表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/5

第5章 : 剣舞と朝露の誓い

朝陽がカーテンの隙間から差し込み、柔らかな光が寝室を満たす。俺は目を覚まし、隣で眠るクラリッサを見つめる。真紅の髪が白いシーツに広がり、穏やかな寝顔が昨夜の情熱とは異なる、静かな美しさを放つ。彼女の肩に残る微かな赤みが、俺たちの親密な時間を思い出させ、胸が熱くなる。クラリッサは俺の推しであり、愛する存在だ。


クラリッサの睫毛が揺れ、ゆっくりと目を開ける。サファイアの瞳が俺を捉え、一瞬驚いたように瞬くが、すぐに頬を染めて微笑む。


「アリウス殿下……おはようございます」


彼女の声は気高さを保ちつつ、昨夜の親密さが滲む。俺は彼女の髪に触れ、囁く。


「おはよう、クラリッサ。寝顔も美しかったが、やはり起きている凛々しい顔立ちも素敵だ」


彼女は目を逸らし、照れ隠しに軽く咳払いする。


「あ、朝からそんな……慣れませんわ…ですが、殿下の寵愛が私に向けられていると思うと。なんだかとても気分がいいですわね」


だが、彼女の手が俺の手にそっと触れ、昨夜の温もりを確かめるように絡まる。シーツの中で彼女の肩に腕を回し、そっと引き寄せる。


「クラリッサ、昨夜は……貴女の全てが、俺の心を奪った。」


彼女の頬がさらに赤くなり、気高さを取り繕う。

キザに取り繕った言葉だが、内容自体は言葉の通りだった。俺は昨日彼女に恋をしてしまった。

彼女の暖かさで未練を断ち切り、心に空いた穴を埋めてもらった。彼女の破滅の未来を変えるための使命として彼女を攻略対象としていたが、これからは婚約者として恋人として共に歩もう。そう思った。


「殿下……貴方は本当に…大胆ですわね。でも、嫌いではありませんわ」


彼女のツンデレな反応に笑みが零れる。朝の光の中で、彼女の柔らかな表情が俺の決意を固める。クラリッサを守り、彼女と未来を築くためどんな障害も乗り越える。その決意が固まった。


「クラリッサ、俺は貴女とずっと一緒にいたい。貴女の笑顔が俺の全てだ」


彼女は静かに頷き、俺の胸に寄り添う。


「アリウス殿……貴方を信じますわ。私も貴方と……」


その時、ローゼノックが甘く熱っぽい室内に響き、ガチャリと言う音と共に部屋に入ってきた。


「アリウス様、朝食の準備が整いました……あら、クラリッサ様の分もご用意いたしますね」


クラリッサが慌ててシーツを引き上げ、頬を染める。


「ろ、ローゼ! もう少し……時間をください!」


ローゼの声に微笑みが滲む。


「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ。朝食は冷めても美味しく食べられるものをご用意しておきますので。ふふふ」


そうしてローゼがニヤつきながら部屋を出ていく。

クラリッサが恥ずかしそうに俺を睨むが、すぐに笑みが零れる。俺は彼女の額に軽くキスし、囁く。


「クラリッサ、貴女とこうしているだけで、俺は幸せだ。」


彼女は目を閉じ、小さく頷く。

朝の光に包まれながら俺たちの絆が固く結ばれる。



朝の光に包まれたクラリッサの寝室でのひとときを終え、俺たちは朝食の席に向かった。クラリッサは気高く振る舞いつつ、時折俺に投げる柔らかな視線に、昨夜の親密な時間が色濃く残る。彼女の頬に浮かぶ微かな赤みが、俺の心を温める。


