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陛下が突然現れたのですが

ちょっと長いです

「ただいま戻りました──」

「ミリアっ! お帰り!」


 離宮の扉を開いた私の目の前に、凄い勢いで少年の影が飛び込んでくる。


「──っう」


 こらえきれずに漏れ出た息を聞きとがめ、私の腰にぎゅうっと抱き着いてきたセラ様ははっと顔を上げた。


「ミリア、どこか……痛めてるの?」


 それは疑問形ではあるけれど、どこか確信めいた問いかけだ。誰よりも痛みを知っているセラ様は、他人の痛みにもよく気が付いてしまう。


「……大したことはないのですよ。それよりも、ほら。沢山本を持って来られました」


 自分の方が余程痛みを堪えるように唇を噛みしめ、それでもセラ様は笑ってくれた。ひとよりずっと早く大人にならざるを得なかった彼は、気付かぬ振りまで上手になった。


「うん、ミリアが帰ってくるの楽しみにしてたんだ。一緒に読もう?」

「ええ、もちろんですわ」


 セラ様は私が不在時の出来事や、ひとりで成し遂げたことを殊更に明るく振舞い身振り手振りを用いて説明してくれる。

 バッグから出て来たボロボロの本を目にしたときは一瞬身体を強張らせて固まってしまったけれど、直せば読めるところもあるから大丈夫だと手を握ってくれた。

 少しだけ震えていたのは、どちらの手だったのだろう。



 「《himbanah(氷の矢)》」


 庭の端に置かれた岩に向けて放たれた魔法。セラ様が差し出した指先から射出された氷の矢は、パンっと高い音を立ててその表面にしっかりと突き立っていた。


「わっ、出来たよ! 見てた? ミリア!」

「ええ、凄いです! 今度は砕けませんでしたね!」


 持ち出してきた本を二人で読み込み、魔法の基礎からじっくり学び、試行錯誤する日々。初めは難解な表現に戸惑ってばかりだったけれど、矢の硬さを高めるにはどうするか、持続力や速度はどれほど必要かなどと話し合う時間はとても楽しいものだった。予想を立てて実験し、失敗したらまた考察を重ね、また実験。回を重ねるごとにセラ様の魔法のコントロールは上がっていくし、理解が深まったせいなのか私まで制御が上達した気がする。パンを焼く際の火加減くらいにしか有効活用出来ないのがなんとも情けない話なのだけれど。


「やっぱり密度を上げたのが良かったようですね。あとは速度が出ればもっと深く刺さるようになるでしょうか」

「氷魔法だと多分これが限界だから、あとは風魔法で押し出してみようかなと思うんだ」

「そうですね……ただそれだと魔力の消費が多くなりそうだから……。例えば(やじり)の部分の形に工夫をして、柄の部分はなくしてしまったらどうなりますか? 実際に弓で射るわけではないですし」


 持ち帰って来た本を読み思い付いた私の提案に、セラ様がハッとした顔をする。その手のひらの上を見つめたかと思うと、氷で出来た三角錐状の(やじり)が姿を現した。


「今のが、これだから……もっと尖らせる? でもそれだと当たった時の耐久性が弱いから……」


 切れ込みのような筋を入れたり、ぐるりと螺旋を描くような模様を入れて見たり。セラ様の手のひらの上で、氷の塊は次々と形を変えていく。ぶつぶつと呟きながら試行錯誤するセラ様の顔には薄く微笑みが浮かんでおり、集中しつつも楽しんでいることがはた目から見ていても分かる。

