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終章

 男の、タイプライターを押す手が止まる。そう、小説が打ち終わったのだ。今は夜、大分更けた夜になっていて、打ち終わった小説を前に、男は疲れた目をいやすよう目がしらに手を当てていった。

 流石にもう追い立ててはこないタイプライター、威圧感を与えてこないタイプライター。それを前に、男は一枚一枚紙をめくり、今一度小説を読み返してゆく。そうしてすべて読み終えると、男の顔に浮かんでいたのは何故か困ったような表情であった。

 そう、男は気になっていた。これではルフィノがあまりに可哀想じゃないか、と。あれだけティアを愛していたのに、全く報われないなんて。これは、恋愛小説を書きなれないが故の手落ちなのだろうか? 男は思わず考え込む。そして、これでは全く納得がいかないと、再び男はタイプライターに手を伸ばそうとする。そう、ストーリーを変え、改めて打ち直そうとしたのだ。だが……。

 その手は、止まって下ろされた。しばし流れる沈黙の時。そしてやがて、男の口元に思わずといったよう笑みが零れる。

 そう、物語はほろ苦くも、やっぱりハッピーエンドがいいんだ、と。

              

                                   了 

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