はすばやく右に躱しパンメシを押した!
『てめえええええ!』
叫びながら落ちて行くパンメシ。
『ぎゃあああああ!』『ぐあああああ!』
パンメシとガンガが川の槍に刺さったようだ。
だがモックはガンガを盾としたのでまだ死んでおらず必死に槍を避けて泳いで行こうとしている。
あいつ、槍があるのを知っていやがったな!
監督官達がこちらに走ってくる。
俺はあいつらを指さした。
『1匹生き残ってやがる!』『いくぞ!あ、まて!』
サクッと音がした。
はらがあつい・・。
「がふっ・・。」
くちからちがあふれてくる。
なんとかはらをみると、やりでつらぬかれていた。
「な・・なん・・で・・。」
『4人全員で逃亡しようとはふてぇやつらだ!』
『にがさねぇぞ!笛を鳴らせ!』
『これで4人全部処理したら手柄ゲットだな!』
『そうだが、川のあいつを何としても捕えろ!』
そうか・・、てがらのひとつか。
かんがえてみりゃ、くずをすくうひつようなんてねぇんだもんな。
いきていたかったが、ちがとまらねえ。
まぁ・・かべやくするよりここでしねてよかったのかもしれ・・ねえ・・な・・。
そ・・う・・いえ・・ば・・あいつ・・いき・て・るのか・・な・・。
side ポトフ end
+++現在のステータス+++
名前 ???→テラ
年齢 20
出身 地球→不明
身分 出身地不明により流民
所持金 銀貨200枚銅貨70枚
スキル(★1~★5まで)
★5 ジャッジメント(神罰LV2)
★5 顕現 new
★5 マッピング(邪神クラス)
(敵対生物表示可、建物家屋検索可能。味方検索可能。)
★1 自己鑑定(詳細LV2)
加護 邪神(地球)の加護(全ての言語の読み書き可能、会話可能)
祝福 2外道の道(弱者を殺せば殺すほど、非道な殺し方をするほど能力上昇)
祝福 5不屈の意志(契約を破ると能力低下、契約を履行する限り能力倍加)
呪い 1黒き選択(発動中) 3地獄への道標 new 4勇者への道 6殺戮の咎
呪い 7対立の導(発動中)new 8魔王への道(発動中)
使命 神々により召喚された異世界人3名の抹殺(期限まであと50年)