 私だけの力では伸ばしきれなかった才能が、今芽吹こうとしているのだ。

 こんなくたびれ果てた城の端で、誰からも忘れられたように生きていてもなお、この方の生命(いのち)はこんなにも眩しい。


「あ! 見た? 今の凄い上手く出来たよ!」

「ええ、素晴らしいです! 今までで一番!」

「よし、忘れないうちにもう一回やってみる!」


 教本(ユリス)の手助けもあり、セラ様の魔法の技術は目を見張るほどの上達を見せた。

 痛みの発作が起きることはなくなったし、体表面の禍々しい痣もほとんど消えている。魔力の制御が上達したせいなのか、セラ様には自らの身体の奥に残ったあとほんの一粒の呪いの核まで感じられるらしい。それさえ何かのきっかけで壊すことが出来たなら、第三王子として元の正しい生き方に戻ることが出来るだろう。

 私の役目もそれまで、あと少しだ。


「──それまでは」


 私だけの可愛い王子様(おとうと)でいて欲しい。

 

「え? 何か言った?」

「いえ、セラ様。今日はもう少しだけ、練習しましょう!」

「うん、分かった!」


 ◇


『セラファン殿下は魔力制御能力の向上により、呪いの大部分を抑え込むことが可能となりました。残すは身の内に残る核だけとなりますが、こちらもそう遠くないうちにご自身で対処できるようになるでしょう。つきましては殿下の正当なお立場を回復願いたく、一度確認を──』


 はぁ、と息を吐き、一瞬の間瞼を閉じる。眉間をぐっと押してからもう一度目を開けると、ペン先から零れ落ちたインクが紙を黒く染めていた。

 何度書き直すことになるのだろうか。かぶりを振った私は新しい紙を取るために立ち上がるのだった。

 


 離宮の外を守ってくれている馴染みの騎士に手紙を託す。この騎士は何年も昔、痛みで暴れるセラ様を共になだめすかしたこともある同僚だ。呪いの影響で室内の警護が出来なくなった後も、こうして敷地の外を定期的に見回ってくれている。たまに顔を合わせれば挨拶もするし、城内の情報に疎い私に役立つ話を聞かせてくれもする気安い仲だ。

 ここ数年はすっかり年頃になって、セラ様は彼ら騎士を遠ざけるようになってしまったけれど。さすがに私も剣術や体術までは教えられないから、もしかすると屈強な筋肉をまとう騎士にコンプレックスを感じてしまうのかもしれない。

 くれぐれも関わる人が最低限の人数になるようにという私の頼みを受け、同僚の騎士は恐れ多くも近衛騎士団長を通じて国王陛下に宛てた手紙を届けてくれるとのこと。

 魔封と呼ばれる印を施し、許可した相手しか開けないよう設定してあるから他人に盗み見られることはないはずだ。それでも普段と異なる動きをしていると知られてしまえば、怪しむ人もいるかもしれない。ただでさえ私はセラ様の唯一の側仕えなのだ。気にしすぎてやりすぎということもないだろう。


 

 それから半月程が過ぎたある日。

 使っていなかったどころかその存在さえも全く知らなかった離宮の隠し扉が開き、ちょうど昼食中だった私たちの前に現れたのは──セラ様の父である国王陛下その人だった。


「ああ、セラファン……久しいな。と言っても、お前は私のことなど覚えておらぬかもしれないが……」

「──え……あ、え……?」


 一応城勤めをしている私は陛下の姿を知っていたし、セラ様にも姿絵などでお見せしている。

 でもそんなことがなかったとしても如実に血の繋がりを感じられるほど、近くで見るセラ様と陛下のお顔だちはよく似ていた。美しい金の髪こそ亡くなった正妃様にそっくりだが、きりっと形の良い眉や切れ長の目、通った鼻筋に薄めの唇まで陛下譲りであったようだ。艶やかな黒髪の陛下は年齢相応の威厳や貫禄を感じさせるが、セラ様ももう少し大きくなったらあのように凛々しい青年に育つのだろうか。

