最強守護神の黒猫、なろうの決め台詞を擦りすぎて怒られる
王都郊外。
巨大魔獣が暴れていた。
地面を割り、
兵士を吹き飛ばし、
阿鼻叫喚である。
「だ、ダメだ!!」
「攻撃が通らない!!」
「守護神様を!! 守護神様を呼べぇぇ!!」
そして。
呼ばれた守護神は。
宿で昼寝していた。
『……眠い』
「国が滅びかけてるんだけど!?」
ユキトはふくを抱えて走る。
ちなみに、ふくは運ばれている途中で焼き魚を要求した。
図太い。
◇
戦場に着くと、
兵士たちが一斉に叫んだ。
「守護神様だ!!」
「勝った!!」
「世界最強の黒猫だ!!」
ふくは、すん、と鼻を鳴らす。
『ふむ』
「何その得意げな顔」
『今日は少し趣向を変える』
「嫌な予感しかしない」
ふくは、近くの岩へぴょんと飛び乗った。
その瞬間。
ぶわぁっ――!!
風が吹く。
黒い毛並みがなびく。
空気が震える。
やたら演出が入る。
「待て」
ユキトは真顔になった。
「なんで都合よく風が吹いてんの」
『演出』
「演出!?」
兵士たちもざわつく。
「演出って何だ……?」
「守護神様、自分で言ったぞ……?」
ふくは気にしない。
黄金の瞳を細め、
やたら低い声で言った。
『――格の違いを教えてやろう』
静寂。
ユキトは、すっ……と目を逸らした。
「古い」
『……えっ』
「五年前のなろう」
『そんなに!?』
ふくが普通にショックを受けた。
『流行ではないのか!?』
「今もっと自然体だから!」
『自然体……』
ふくは考え込む。
その間にも、
ギガントワームは突っ込んできていた。
「考えてる場合じゃねぇ!!」
『ぬっ』
ふくは慌てて前に出る。
そして。
ぺし。
猫パンチした。
瞬間。
轟音。
巨大魔獣が縦に割れた。
山が吹き飛び、
空の雲まで裂ける。
被害規模がおかしい。
兵士たちが震える。
「す……すげぇ……」
「これが守護神様……」
しかし。
ふくは微妙な顔だった。
『……今の台詞、どうだった?』
「そこ気にしてたの!?」
『“終焉を刻め”も候補にあった』
「もっと古い!!」
『なにっ!?』
守護神、現代トレンドに弱い。
その時。
若い兵士がぽつりと呟いた。
「でも、“格の違いを教えてやろう”って、ちょっと好きでした」
ふくの耳がぴくっと動く。
『……本当か?』
「はい!」
『……ふふん』
「立ち直り早っ」
ふくは満足そうに尻尾を揺らした。
『では次回から擦る』
「やめろ」




