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63 ピンクのキノコ

僕は大声を出すタイミングを探った。ヒョロ魔人の攻撃は絶え間なく続いていて、ステラさんは苦しそうに耐えていた。女の魔人はヒョロ魔人の戦いを見ながらケーキを食べ続けていた。もうずいぶんケーキは減って薄くなって来ていて、僕の顔の近くまで手が伸びてきた。そして、ついに目の前のケーキが削り取られ、僕は女の魔人と目が合った。女の魔人は状況がよく理解できなかったのか、目を丸くして黙っていた。


「食べ過ぎだー!!!」


僕は思いっきり叫んだ。今までヒヤヒヤして隠れていたストレスを全てぶつけるように全力だった。魔法により100人分の声になっていたので、すぐそばに居た女の魔人の髪が、風圧で横にたなびいた。


「ふぎゃー!!!」


今までの冷静さを完全に失って、女の魔人が跳び上がった。ケーキの中から敵が出てきて叫んだら、それは取り乱すのも仕方ないと思う。それにしても痛快な驚きっぷりだった。


ヒョロ魔人も警戒はしていたようだが、後ろのケーキからありえない大声が聞こえて、さすがにひるんだ。呪文を唱えるのを止めて後ろを振り返った。驚いていたので、口が半開きだった。


その口に、タロトがピンクのキノコをひとかけら押し込んだ。タロトも大声を聞いたときにはビクッとなったが、ヒョロ魔人より早く気を取り直し、ヒルが魔法で出したキノコを掴んでヒョロ魔人に突撃し、キノコの一部をムシって突っ込んだのだ。ヒョロ魔人は思わず飲み込んでしまったようで、タロトをスゴイ形相で睨みつけた。


「キサマ!何を食わせた!」


さっきまでの丁寧な言葉遣いをする余裕もなくなったようだった。すぐに攻撃を再開しようと手を前にかざしたが、タロトが持っているピンクのキノコを見て、驚きを隠せない様子でつぶやいた。


「なぜそんな物を持っている?」


驚きのあまりヒョロ魔人の声はかすれていた。


「人間は魔力量が少ないからな、普通に食ってるみたいだぜ?」


タロトがおかしそうに応えた。信じられねぇよな、とヒョロ魔人に言いたそうな雰囲気だった。タロトは状況を理解してないヒル達に向き直って、


「このピンクのキノコは食べた奴の魔力量が大きいほど毒が強くなるんだ。普通の魔人には猛毒だから、魔人界からは除去されてる。俺様も図鑑で知っただけで、実物は初めて見た。」


と言ってキノコをヒルに放り投げた。ヒルは猛毒と聞いたからか、お腹を壊した記憶を思い出したからか、顔をしかめて避けた。魔力量が多いほど毒が強くなる?僕が食べてたら完全にアウトだったってことだよね?いや、危な!


過去のニアミスに肝を冷やしていると、ヒョロ魔人の身体から蒸気が上がった。段々とその量が多くなり、ヒョロ魔人は悔しそうに顔を歪めて叫んだ。


「魔法で負けるならまだしも!こんなマヌケな滅び方をするなんて!ちくしょうめ!エンビス!後は任せましたよ!」


そしてヒョロ魔人の姿は薄くなって消えた。

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