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石化して十七年、目覚めたら少年王子がスパダリに育っていたのですが  作者: 伊織ライ


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理想のご夫婦なのですが

「──団長! ミリアさん、婚約おめでとうございます!」


 幕開け早々のトラブルに若干出鼻を挫かれた形となったけれど、そんなことを気にも留めずに満面の笑みで祝いの言葉をかけてくれたのは、魔法師団員のレオさんだ。側には他の団員達も数名並んでいる。


「ああ、ありがとう。お前たちも今日は参加していたんだな」

「まあ一応貴族の端くれなんで、王家主催のものくらいは出なさいとせっつかれまして」

「俺は団長たちをみてたら結婚したくなってきたので、いいお相手を探しに!」

「おいアルテュール、お前エマちゃんはどうしたんだよ?」

「……話がつまらないからって振られたんだよ!」


 わざとらしく泣き真似をするアルテュールさんは背も高いし見目も整っている。いつも華やかな女性と連れ立って歩いているイメージがあったけれど、どうやら長続きしないようだ。


「きっとアルテュールさんの良いところを分かってくれる方が他にいますよ」

「ミリアさん……!」


 目をきらめかせながら私の手を取ろうとしたアルテュールさんは、即座に背後の団員達に取り押さえられていた。一瞬冷気を発したセラ様もそれを見て満足そうに頷いている。

 魔法師団員たちは今日も元気で仲が良い。暗くなりかけた空気ももうすっかり塗り替えられて、彼らの明るさに救われる思いがした。


 顔見知りの師団員たちを中心に談笑しているうちに時間が経っていたようで、いよいよ王族の入場となる。私たちは揃って礼をとった。挨拶は爵位の高い順に行われるため、公爵であり継承権ももつセラ様はほとんど最初ということになる。当然彼のパートナーとして参加している私も一緒だ。


「国王陛下にご挨拶申し上げます」

「顔を上げなさい」


 先日も養子や婚約の手続きの為お会いしたため、久しぶりという感じもしない。よもや自分が国王陛下と会うことに慣れるだなんて、そんな日が来るとは思わなかったけれど。

 長めの金髪を綺麗にまとめ、豪奢な夜会服を着た陛下はいつにもましてきらきらしい様子だ。そして今日初めてお姿を拝見した王妃様は凛としていて、動きのひとつひとつが洗練された美しい女性だった。


「やあ、セラファン。いつも急に任務を頼んで、君の女神との時間を奪ってしまい申し訳ないね」

「そう思うのならばそろそろ控えていただけるとありがたいのですが」

「ふふっ、セラファンがあまりに有能だからね。兄としては鼻が高いのだけれど」

「うちの団員達だって皆優秀ですよ」

「魔法師団長としての指導も上手くいっているみたいだね。それは彼女のおかげでもあるのかな?」


 視線を向けられた私はもう一度軽く頭を下げる。


「恐れ多いことで……」

「そんなことないよ。全部ミリアのおかげなんだから」

「ふふっ。仲が良くて何よりだ。ミリア嬢、どうかうちの弟をよろしく頼むね」

「身に余る光栄でございます」


 切りのいいところで陛下の前から下がる。私たちの会話を側で聞いていらした王妃様も、優しい笑顔を向けて下さった。考えてみれば、セラ様と結婚した後は彼女たちが私の義姉、義兄となるのだ。また私の家族が増えていく。一度はすべて失ったと思ったものが、こうやって戻って来ることをとても嬉しく思った。


 フロアに戻ると、そこにはクルーズ伯爵家の面々が待っていた。


「やあ、ミリア。そのドレス、良く似合っているよ。とても綺麗だね」

「お義兄さま、ごきげんよう。ありがとうございます、お義兄さまも素敵ですわ」


 ブランドン様とよく似た義兄は黒髪をさらりと後ろに流し、垂れ気味の青い目が優し気な甘いマスクをしている。幼い頃からの婚約者と成人早々に結婚したらしいが、四十代も半ばになってこの色気なのだから、当時涙をのんだ令嬢たちは多かったのではなかろうか。


