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エッセイ つれづれ

指紋認証が私を認証してくれない

作者: のどあめ

セルフレジに続く物理がデジタルを駆逐する、もとい物理がデジタルを阻むお話です。

 はじめての方もお久しぶりの方も。

こんにちは。のどあめです。


 最近、セルフレジとは和解しました。

しかし、次なる障壁が私の前に立ちはだかったのです。(大げさ)


 物理がデジタルを駆逐…もとい物理がデジタルを阻むお話 第二弾。

今回は「指紋認証」です。


 今でこそ普及している指紋認証はですね、昔は生体認証というとってもデジタルでイケてる技術でした。当時、できない会社員でも最新技術が大好きだった私はイケメンを見るよりときめいたものです。


 こういう技術が出てきたのかと興奮する私に誰が言ったのか。


「お偉いさんにプレゼンしたらさ。その人、指先が乾燥し過ぎて認証できなかったらしいぜ(爆笑)」


 当時はそっか、年配者にはあまり向かない技術なんだなと思ってスルーしていたのです。


 なぜなら。それよりも衝撃的な事を言われたから。ある時、某国の超有能で何ヵ国語も話せる気さくなインテリお兄さんと指紋認証についてお話した時です。


「指紋認証は生体認証だから安全って言うけどさ。指切り落としたら、いくらでもコピーできるし成り済ませるんじゃね?」


 てな事を言われたんですよ。

あまりの暴力的な発想を、インテリお兄さんがいつもの通りに朗らかにお話している。あまりのギャップに当時の私は白目をむいていたと思う。


(某国、恐ろしい子!)


 ――文化の違いを感じる瞬間でした。


 閑話休題



 当時の私は、かつてのお偉いさんと同じ経験を自分がするとは想像もしていなかったのです。


 それから幾星霜。

それは、家族の言葉から始まりました。


「お母さん、立て替えて貰ったお金入金するから口座番号教えて」

「いいよ~」


 私のスマホには銀行アプリAと銀行アプリBが入っていて。私は目の前のスマホで銀行アプリAに登録されている口座番号を確認しようとしたのです。


 ちなみに銀行アプリAは天下のメガバンク様のアプリで、それはそれはセキュリティががっちりしてます。


 アプリが立ち上がった。

そんじゃ指紋認証しますか。


 ピッ

 ブブッ

「認証できません。もう一度タッチしてください」


 指先乾いているのかな。指先を少し擦って息を吹きかけて。指の状態を確認してもう一度。


 ピッ

 ブブッ

「認証できません。指をセンサーにしっかり押しつけてください」


 うっ。緊張の一瞬。

そう。最近、私の指紋は認証に時間がかかるのです。


 ピッ

 ブブッ


 しまった、上限に達してロックがかかってしまう。慌てて認証をキャンセルします。


 ログインパスワード?

 そんな小難しいもん忘れたよっ。

 わたしゃ、忘れっぽいんだよ。


 見かねた家族が

「指紋認証効かない時はハンドクリームつけると良いって書いてあるよ」


 そうかい。

 調べて貰ってすまないねえ。

 クリームをくれるの?

 ありがとうねえ。


 すっかり気分はあやしい老人になって手をさしだします。


 ブチュッ

手のひらに大量のクリーム。


私の手は潤いすぎてべたべたになりました。


「………」(じっと家族を見る。)

「ごめ~ん。量少なくなってたから思いきりチューブ搾っちゃった~」

 てへぺろ☆なリアクションの家族。


 ま、私の子どもだからな。


 この言葉を唱えるとあら不思議。大抵の事に諦めがつきます。私とそっくりな雑さとポンコツぶりに叱るに叱れない。なお、失敗を笑ってごまかすのは相方似。良くも悪くもしっかり仕事してるな遺伝子、と思うこの頃。


 気を取り直してワンモアトライ。


 ピッ

 ブブッ


 ピッ

 ブブッ


「上限に達しました。しばらくたってからお試しください」


 無情にも認証エラーが上限に達してしまいました。まるで老舗の店員さんに


「あなたはん、どちらさま?え、のどあめはん?何回も来ている?覚えがあらしまへんなあ。えろうすんまへん。うちんとこは一見さんお断りどす」


 と言われている気分がします。ああ、本人すら締め出す万全のゲートキーパー、銀行アプリA様。


 一方、銀行アプリBはと言うと、指紋認証が機能しない事を想定してか。あらかじめ分かりやすくパスワード入力画面と指紋認証画面がでてきます。デジタル難民への理解が行き届いている親切設計です。


 例えてみれば近所の顔馴染みのお店でしょうか。


「あ、いらっしゃ~い、のどあめさん。いつもありがとうございます。ああ、その扉開けにくいよね。どうぞ、こっちから入って入って」


 という感じ。


 とは言うものの。絶賛こちらの指紋認証も使えないのでパスワード入力ばかりです。



 ちなみに、さらにカジュアルなのが○oogle ○lay さんだ。


「のどあめさん、毎度です。あれ?ちょっとご様子変わらはれた?ま、いつも通り買い物してってください~。カードですからな~。幾らでもチャリンチャリン♪ 商売繁昌ですわ、ガッハッハ~」


 しかし。こちらも最近、認証に時間かかるしパスワード入力を要求されたりする。


 仕方がない。私はスマホの設定パネルを開けて指紋認証の登録し直す事にしました。


 いつも使う指は、小学生の時に彫刻刀で作った傷痕があります。例えるならイラストやさんにでてくるヤの字のおじさんの顔。


挿絵(By みてみん)


 めちゃくちゃ特徴ある指なのにな~。指を見直して私は衝撃を受けました。なにこれ。


 かつて、つるつるで傷痕以外皺ひとつ無かった私の指。しばらく見ない間に縦橫橫縦橫、と皺皺になっているではありませんか。まるでしょぼしょぼしわしわのお婆さんだもの。


挿絵(By みてみん)


 これでは

「あんたはん、どなたです?」


 と聞かれても仕方ないか~。


 一生変化しないと言われている指紋。それでも指全体の経年劣化には敵わないようです。昨年、登録し直した筈なのに。


 現実を受け入れてこまめに登録し直そう。そう思いました。


 登録し直してから銀行アプリAにログインしました。


 ピピッ


 これまでの苦労が嘘の様にあっけなく私の指紋は認証されました。


「どうもこんにちは、のどあめはん。いつもお世話さまどす。」


 そう言って老舗の店員、銀行アプリA様に迎え入れられた気がしました。


 おしまい

アホな拙文を最後までお読み頂きありがとうございます!


これから半年ごととか三ヶ月毎に登録し直さないといけないのかと思うと少し憂鬱です。

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― 新着の感想 ―
大変面白く読ませていただきました 指紋認証、そんな感じなんですね〜勉強になります 自分、顔認証でやってるんですが 髪型変えても、寝癖ひどくても、マスクつけても、メガネ外してもどうぞどうぞされるんです…
「決して変わらない特徴だから安心」とされている指紋認証にも、様々な問題点はあるのですね。 確かに指紋自体は変わらないかもしれませんが、皺や切り傷といった後天的な要因で変化する事は往々にして御座いますか…
しませんよねー、認証(´・ω・`) 機械に対してこちらは理解を示し、同じ歩調で歩もうとしているのに、ねじれの位置に行かれてしまうような気分です。 あまりにもしつこく頑張るものだから、自分がストーカーに…
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