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第九章 愛故に(3)

 それから、コルノは国王ヴィートが生きていることを公に発表した。すると、それに慌てふためいたのは七カ国同盟とアレジャンだった。そんな各国を尻目に、黙々と話し合いの場を設けてゆくヴィート。そう、負けた国でありながらも、立派といえる態度で。そして参加したその場で、出されたあの条件を飲んでいったのだった。あの、七カ国同盟の申し出通り、サロとドゥルススを譲渡し、ルータを返還することを。

 しかし、これはいたしかない事であろう。戦いで疲弊しきったコルノ、流石にこれ以上の抵抗は出来ないだろうから。そう、苦肉と言ってもいい、コルノ王ヴィートの判断であった。

 そして返還されたルータ。そこにはルフィノが暫定の王として君臨することになった。だが、本当の王はティアと思っていたルフィノ、当然の事のように、彼女を返すことを要求してきた。王の血筋はティアのみ。ティアが女王となり、ルフィノが夫として彼女を補佐するのが当然だと。だが、驚くべきことに……少なくともアレジャン側にとっては……ティア自身がそれをきっぱり断ってきたのだった。そう、故国の女王の座を蹴って、蛮族の国の王妃になる事を彼女は選んだのだ。それ故、コルノでは賢母として後に語り継がれるティアだが、ルータでは裏切り者の悪女と喧伝されるようになった。あの、クロワゼットでの猛烈な戦いぶりから、血塗れ王女との名も流布していって……。

 血塗れ王女、遠くコルノでティアはそれを耳にした。そう、思わず苦笑いを零しながら。だが、それもあえてティアは身に受けた。実際、それだけのことを自分は故国にしてしまったのだから。そう、自分には、そうされるだけの理由があるのだ、と。

 そして、ティアはまた別の事のことに思いをはせる。それは……自分が具足を物色していた時の事だ。彼の話から考え合わせると、もしかしたらあの時、その場に彼がいたかもしれない可能性を感じて。

 もう少ししっかりと物色すれば良かった。そうすれば、もっと早く彼と再会できていたかもしれないのに。そう、あんな焦れた日々を過ごすことも……。それは、もしやの思いに辛い気持ちにもなった日々、彼が待ち遠しくて、居ても立ってもいられなかった日々。それを思い出し、つい複雑な気持ちになってしまうティア。

 

 だけど……。

 

 胸に抱く、わが子を見つめてティアは思う。

 そう、あの日から、大分日数が経っていた。ヴィートが戻ってきたあの日から。

 あれからルータは、国境を接するサロとドゥルススによって、混乱を極めることになったのだ。そう、どこがどう統治するか、七カ国間は喧々諤々ともめてゆくことになるのであったから。

 それはやがて争いの火種となり、七カ国同盟は呆気なく消滅、ルータもその混乱に巻き込まれ、国は疲弊していった。そう、まさしく世は戦乱の時を迎えるのであった。

 それを気に病むティア。

 だが、そんな彼女を置いて、時は刻々と過ぎてゆく。

 その間コルノは内政に力を入れ、次第に国力をつけてゆくのだった。アレジャン派も一掃し、内憂を片付けたコルノ、更に国力もつけたこの国に待っていたのは、今度は周辺の蛮族の国々だった。そう、次々と周辺の蛮族の国々を吸収してゆき、その勢力は巨大なものになってゆくのであった。

 それは、ヴィート、その息子のセヴェーロと続いてゆき、安定した国政に、やがてコルノは絶頂期を迎える。後に賢王としても伝えられるこの二人。だが、栄えるコルノと対照的なのが、アレジャンとその周辺の国々だった。

 そう、国と国とが食い合い、潰し合い、残っていった国々も疲弊したものばかりとなってしまうのであったから。

 そして、そこを突いてコルノが再びアレジャン侵攻を開始する。するとそれは見事成功し、やがて、ニテンスソール大陸はコルノによって統一されてゆくのであった。そう、北からの疾風は、またも大陸を席巻し、かつてない興隆をその地に刻んでゆくのであった。そしてこの国、更には海をも渡るのだが……まぁそれは、また次のお話として。

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