「アリウス殿下、ぼんやりするのはおやめなさい。

朝食が冷めてしまいますわ!」

「貴女の愛らしさに気を取られただけだよ。それに、ローゼが冷めても美味しく食べられるものを用意してくれたから大丈夫さ」


彼女は「ふん!」と鼻を鳴らしつつ、唇の端が緩む。

ローゼが静かに給仕する中、彼女の灼眼が一瞬二人を捉える。秘めた恋慕が滲むが、すぐに視線を下げ、完璧なメイドとして振る舞う。


朝食後、学園の庭園でクラリッサと散歩する約束をしていた。だが、広場に着くと、リナが待ち構えていた。赤みがかった茶髪を揺らし、眩しい笑顔で突進してくる。


「アリウス殿下!やっとお会いできましたね!剣術の練習に付き合っていただけませんかー?」


彼女の耳元の髪を触る仕草に、里奈の記憶がチラつく。だが、もうそれでくよくよする事はない。

もう俺は里奈ではなくクラリッサを愛している。


「アリウス殿下、またこの平民ですか? 貴方は私との約束を軽んじるつもり?」


彼女の声に刺が宿る。

誤解が再燃する危機だ。これはまずい。


「リナ、悪いが今はクラリッサと約束がある。別の機会にしよう」


リナは目を丸くし、笑顔を崩さない。


「えー、いいじゃないですか。クラリッサ様も一緒にどうですか?あ、公爵家のお嬢様は剣なんて握りませんよね。失礼しました〜」


彼女の一言が火に油を注ぐ。クラリッサが一歩踏み出し、気高く言い放つ。


「いいでしょう、平民の娘。ローレンス流の剣術見せて差し上げましょう」


リナの笑顔が一瞬鋭くなり、目を輝かせる。


「やった! じゃあ、広場の訓練場で! アリウス様も見ていてくださいね!」


俺はクラリッサの手を握り、囁く。


「クラリッサ、無理はするな」


彼女は俺の手を軽く握り返し、気高く微笑む。


「アリウス殿下、心配は無用ですわ。この程度の挑発、返り討ちにします。それに私、なかなかやりますのよ」


訓練場に移動すると、学生たちが好奇の目で集まり始める。クラリッサは深紅のドレスから動きやすい剣術用の装束に着替え、真紅の髪を高く結ぶ。その姿は気品と威圧感に満ち、まるで魔王が降臨したかのようだ。一方、リナは軽やかな動きで剣を手にし、笑顔を崩さない。


「クラリッサ様、準備はよろしいですか?手加減しませんよ!」


クラリッサは剣を構え、冷ややかに答える。


「無用です。貴女こそ格の違いを思い知りなさい」


決闘が始まる。リナの剣は素早く華麗な動きでクラリッサを攻める。だが、クラリッサの剣術は別次元だった。彼女の動きは優雅かつ正確で、まるで舞踏会でのワルツのように流れる。リナの攻撃を軽々と受け流し、一閃で剣を弾く。その姿に俺は息を吞む。彼女はまさにラスボス——圧倒的な強さと気品を兼ね備えた公爵令嬢だ。


「貴女の剣は軽いわ。心も同じですの?」

「くっ」


クラリッサの声は冷たく、剣先がリナの肩をかすめる。リナは一瞬驚いたように後退するが、笑顔を取り戻す。


「クラリッサ様、流石にお強いですね。でも、まだ終りませんよっ!!」


リナが再び突進するが、クラリッサの剣が閃き、リナの剣を弾き飛ばす。剣が地面に落ち、観衆がどよめく。クラリッサは剣を下ろさず、リナを見下ろす。


「これで終わりですわ。貴女の出番はここまで」


その威圧感に、訓練場が静まり返る。リナは地面に座り込み、目を丸くして笑う。


「完敗! クラリッサ様、流石に強すぎです」


クラリッサは剣を収め、気高く背を向ける。


「アリウス殿下、行きましょう。散歩の続きですわ」


俺は彼女に駆け寄り、手を取る。


「クラリッサ、圧巻だった。改めて惚れ直したよ」


彼女は頬を染め、ツンデレに答える。


「ふん、貴方の言葉は大袈裟ですわ。でも……嫌いではありませんわっ!」


リナが立ち上がり、笑顔で手を振る。


「アリウス様、クラリッサ様、楽しかったです!また挑戦いたしますね!」


クラリッサが振り返り、冷ややかに言う。


「次はもっと手加減しませんわ。覚悟なさい!リナ」


初めてクラリッサがリナの名前を呼んだ。

彼女なりにリナの事を少しは認めたと言う事なのだろうか。訓練場を後にし、庭園へ向かう。クラリッサのラスボスの風格が、俺の心をさらに強く惹きつけた。


だけど絶対に怒らせない様にしようと思った。

キレて剣でも握られたら一瞬で叩き切られるビジョンが見える。

てか、アリウスなんで浮気なんてできてたんだよ……



庭園の薔薇が朝露に輝く中、クラリッサと二人で歩く。彼女が立ち止まり、薔薇の花を指でなぞる。


「アリウス殿下、貴方は本当に私を最優先にしてくれるのですか?」


その声に、昨夜の温もりが蘇る。俺は彼女の両手を取り、真剣に言う。


「優先じゃない。クラリッサだけを愛してるよ」


彼女のサファイアの瞳が揺れ、柔らかく微笑む。


「信じます。今の言葉、いつもの詩人みたいに綺麗に飾った言葉じゃなくて、貴方自身の言葉って感じがして心に響きましたわ」


彼女が一歩近づき、俺の胸に寄り添う。薔薇の香りに包まれ、俺たちは軽くキスを交わす。彼女の唇の柔らかさが、俺の決意を確かなものにする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