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9 魔物の討伐依頼は無理ゲーです

サエが助けた騎士風の男は、街の西を守る貴族ウェスティンが保有する騎士団の団長らしかった。サエにとても感謝していて、僕らに色々こちらの世界の事を教えてくれた。


「泊まるところは決まってないのか。なら家に来るといい。」


「え、僕は知らない人の家とか気まずいから無理で…」


「ありがとうございます!お世話になります!」


サエに押し切られた。ちなみに騎士団長さんの名前はアレンだった。


「3人はこれからどうするんだ?魔王を討伐するのか?」


アレンさんが食事をしながら尋ねてきた。魔人もいなくなったので店も平常運転に戻っていた。テーブルには料理が並んでいるが、異世界人には毒かも知れないので、僕は米っぽいのを一口だけ食べた。明日まで異変がなければ今後は安心して食べられる。


「僕は元の世界に戻る方法を探したい。チートスキルは何でもありみたいだし、元の世界に戻るスキルもあるんじゃないかな。」


「私もレイリと一緒に戻りたい。お母さんも心配だし。」


「僕はせっかくイケメンに生まれ変わったし、異世界生活を満喫するよ。でもレイリくんとサエさんが帰る手伝いはしようと思ってる。助けてもらったしね。」


「そうか、わかった。俺の家を拠点に帰る方法を探してくれたらいいが、実はあまり裕福ではないんだ。十分な食事を出してあげられないから、まず生活を安定させないとな。ギルドで冒険者登録をして、魔物討伐で金を稼ぐのがお勧めだ。」


「戦うのは怖いからパスで。」


「え?魔人を倒しただろ?そのへんの魔物なんて余裕じゃないか。」


「たまたま魔人を触った時に、使うつもりのない魔法が発動しただけだよ。魔物を触るなんて怖く出来ないよ。」


その時、隣のテーブルで食事していた19歳くらいの女の人がショックを受けたように立ち上がってこちらを見た。


「そんな!あなた達だけが頼りなんです!魔物と戦えないなんて言わないで!」


隣でこちらの話を聞いていたようだ。厄介な事に巻きこまれそうな気がする。


「何か困ってるんですか?」


サエの正義感が発動し、女の人はよくぞ聞いてくれたとばかりに頷いた。


「近くの海にクラーケンが出るようになって、もう一ヶ月もこの街の漁師は漁に出れてないんです!討伐隊も全滅して、絶望してたところにあなた達が来てくれて、あの魔人を倒せるぐらい強かったから、もう安心だって思ってたのに!」


目に涙を溜めて訴えられると、何とかしてあげたくなった。クラーケン?ゲームか何かで見たことがあるな…


「クラーケンって大きいイカの魔物ですか?気づかれずに近づけます?」


「20メートルくらいあるイカです。目が良くて、近づくと10本の足で襲われます。」


「・・・無理です、他の人に頼んで下さい。」


サエは助けてあげたい様子だったが、自分では力不足と思ったのか黙っていた。女の人は涙を流して僕たちしか頼れないと訴えてきたが、近づくだけで襲われるとなると魔人を倒した魔法は使えないし、他の魔法はどんなリスクがあるかも分からないので、安請け合いは出来なかった。困っているとヒルが女の人の肩に手を乗せて囁いた。


「ゴメンね、今の僕らじゃ力不足なんだ。」


とたんに女の人はポーッとして、


「いいんです。お邪魔してごめんなさい。」


と去っていった。ん、あんなに必死だったのにいいの?助かったけどちょっと納得いかない。チートイケメンは思ってたより恐ろしい能力なのかも知れないと思った。

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