 一呼吸先に我に返った私は慌てて席を立つと、その場で膝をついた。頭を下げているので見えないけれど、続いてかたんと鳴ったのはセラ様が立ち上がった音だろう。


「ちち……うえ。ご無沙汰しております。御自らこのような場所まで──」

「よい、よい。楽にしてくれ、今日は王としてではなく父として参ったのだ。そこな侍女、ミリアと言ったか。お前も直ってくれ」


 恐れ多くも陛下に名前まで呼ばれたらその通りにするほかないだろう。ゆっくり立ち上がると、ことのほか優し気に微笑んだ陛下がうんと頷いて下さった。

 流石にこの場ではということで、食事もほとんど終わっていたこともあり皆で応接室に移る。この時初めてしっかり確認したけれど、陛下には影のような近衛がひとり付いているだけだった。

 ここは離宮とは名ばかりの質素な屋敷である。応接室といっても、豪華な調度などなくただソファとテーブルがあるだけの部屋だ。魔法の制御の練習がてら、水魔法や風魔法で掃除をしておいて本当に良かったと思う。保障できるのは清潔さくらいしかない。

 目立たないようにしてきたのか、シンプルな文官風の服を着た陛下が上座に座り、その背後に護衛が控えている。セラ様がその対面にかけたのを確認してから、一旦お茶を用意するためキッチンへ戻った。セラ様だけを残すのは心配だったけれど、ここには私しかいないのだから仕方ない。食事の後に飲もうと思って茶器の準備は済ませてあったのが幸いだ。


 扉を叩き、許可を得てから室内へ入った。先ほどは肩を強張らせていたセラ様だけれど、少し力が抜けているように見える。今のところ空気は悪くなさそうで安心した。

 お茶をお出しすると陛下はありがとうと言いつつ私に視線をよこし、君もそこへ座りなさいと仰った。どうせ先ほどセラ様と一緒に食事をしているところを見られているのだし、もはや気分はやけくそである。


「さて……改めて、セラファン。お前と会うのはおよそ八年振りになるか。このような所に押し込め、さぞ不便な思いをさせたことだろう。不甲斐ない父を許してくれるか」

「いえ……僕、私には、ミリアがいましたから」

「そうか、良くしてもらったのだな。お前に信頼できる相手がいたこと嬉しく思うぞ。そう、その彼女からの手紙を受けて、今日は確認しに来たのだ」


 父の顔で満足気に笑う陛下に再び視線を向けられ、私の背筋がぴしりと伸びる。


「そ、その節は大変不躾な事を致しまして、大変申し訳ございません……!」


 だって陛下が自ら足を運んでくださるなんて、誰が予想出来ただろう?


「いや、構わない。むしろこれだけの時間が経ったというのに呪いを解いてやれなかったどころか、犯人も捕まえられていないのだ。セラファンの身を案じての行動だということは分かっているし、君にも感謝しているよ。私の息子をこれまで守り育んでくれてありがとう。君がいなければ、きっとこの子はここまで立派に大きくなれなかっただろう」


 別に私は、崇高な使命感を持ってセラ様のお世話をしていたわけではない。

 初めはあの家を出るために、住み込みで仕事が出来るならなんだってよかったのだ。それが偶然幼いセラ様の担当になり、そのセラ様が呪いを受けて。苦しむセラ様の側で唯一私だけが彼に触れられたから。

 弟の看病に慣れていたおかげでやるべきことはわかったけれど、さすがに食事の支度までは経験がなかった。年齢に合わせた必要な栄養、食材を生かす調理方法。苦手な肉の解体、かまどの管理や後片付けで荒れる指先。室内の掃除、物品の管理、重い荷物も代わりに運んでくれる人はいない。ぐずるセラ様の相手をしつつ、必要な教育も計画的に行っていく。

