61 タロト視点
ここは、、俺様が魔人だった時の故郷か?確かさっきまで戦闘中で、メルヒル・・・ヒルニャンがやられそうになったのを助けて。ちっ、頭でも打ったか?寝てる場合じゃねーのにな。
そこに魔人だった時のメルヒルが近づいてきた。はっ!懐かしいな。メルヒルと初めて会った時じゃねーか。
「やぁ、君はスキルが奪えるんだって?僕のスキルを奪ってくれないか?」
「悪いな、常時発動スキルは奪えねーんだ。」
俺様は初めてメルヒルと会った時とは違う返事をした。別に思い出をそのまま辿らなくてもいいだろ?
「?僕、スキルの説明したっけ?」
まぁ、初対面のシーンであんな返事をしたらそうなるわな。
「ここは俺様の夢の中だ。お前は現実世界では俺様の昔からのダチで、スキルのこともよく知ってる。一度見たり聞いたりしたことは忘れないスキルだろ?生まれ変わっても引き継がれるスキルのせいで、世界が始まって以来の全ての出来事を記憶してて、ニンゲンと魔人の争いにうんざりしてたよな。」
夢の中のメルヒルはキョトンとした顔で俺様を見たが、すぐに状況を受け入れたようだ。嬉しそうに笑って話しかけてきた。
「僕は君の夢の中の登場人物ってわけ?で、君の現実で僕は今何をしてるの?」
「ニンゲンに飼われてる魔物猫だな。」
「あはは、何それ、予想外だね。魔物なのにニンゲンと暮らしてるの?」
メルヒルは俺様の近くに腰をおろした。隣に座れと、身ぶりで示してくる。現実は戦闘中なんだ。夢の中でゆっくり話してる暇はねーんだけどな。メルヒルはお構い無しで話を続けてきた。
「君とは仲が良かったの?今も良いの?」
「あぁ、俺様はスキルを奪うから嫌われてたし、お前しかダチはいなかったな。暴れることしか知らなかった俺様に、いろんな知識を教えてくれたのはお前だ。そのうちお前は魔王の命令でニンゲンの封印魔術師を探しに行って、その魔術師と恋に落ちて、追手の魔王軍に滅ぼされるんだ。その後マハーフ人に生まれ変わって、魔術師と恋人になって、その頃もたまに会ってたよ。魔鳩の足に会う日時を書いたメッセージを結びつけてくるんだ。分かりにくいったらなかったぜ。ある時から連絡が来なくなったけどな、俺様はまだダチだと思ってる。」
話をしてると昔を思い出して楽しくなってきた。メルヒルと久しぶりに話ができたのが、夢の中だとしても嬉しかった。
「夢の中だから言うけどよ、俺様は魔王になって、ニンゲンとの争いをやめたかったんだ。ニンゲンのマハーフ人に対する扱いもお前から聞いてムカついたし、ニンゲンも魔人もマハーフ人も、全部対等にしてやりたかった。みんながルールを守って暮らす世界にしてよ、お前に一番いいルールを作ってもらうつもりだったんだ。でも、失敗しちまった。マハーフ人のガキになっちまったんじゃ、世界統一は難しそうだわ。」
俺様が弱音を吐くなんてガラじゃねーが、夢の中でならまぁいいか。そう思いつつ横に座ってるメルヒルを見た。弱音を吐く俺様に幻滅しただろうかと、ちょっと心配だった。メルヒルはいつも通り穏やかに笑っていた。
「ちょっとぐらい回り道してもいいんじゃない?今はマハーフ人を楽しみなよ。いつか君が世界統一するまで、僕は何世代でも待ってるし、君が忘れても僕が全てを憶えてるから、思い出させてあげるよ。」
「それは優しさなのか?すげぇプレッシャーだわ。」
俺様達は声をたてて笑った。副魔王の時からずっと、思ったようにいかなくて焦ってたのかもな。なんとなく、メルヒルと話して張ってた肩肘がほぐれたように感じた。俺様が頭の中で作ったメルヒルだが、確かにこんなこと言いそうな奴だ。
「じゃあ、そろそろ夢から醒めるわ。ニンゲンの仲間が出来てな、ダメダメだから俺様が力を貸してやらんと。あ、そういえばお前の恋人が俺様に似てるとか言ってたよな?あの女、偉そうで感情的で、全然俺様に似てねーわ!」
俺様は立ち上がって、まだ座ってるメルヒルを見下ろして文句を言ってやった。ベルサルール・・・ステラと名乗ってる女魔法使いは、メルヒルから聞いている時はどんなに良い女かと思っていたが、会ってみたら変な女だった。同類と思われてたのが心外だ。俺様の文句を『あはは』と受け流して、メルヒルは俺様を見上げて言った。
「想いを伝えるのが不器用で、ホントは優しくて、やっぱりよく似てると僕は思うよ。」
夢の中で言われるってことは俺様が自分をそう思ってるのか?ダセェ・・・いや、違うな、夢は願望をみるもんだ。俺様はメルヒルに優しいと思われたかったんだな。
じゃあ、ま、現実世界で一働きするか!