「殿下におかれましてはお初にお目にかかります、クルーズ伯爵家が当主アレクサンドルと申します。この度は素晴らしい縁をいただき、可愛い義妹(いもうと)が出来たこと大変嬉しく思っております」

「ああ、直ってくれ。父君にはずっと世話になっていたんだ。今回も快く話を受けてくれたこと感謝している。今後も是非よろしく頼みたい」


 セラ様は珍しく口元に薄い微笑みを浮かべて手を差し出し、義兄と握手を交わした。


「ほっほ。その世話をしっぱなしだったわしにも感謝をしてくれてよいのだぞ? なにせ未来の義父(ちち)なのだからな!」


 お義父(とう)さまが横から口を出す。悪戯っぽく笑うその顔はたいそう楽しげだ。


「爺さん……相変わらずピンピンしてやがるな。そんなに暇ならまた魔法師団に戻って雑用こなしてくれても構わないんだぞ?」

「おうおう、そんなことを言っても良いのかね? 娘を嫁に出すかどうかは親の意見も重要になってくると思うがのぉ」

「……チッ」


 相変わらず、お義父さまの前でだけは()()になるセラ様の姿につい笑ってしまった。義兄も同じように笑い、顔を見合わせる。


「お義父さま、セラ様はお義父さまがいなくなってしまって寂しいのですって。みんな団長室にはなかなか来てくれませんから、お話し相手が欲しいのでしょう」

「ほうほう、そうかそうか。それならばたまにはわしが顔を出してやろうかの。暇な隠居老人も話し相手くらいならば勤められるじゃろ」

「……ご夫人が出かけて暇な日なんかがあったら、来ればいい」

「ふふっ、本当に可愛らしいこと」


 お義母(かあ)さままでくすくすと笑い声をあげている。魔法師団長の座を受け継ぎ、立派に務めを果たしているというのに、こんなセラ様の姿も本当に可愛くて大好きだ。嫌でも大人にならざるを得なかった少年時代のセラ様を、ちゃんと子供として扱って守ってくれたのがお義父さまなのだろうから。この方がいてくれて本当に良かった。


「そうだ、ミリア。先日は貴重な蔵書を届けてくれてありがとう。あれらはとても価値あるものだよ、本当に我が家に置いておいてもいいのかい?」

「ええ、問題ありませんわ。セラ様とも確認して、魔法師団に置いた方が良さそうなものは先に取り分けましたし。クルーズ伯爵家は魔法研究に造詣の深い家門でしょう? 是非役に立てていただけたら、ユリスも喜ぶと思います」


 アースノーから正式に籍を抜くことが決まり、ユリスの部屋にあった蔵書も全て引き上げてきた。所有権自体はきっちり私に移してあったけれど、あの家自体が今後どうなるかも分からない。早めに移動しておくに越したことはないだろう。セラ様と、恐れ多くも陛下から数名の護衛騎士を付けていただき、我ながら物々しい警備で屋敷を訪れることになってしまった。そうして私しか開けられないユリスの部屋の鍵を開け、中にあった全ての荷物を引き上げてきたのだ。

 そのほとんどを占める本はやはり貴重な物が多かったようで、セラ様と検分しながら行き先を振り分けた。三分の一が魔法師団、三分の一がクルーズ伯爵家、残りの三分の一がその他各所必要そうな所へと言った感じだ。新たな我が家であるクルーズ家は代々魔法研究に造詣が深く、義父に続いて義兄の二番目の息子も既に魔法師団に所属している。家にある書庫も立派なものだけれど、そこになかった書物は皆をたいそう喜ばせたようだ。私を受け入れてくれるにあたり、何か提供できる価値があったのならば嬉しいと思う。もちろん私自身に出来ることがあれば、全力で恩を返すつもりだけれども。


「わしもまだ知らぬ魔法式まであったな。しばらくは楽しませてもらえそうじゃ」

「お義父さまは本当に魔法がお好きなのですね」

「あら、せっかくゆっくりできる時間が出来たのですから、これからは私のことも少しは構って下さいましね」


 お義母さまにそう言われると、流石のお義父さまも僅かに頬を染めてたじたじになっている。仲の良い両親を見て、私もこんな夫婦になれるかしらと口元に笑みが浮かんでしまうのだった。

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