69 ジークスをどうする?
時が動き出すと、エンビス(女の魔人)が蒸発したように消えた。うまくメテケテで倒せたようだ。
小屋の中に魔人はいなくなったので、サエの事が心配になった。ムキムキ魔人に見つからないようにそーっと壁の穴から外を伺うと、サエに反対側から声を掛けられた。
「あれ?ケーキから出てきたの?魔人は?」
僕はビックリして跳び上がった。サエはそんな僕の反応を見て可笑しそうに笑った。気を取り直してこちらの状況を伝えると、サエは手のひらを向けてハイタッチを求めた。僕は控えめにペチンと手のひらを合わせた。
「やったね。全員無事だ。」
サエは嬉しそうに微笑んだ。無事かというとステラさんが倒れたのが気になったが、小屋に目を戻すとヒルに抱き抱えられて幸せそうにニヤけているステラさんが目に入った。大丈夫そうだ。
ステラさんが持ってきた回復薬でタロトとステラさんが全快した後、僕は皆に魔人達が話していた内容を伝えた。今後の行動を話し合うためだ。
「魔人達がジークスって呼んでた魔人がいて、サエ達が来る前にゴーヨクの屋敷に向ったんだ。雰囲気からすると、魔人達のボスだと思う。ゴーヨクの屋敷で禁書と神化の腕輪を奪って、禁書を発動するのが目的みたい。サロムが僕に変身出来るから、本当に発動出来ちゃうかも知れないし、早く誰かに知らせないと危険だと思う。警察みたいな組織がこっちにもあるのかな?」
僕はステラさんを見た。ニンゲン社会に詳しそうなのは僕らの中でステラさんだけだったからだ。
「警察が何か知らないけど、魔人と戦うなら国営軍ね。西門の門番に説明して呼んでもらいましょう。1日もあれば来てくれるわ。」
「ゴーヨクの私兵が1日も耐えられるか?禁書を入手されたら終わりだぞ。何に使う気か知らねぇが、ろくなことにはならねぇだろ。俺様はここのメンバーで止めに行くのが得策だと思うぜ。」
ステラさんは軍に任せる派だった。僕もそれに賛成だったが、タロトは好戦的な性格なのでゴーヨク邸に向かう派だった。今のところ2対1だ。
「ゴーヨクは好きじゃないけど、襲われてるなら見て見ぬふりは出来ないわ。私は助けに行く。」
サエはいつものヒーロー思考でゴーヨク邸に向かう派だった。これで2対2、まぁ予想通りだ。ヒルは今回の魔人戦で活躍できなかったし軍に任せる派だろう。多数派でサエを説得しようと思った。
「魔人の陰謀を止めて街を救う英雄なんて格好いいじゃないか!イケメンとしてはジークスを止めに行くべきだと思うよ。」
く、そうなるか。止められる気でいるのが不思議だ。
「魔人達のボスだよ?かなうわけないよ!ステラさんに守られてるだけじゃイケメンじゃないでしょ?」
僕は慌ててヒルを説得した。
「うーん、確かに。」
ヒルが納得しかけたのを見てタロトが口を挟んだ。
「いや、ヒルが魔毒茸を出さなかったらやばかったからなぁ、何が役に立つか分からんぜ。」
「そうだよね、僕のチートイケメンが役立つかも知れないし!」
タロトの余計な後押しで、ヒルがまたやる気になってしまった。
「チートイケメンは魔人に通じなかったでしょ?逆にエンビスに操られてたじゃない!」
「いやまぁ、そうだよね。」
僕は再びこちら側にヒルを引き入れた。
「迷ってるのがイケメンらしくないわ!出来るか出来ないかじゃないでしょ?やるかやらないかなのよ!それが正しいと思うなら、やるしかないのよ!」
サエが根性論を持ち出した。ヒーロー思考は時に乱暴だ。そしてサエはヒルに厳しいと思う。クラーケン戦ではエサにしてたし。
「そうだね、やろう!ジークスを止めよう!」
困ったことに、ヒルはハッパをかけられて意思が固まってしまった。これで2対3と軍に任せる派は不利になった。唯一の味方のステラさんと協力して・・・
「ヒルデガルド様が行くならお供しますわ♪」
説得は無理ゲーだった。




