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第四章 始まりの戦い(2)

 そしてその日、コルノ軍達はソリーリャで夜を明かすことになった。そう、今は大事な戦の初め。進軍は明日以降も待っているのだから、それに備えて、兵士達は早々に眠りへと入っていったのだった。だが、夜中になっても、煌々と明かりが灯る部屋が一つあった。それは、王城のとある一室である。そこではヴィートや重臣達が集まり、これからのことについて会議を開いていた。丸くなって座るテーブルの真ん中には、アレジャンの地図が。それを皆で見つめながら、


「まずは、国境の都市、ポリニーでしょうね」


 と、ヴィートの片腕であり参謀でもある、エンツォがそう言う。それにヴィートはその通りと頷き、


「確かに。背後から攻められない為にも、手すきになった元ルータに侵攻させないためにも、ここは落としておかなきゃなんねーな。落ちればそこを補給基地に出来るし、その地区周辺を支配することもできる」


 そこにいた皆、ヴィートの言葉に全く納得という気持ちで。賛同の意を示してゆく。そして次々と、


「しかもこの都市、長い間、属国のルータが壁になってくれていることをいいことに、守りが昔の弱い作りのままになっています。全く、国境の街だというのに」


「そう、濠も塹壕もない。濠がないから跳ね橋もないし、市壁も多重構造にはなっていない。ルータが落ちた時点で危機感を持って、防備を強化すればいいものを……」


「平和ボケですな」


 明らかに舐めてかかっているコルノの重臣達であった。だが、それはアレジャンの現実を知る、真実の裏打ちがあったからこその態度であった。間者の見た世界。そこから検討を重ねて出てきた自信。そういった所から、この戦いはいける、そんな確信にも近い思いが皆の胸に湧き上がってきていたのだ。そう、後はどう戦うかだった。それにはまず……。


「敵は、野戦で来ると思うか? 攻囲戦で来ると思うか?」


 過った気がかりを片付けるべく、ヴィートはこうエンツォに尋ねる。


「さぁ……それは分かりませんが、野戦になれば、兵力で勝る我々が有利でしょう。兵士達の訓練もしっかりしていますし。敵を追いこんで、最後は攻囲戦になるかもしれませんね」


 その言葉を聞いて、少し眉を顰めてゆくヴィート。だが、直ぐにそれを解いて腕を組むと、


「唯城だけなら、兵糧攻めは避けたいところだが……。城郭都市だ。市民もいるから城の蓄えだけではどうにもならない。有効かもしれないな」


「はい。ですが、まだ補給基地を手にしてないわが軍としては、なるべく早く決着をつけたいところです。時間がかかりすぎては、こちらの方も消耗します。援軍が来ても厄介ですし。勿論、長期戦に備えて、補給路は分断しておいた方がいいと思いますが、陛下」


 確かに、とヴィートはコクリと頷く。


「補給路は分かるか?」


「はい。恐らく正門である北の市門と、その裏手にある小さな市門からだと思いますが……」


 ヴィートの問いに、参謀のエンツォがそう答える。するとそれに、ヴィートは再び考え込むようにして難しい顔をすると、


「攻囲戦が始まったら、そこに兵を送り、囲いこんで兵糧を絶とうか」


「そうですね」


 納得したような返事をするエンツォ。それを見て、ヴィートも満足したように頷くと、では次にと、話題にしていったものとは、


「で、陣はどこに張る?」


 だった。そう、まだまだ攻囲戦について話したいところはあった。だが、それを置いても、先に話し合っておきたい事があったのだ。攻囲戦になれば、戦いは長引く可能性がある。そうなると、駐屯の場所、それをどこにするかという問題が浮き上がってくるのであった。その懸念を取り払うべく、陣について、ヴィートはエンツォに知恵を仰いでゆく。すると、それにエンツォは、眉を顰めて地図とにらめっこをしてゆくと、しばし間を置き、


「この……」


 といって、ポリニーの周りを囲む平原の、北を指差していった。その後、


「フロンサック平原の北に陣を張るのはどうでしょうか。ここならば、正門となる市門と対面することになります」


 本軍が出てくるだろう市門を前にして戦いを挑む、という事だろう。正面衝突のなんの捻りもない案だったが、定石通りの正攻法であるともいえた。大型の投石機などを作る為の森も近くにあり、それを考え合わせれば、中々な場所のようにも思えた。


「そうだな、そうしようか」

 

 どこにも文句はないというように納得して、頷いてゆくヴィート。勿論他の領主者達も、それに追随して次々と首を頷かせてゆく。そして、


「じゃあ、次は……」


 それからもしばし、白熱した話し合いが皆の間で続いていった。野戦に攻囲戦、補給に調達武器、煮詰めてゆく議題は腐るほどあった。後顧の憂いを残さぬため、延々と会議は続いてゆく。そう、この暗い闇夜の中、蝋燭の明かりのみで粛々と。一方、その他一般の兵士達は、そんな主人達の苦労も知らず、これがきっと最後の憩いの時と、温かな布団の中で、ゆっくり体を休めていっていた。そう、これからやってくるであろう、大きな、大きな戦いを前にして。そして翌日、


「ああー! よく寝た!」


 昨夜、大分眠るのが遅くなってしまったヴィートだった。だが、それでもしっかり眠れたらしく、大きく伸びをしながら、朝食の席である食堂に彼は姿を現わす。だがそれは、何も知らぬ者が見たら、能天気な国王そのもので、既に席に到着していたティア、出来上がった朝食を前に、冷ややかな眼差しで彼を見つめる。すると、


「んだよ。そんな目で見んなよ」


「余裕ぶっかましてるけど、大丈夫なのかしら。相手を侮ると痛い目に合うわよ。数で勝ってるみたいだけど、だからといって、必ず勝つとは限らないことは過去の歴史書にも記されてるでしょ」


 戦も間近だというのに、あまりにのんびりとしたヴィートの態度。その態度がティアの癇に障ったのだった。だが、ヴィートはそんなこと気にしてないようで、


「侮っちゃいねぇ。積み重ねた検討の結果の、余裕だよ」


 そう言って、用意された朝食の席に着く。そして、


「飯食ったら、すぐに出立だ。お前も準備しておけよ」


 それにティアはツンと顔を背けると、


「分かってます」

これから戦いの場面が増えてきますが、正直戦いの描写は苦手です!すみません!温かい目で見ていただけると嬉しいです……。

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