73 スフエク
僕が躊躇している間にアレンさんが滅ぼされてしまった!ショックで動けなくなった僕をタロトが引っ張り、柱の陰に2人で隠れた。
僕はタロトを見つめた。アレンさんはタロトの父親だ。生まれ変わりが普通にあるこの世界で、親子の絆はどのぐらい強いのだろう。生まれ変わって間もないタロトは、アレンさんが滅びたことを何とも思わないのだろうか。そんなことを思いながらタロトの表情を見たが、緊張しか読み取れなかった。
「アレンさんが、アレンさんが、」
僕は動揺してうまくしゃべれなかった。タロトは分かってるという風に頷いた。
「あの野郎、アレンを滅ぼしやがった。ただじゃおかねぇ。だが、今はまともにやっても勝てねぇ。作戦通りにスフエクでヒルの場所に飛ばすぞ。」
僕は頷くことしかできなかった。この世界で出会ってからそれほど経ってないけど、僕にとっては濃厚な時間で、すでに家族のように近い存在だと感じていた。異世界の生活は不安だらけで、アレンさんとエレンさんが助けてくれたことは、本当に大きかったのだ。アレンさんがいなくなるなんてとても受け入れられなくて、今でもアレンさんの声が近くに聞こえるような気がする。
「よくもやってくれたな!次は簡単にはやられんぞ!!」
あれ?本当にアレンさんだ。どゆこと?滅んで無かったの?いや、でも次はやられんぞってことは、1回やられてるよね?
僕が混乱している間にアレンさんと数人の兵士が入り口から入ってきて、ジークスに挑み、再びジークスの一撃を食らって消えた!え?僕は状況についていく前にもう一度アレンさんが滅ぼされてしまって、悲しんでいいのか分からなくなった。ジークスが忌々しそうに顔を歪めた。
「おい、サロム!」
ジークスの向こうに隠れてたサロムが出てきた。
「はい!!」
緊張して指示を待つサロムにジークスは冷たい目を向けた。
「何度滅ぼしてもニンゲンが向かってくる。さすがに面倒だ。復活の魔道具を見つけて壊してこい。途中で戦いにならんようにニンゲンに変身していけよ。」
「かしこまりました!!」
サロムがニンゲンの姿になり、近くに倒れていた兵士から鎧を奪って装着した。鎧を奪われた兵士は生命力がほとんど残っていなかったようで、全く動かなかったが、やがて薄くなって消えた。僕はジークスの会話で状況がようやく分かった。サエとカルビンが決闘した時の復活用魔導具が、ゴーヨクの屋敷にもあるのだろう。今消えた兵士も、アレンさんも、また復活するということだ。
僕は少しホッとして、やるべきことに集中出来るようになった。まずはヒルと場所を交代だ。
「スフ、エクス、チェン、ヒルデガルド」
ヒルのいた場所と入れ替わると、そこは森の中だった。近くにステラさんがいて、僕の周りには何に使うのか分からない道具が点々と置かれて円を形作っていた。
「あら、思ってたより速かったわね。ジークスは見つけたの?」
僕は頷いた。
「ステラさんの準備は良いですか?」
「ええ、いつでもどうぞ。」
魔人達のボスが転生されて来るのに、ステラさんは余裕そうで、緊張した様子は無かった。僕の方がよっぽど緊張して次の魔法を使った。
「スフ、エクス、チェン、ジークス!」
先ほどの部屋に戻ってきた。アレンさん達が部屋に駆け込んできたところで、ジークスを探してキョロキョロしていた。アレンさんが僕に気づいた。
「レイリくん!こんなところで何をしてるんだ?」
「ジークス…あのアレンさんがさっき戦ってた魔人を止めに来たんです。アレンさん達はみんな無事ですか?エレンさんも、ウェスティン夫人も心配してましたよ。」
アレンさんは気まずそうに頭をかいた。
「心配をかけてすまなかったな。すっかり操られていたよ。気づいたらゴーヨク邸でゴーヨク氏の私兵と戦っているところだった。正気を取り戻してからは協力してあの魔人に挑んだんだが、全く歯が立たなかったよ。ゴーヨク氏の魔道具があったから何とかみんな生きてるよ。」
そう言って、アレンさんは弱々しく笑った。




