〈孤独ノ少女〉
「今日でちょうど3年かぁ……」
私――小暮詩音は朝起きるなり呟いた。
私はもぞもぞとベッドから這い出ると、パジャマのままキッチンへと向かった。
私は両親と3人家族なのだが、両親は1年ほど前から寝室から出てこなくなったため、現在は一人暮らしと大差なかったりしている。
私は冷蔵庫の中から魚肉ソーセージを取り出すと、栄養失調というものが『リセット』によってなくなったこの世界で、ただ空腹感を満たすためだけに頬張る。
もう何百回も味わった独特の味が口内を駆け抜けるか、無視した。
3年。
世界から『明日』が失われてから現在に至るまでに流れた時間だ。
その中で、人々は殺し合い、犯しあって生きている。死者すら蘇る無理矢理な『永遠』をねじ込まれたこの腐った世界における最大の悦びとなったその2つは消えることはなく、むしろその激しさを増していた。
外を歩けばすぐに死体が見つかり、絶叫が聴こえた。
世界は、人々は壊れてしまったのだ。
しかし、私はその世界の中で異質なものだった。
私だけが、この世界の摂理『リセット』の影響を受けないのだ。
私の左腕の二の腕には切り傷がついている。それは半年ほど前についたものにも関わらず、いまだに消えていないのだ。
ただし治りは遅々としたもので、これだけの月日が経ってなお、その痕はくっきりと分かる。
この体質は謎だらけでけ原因などは一切検討もつかないくせにリスクは高く、快楽殺人が跋扈する現代において、外を歩くことすら躊躇われる。
この壊れた世界で死ぬことができるだけ幸せなのだろうが、死ぬほどの勇気はない。
ただ、その日は何か違った。
何故か、外に行きたくなったのだ。
それはただ単に引きこもり生活に疲れただけかもしれない。ストレスによるものかもしれない。
でも、私はのちにその考えをこう思う。
――運命、と。