 呪われた王子とその側付き、陰気な離宮に住まう忘れられた亡霊たち。皆が第三王子のことを記憶の隅に追いやり、ただ悲しい陰口だけが囁かれる毎日。

 きっと意地もあった。私が逃げたら、セラ様は生きていけない。そんなプレッシャーもあった。

 でも本当にセラ様は良い子で、優しく賢かった。

 ぽっかりと空いてしまった私の心の穴を、セラ様と過ごす毎日が少しずつ埋めてくれたのだ。

 私は私の為に、日々を過ごしていただけだけれど。それが今こうして実を結んでいるというのならば、素直に嬉しいと思った。

 私が生きてきた日々の結果が今のセラ様だというのなら、間違いなく誇れる姿がここにあるからだ。


「光栄なことでございます」


 謙遜などする必要は微塵もなかった。

 にこりと微笑み、横に座るセラ様を見る。握りしめられた手は私よりもひとまわり小さく、柔らかい。そっと手の甲を撫でれば、ぴくりと跳ねたその手はゆるりとほころんだ。照れたような、恥ずかしそうな顔をして口元をむずむずさせる表情がなんとも愛らしい。


「……ほう、本当に触れても問題ないのだな」


 私たちの様子を観察していたらしい陛下が溢す。


「私だけは初めから呪いの影響を受けなかったのです」

「それも不思議な事よな。相性の問題なのか、君になにか特別な力があるのか……」

「私も一応簡単な検査は受けたのですが、魔力が少ないながらも浅く広い適正があるということくらいしか分かりませんでした。あとは、魔力過多症で病弱だった弟の世話を数年行っていたので、幼子の相手に慣れてはおりましたが……」

「ふむ。君の方の詳しい検査も落ち着いたらしてみたいところではあるが。その前に、セラファンの呪いの具合を確かめようか」


 身体を固くしたセラ様に、大丈夫ですよと伝えると微笑み返してくれた。


「最も重篤な時には顔にも痣が浮いたと聞いている。今は見えないが……」

「痣は胸の上に残る手のひら大のひとつだけになりました」

「そうか。そちらは後で確認させてもらおう。次に同室にいると体調を崩す件だな。──オンブル、どうだ?」


 陛下が背後の護衛に声を掛ける。オンブルと呼ばれた彼は首を横に振り、特に異変はございませんと答えた。


「うん、私も特に異変は感じない。私は王族かつセラファンの身内だし、オンブルは特殊な訓練を積んだ護衛だから、一般的なサンプルとは言えないかもしれんが……これは徐々に試していくしかないだろうな。今のところは悪い結果でなかったことを喜ぼう」

「はい、父上。ありがとうございます」

「最後に、接触か。どれ、セラファン、父に手を──」

「いけません、陛下」


 手を伸ばした陛下を、すぐさま護衛の彼が引き留める。さすがにそうだろうなと私も思った。


「……仕方がないか。オンブル、頼む」

「は」


 テーブルを回りこんで来たオンブル氏がセラ様の斜め前に跪いた。


「殿下、お手に触れる許可をいただけますでしょうか」

「う……うん。いいよ」


 恐る恐るセラ様が差し出した手を掬うように、オンブル氏が触れた──その瞬間。


 バチッ!!


 鋭い光を放ち、オンブル氏の手が弾かれた。はっとして震えるセラ様の肩を引き寄せ、優しくさする。考えてみれば、セラ様に私以外が触れたのも八年振りのことなのだ。幼かったセラ様は己を苛む痛みにただただ恐怖し錯乱しておられたけれど、今は冷静に状況を理解することが出来るようになっている。理解できるからこそ、この呪いの陰湿さに傷付いてしまわないかと心配になった。


「大丈夫です、殿下。私は鍛えておりますから、傷などは出来ておりません。殿下の方に痛みはございませんでしたか?」

「ぼ、僕は痛くないよ。ごめんね……僕のせいで」


 身体に痛みがなかったとしても、心だって同様に傷付くのだ。悲し気に俯くセラ様の様子に、肩を抱く手を強くした。


「勘違いしてはいけないよ、セラファン。これは、お前のせいなどでは決してないのだから。お前は被害者で、何も悪くない。だから顔を上げ堂々としていなさい。ここまで己の力を磨き、呪いの影響を抑え込んだことを誇っていい」

