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二番目に好きな人

作者: 安浦

タクミがこの世で一番大好き。愛してやまない。


「優奈は好きな人いるの?」


「いるいる!」


年頃の私は友達とは恋バナに花を咲かせることもしょっちゅうあって、だから私は毎回言うんだ。


「タクミ!タクミが好き!」


だけど、私のこの発言に、いつも会話は一旦中断になる。


「ねぇ優奈…一般人での話をしてるの!」


タクミは某アイドルグループに所属している。


みんなが同じクラスの人が好きなことと同じように、私だってタクミが好きだ。

なかなか会えないけれど、それは遠距離恋愛だって同じこと。


それを周りはなかなか理解してはくれない。



休み時間を終えるチャイムが鳴り、私たちは席に着いた。


席が窓際の私は、ボーっと空を眺めながら、今日のタクミのテレビ出演を考えていた。


「村尾さん、教科書忘れちゃったから見せてもらってもいい?」


隣の席のバスケ部キャプテンの牧田くんから声をかけられた。


私は、少し離れていた机をくっつけて、2人の机の真ん中に教科書を置いた。


「ありがとう」


牧田くんはニコッと笑ってお礼を言ってくれたので、私もニコッと笑い返した。


「村尾さんって、タクミのファンなの?」


牧田くんは私の下敷きがタクミなことに気付き、下敷きを指差しながら言った。


「ファンじゃないよ!好きなの!」


「…へぇ…」


私は、タクミへの想いをファンと言われることが一番嫌だった。

ファンなんかじゃない。好きな人だって思っていたから。


「でもさぁ、下敷きがタクミって使いにくくない?」


「大丈夫!これは鑑賞用だから!」


私の発言に牧田くんは目をまん丸くして、そして笑って言った。


「タクミのこと、すごく好きなんだね」


私は、牧田くんがファンではなく好きと言ってくれたことが猛烈に嬉しかった。



しばらく授業を聞いていると友達から私に手紙が廻ってきた。


私は先生に気付かれないようにコッソリと手紙を読んでいた。


その内容に、私は涙が止まらなくなった。


“タクミ、モデルの千里との交際認めたんだって!ニュースになってるよ!”


私は動揺しながらも、携帯電話を取り出し、調べると、トップニュースになっていた。


タクミが熱愛…?!

信じたくなくて、涙が止まらなかった。


はたからみたらアイドルのゴシップに過ぎないが、私には大失恋で胸が引き裂かれそうに痛い。


止まらない涙に気付かれぬように下を向いていると、牧田くんがそんな私に気付いてしまった。


「先生、村尾さん体調悪いみたいなので保健室に連れて行きます」


牧田くんは私の腕を強引に引っ張って教室から連れ出してくれた。


「…村尾さん?大丈夫?」


「うぇっ…うっ…うぅ…」


泣くことしか出来ない私。


牧田くんは誰も使ってない理科室に私を連れて行った。


「ここなら誰もいないから大丈夫だよ。どうしたの?」


下を向いている私を覗き込むように牧田くんは私に話しかけた。


牧田くんの優しい声は私を更に涙に誘導する。


「あの…ね…タクミに彼女がいたの…!」


もしかしたら、ふざけてると思われるかもしれない。

そんなことでバカじゃないかと思ってるかもしれない。


だけど、牧田くんは優しい…。


「ごめんね、こんなこと聞いてもらっちゃって…」


私は泣きながら牧田くんに謝った。


「そっか。それは悲しいね。村尾さんタクミのこと大好きだもんね」


牧田くんとの会話は少しずつ私を穏やかにしてくれた。


「失恋だよ…悲しいよ…」


「相手が適わない相手なら尚更だよね」


牧田くんの話がやけにリアルに感じてしまった。


「牧田くんも…失恋したこと…あるの?」


私の質問に、牧田くんはニコッと笑った。


「うん。今日失恋しちゃった」


「へぇ…一緒だね…」


聞いちゃいけないことを聞いてしまったような気がして、私は少しだけ気まずくなった。


「でも、チャンス到来したかも」


「へっ!?」


牧田くんはまたニコッと笑った。


「村尾さん、失恋を癒すのは新しい恋だよ」


「うん…?」


何だか嫌な予感がして、急にこの場所から逃げたくなったけれど、その時にはもう手遅れで…。


「俺、新しい恋の相手に立候補するよ」


「…は!?何言って…」


牧田くんから目をそらすのに、また見てしまうのは何故なんだろう。


「村尾さん、タクミばっか見てて気付いてないかもしれないけど、結構村尾さんモテるんだよ?」


「モテたことなんて…!」


そう言われて、真っ先にいままでの牧田くんの優しさが浮かんだ。


「で、でも!そんなこと急に言われても困るよ!私が好きなのはタクミだもん!」


「うん。だからさ」


フッと笑う牧田くんにドキッとしながらも、私はもう予感がしている。


「タクミが一番好きで、二番目に俺でいいよ。俺もバスケが一番だから村尾さんは二番目ね?」


こんなのズルい。

私はすぐに気付くことになる。


「じゃあ教室戻ろうか」


そう言って、私の手を優しく握った。


一枚上手で優しい牧田くん。


すぐに誰が一番なのか、簡単に気付く日が来ることだろう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

身近に気付けずに(笑)

アイドルに恋する時期ってありますよね!

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― 新着の感想 ―
[一言] 憧れの人に恋をしたり、そういう年頃はあるものだなあ、と少し共感しました。 面白かったです。
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