7 魔人とのバトルは無理ゲーです
騎士風の男が剣で斬りつけるのを、魔人は避けようともせずに受けた。斬られても傷一つついていなかった。
「俺の防御力は2000だが、お前の攻撃力は鑑定したところ230しかない。剣は良いものを持ってるようだが、それでも合わせて500ぐらいにしかならん。避けるまでもないわ。ちなみに俺の生命力は20万だ。お前程度では話にならん。」
魔人はショックで固まってる騎士風の男に近づき、剣の刃の根元を指でなぞった。剣はなぞられた場所でスパッと切れ、刃が地面に落ちてカランと鳴った。酒場に居た客はみな、無言で信じられない光景を見ていた。
「お前達など、いくらいても脅威ではないが、身のほど知らずに向かって来られるのは面倒だ。見せしめにぶっ飛ばしておくか。」
そう言って手のひらを騎士風の男に向ける。これはきっとやばい。どうしようもなくて、僕は思わず目をぎゅっとつぶった。
「ちょっと待ってくれないか。」
ヒルが突然魔人に話しかけた。僕はびっくりしてヒルを見る。刺激したら僕らも危ないよ!
「君は見たスキルを奪えると言ってたね。僕のチートイケメンも奪ったのだろう?返してくれないかい?」
…この場面で何を言ってるんだ?魔人もちょっと困惑した感じになった。
「いらんと言っただろう、そんなくだらん能力、獲っとらん。」
それだけ言うと騎士風の男に向き直り、魔法を唱えた。
「エル、ギガドラ、フレイズ!」
最後のズを唱える瞬間、死角からサエが飛び出して魔人の手を蹴り上げた。魔人から出た炎の玉が空中に飛び出し、はるか上空で花火のように破裂した。あんなのを食らったら人間はひとたまりもない。
てかサエはいつの間に移動したの?まさかヒルが変なことを言ってる隙に死角に回り込んだのか?なぜ?騎士風の男を助けるため?でも、ここからどうするの?勝てる見込みがないよ!
「みんな、逃げて!」
サエはそう言いながら魔人に向かっていく。みんなが逃げる間の時間稼ぎをしようとしてるのだろうか、無謀すぎる!あっという間に魔人に捕まった。かなり怒っているようだった。弱いくせにチョロチョロしやがって、と悪態をつきながら、サエを掴んだまま反対の手を向けた。
サエが危ない!僕はパニックになって魔人にしがみついた。
「やめて!助けてよ!離して!」
すると急に世界が止まって、心に直接女の人の声が届いた。
「メテ、ケテヨ、ナシテを受け付けました。使用する魔力量を指定してください。」
「・・・使った覚えはないですけど?」
「あれ、空耳?キャンセルしますか?」
「使います!」