「でも、でも……」

「直接触れなければ問題なく暮らせることが分かったのだ。これだけでもかなりの進捗だぞ。お前はお前に出来ることを精一杯やっている。これからもその精進は続けなさい。そうすればきっと近いうちに全ての呪いに打ち勝つことが出来るだろう。父はお前を誇りに思う。──よくやったな、セラファン」

「……はい。ありがとうございます、父上」


 小さく頷いたセラ様と、そんな彼を優しく細めた目で見る陛下はまだ、直接抱きしめ合うことが出来ないけれど。

 何も憂うことなく触れ合える日は、そう遠くないだろう。

 

 セラ様はこれから、本来歩むべきだった明るく広い世界へ戻っていく。家族との交流も出来るし、男の子らしく武術の稽古なんかもきっとつけてもらえるだろう。魔法技術は確実に突出しているから、将来はもしかすると魔法師団員も目指せるかもしれない。数多ある輝かしい未来から、セラ様の望む道を選ぶことが出来るのだ。

 こんな日が来るなんて想像もできなかった。小さく、弱く、頼りない幼子だったセラ様を守るという私の役目は、ここに達成されたのだ。

 私も、誇ろう。

 そして私自身も、これから先の未来について考えなければ。


「では今後セラファンが暮らしやすくなるよう、私たちの方でも考えていくこととする。だが、すまない。まだすぐに城へ帰してやることは出来ないのだ。犯人の特定が済んでいない以上、安全性は第一に確保せねばならんからな」

「はい、分かっています」

「ひとまずは完全に解呪することを目指し、今後も魔法の訓練は続けなさい。それと並行して、信頼できる護衛を徐々にこの離宮へ送ろう。ミリアや私たち以外とも近付いて問題ないことが分かったら、秘密裏にではあるが城外への外出も許す。当面は人気のない郊外へ遠乗りなどになるだろうが……馬には触れられるのだろうか。それも試してみて、大丈夫そうなら乗馬の訓練もやってみなさい」

「わ……! ありがとうございます!」

「うん、お前はこれから王子として、責任ある立場に戻ることになる。学ぶことは多いだろうが、頑張りなさい。それとこれが最も大事なことだが──セラファン。お前はこの苦境の中で優れた魔法の力を身に着けた。強い力は時に恐ろしく、使い方を間違えると悲劇をも生むものだ。己の矜持と育ててくれたミリアの慈愛、王族としての責任と神の導きに背くようなことは決してしてはいけないよ。そしてそうでない場合は──迷わずその力を使いなさい。自分の命を守るために、躊躇してはいけない。言っていることは分かるね?」

「……はい、陛下。お言葉、胸に刻みます」


 うん、と頷いた陛下は満足そうに笑った。

 そして時間を確認すると、そろそろ戻らねばと名残惜しそうに告げた。セラ様の頭の上に手を伸ばすと、近くにいるのに触れられないというのはかくも辛いことかと苦笑する。

 差し出がましいかとも思ったけれど、そっと私は近付いて、セラ様の頭を優しく撫でた。


「これは、陛下からの分です」

「おお、それは良いな」


 楽し気に笑った陛下は私の手の上に自らの大きな手をそっと重ねて撫でる。ごつごつとしていてタコのある、働き者の手だと思った。

 

「セラファン……よく、ここまで大きく育ってくれた。また会える日を楽しみにしているぞ」

「ふふ……はい、父上。ありがとうございます!」


 オンブル氏とも会釈を交わし、元来た隠し扉から陛下たちは帰っていった。


「良かったですね、セラ様」

「ありがとう、ミリア……」


 突然私の胸元に、ぎゅうっとセラ様が抱きついてくる。

 最近はあまりこういった触れ合いをしてくれなくなっていたのに、珍しいことで嬉しくなる。

 私も背中に手を回し、セラ様の綺麗な金髪に頬を寄せた。

 大事な大事なセラ様が幸せになるためならば、私はなんだって出来るのだ。


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