67 サエ視点 グラニス戦
レイリに化けた魔人を蹴り飛ばすと、吹っ飛んでいった先にいた筋骨たくましい魔人が飛びかかってきた。何となく嫌な予感がしたので正面から受けとめるのはやめにして、パンチが当たった瞬間に威力を見積もって、ノーダメージになるぐらいの力加減で後ろに跳んだ。
思ったより威力があって、かなりの勢いで後ろに跳ぶことになった。チャイポンのお父さんと手合わせした時の事を思い出した。ムエタイチャンピオンの蹴りはスゴイ威力で、ダメージを減らすために後ろに跳んだ私は、壁に思いっきり突っ込む事になった。
あの時の私は小学5年生だった。当然今の私は一味違う。壁にぶつかる瞬間に剣で切り込みを入れて突き破るダメージを軽減した。かなり素早く行動したので、ノーダメージなのを気づかれてない事に期待だ。油断して近づいてくれたほうがいい。
だがそんな期待を裏切るように、ムキムキ魔人は小屋の外まで警戒しながら出てきた。こちらがノーダメージなことに気づいているようだった。
「お前、五剣聖のひとりか?名前は?」
「五剣聖が何かも知らないわ。名前はサエよ。」
名乗ってからしまったと思った。顔と名前を知ってるだけで使える魔法があるとタロトに注意されて、実際にレイリに化ける魔人を見たばかりなのに、つい名乗ってしまった。まぁいいか。ヒーローは偽名なんて使わないよね。ん?正体隠してる方がヒーローらしいか?分かんなくなってきた。
「五剣聖じゃなかったか。だが名乗るとは潔いじゃねーか。俺はグラニスだ。俺の使う魔法は身体強化だけだが、ニンゲンのそれとは次元が違うからな。ナメてかかって簡単に滅びるんじゃねーぞ、楽しませろよ?」
脳筋っぽい敵だったので、名乗っちゃったのは気にしなくて良さそうだった。私は油断せずに剣を抜いて構えた。魔人がどれほど強いのか分かんないけど、魔石を切れば一撃だろう。魔石の位置は問題なく見えていた。
私は一気に間合いを詰めて魔石に切りかかった。グラニスは動かなかった。速すぎて反応できなかったのかと思ったけど、違った。グラニスに当たった剣は高い音を立てて折れ、剣先が飛んで地面に刺さった。グラニスはニヤリと笑って私を見下ろした。
「身体強化って言っただろ?そんなもんじゃあ切れねぇな。」
グラニスが攻撃しようと腕を振りかぶったので、私は距離を取った。剣は半分ぐらいの長さになっていた。




