54 サロムの帰還
暗闇の中でじっとして、外を伺っているのは想像以上に疲れることだった。周りの壁はケーキのように甘い匂いが強く、ずっと嗅いでると気持ちが悪くなってくる。魔人がもう1人帰ってくれば、外にいる3人の魔人とゴーヨク邸に向かうようなので、その隙を待っているのだが、なかなか帰ってこない。なるべく音を立てないでおこうと思ってゆっくり息をしているので、苦しくなってきた。ヒルはこんな中でよく一晩耐えられたなと感心する。あと数時間もこの状態が続いたら、僕ならおかしくなってしまうかもしれない!
と、ドアが開いて人が入ってきた!やっと魔人達が出かけてくれる、と嬉しくなったが、入ってきた人を見て声を出しそうになった。街でリザードマンを倒したあとに声をかけてきた男の子だ!あー、確かにサロムって名前だった気がする!え?魔人の仲間だったの?人間に見えるげど??
と思ってるとサロムが変身して薄紫の肌になった。背も高くなって子どもの姿ではなくなった。そういえば変な話し方の女の魔人も、街で会ったときは魔人とは気づかなかった。魔人はみんな人間に変身できるのかな?
「遅かったでありんすな。リザードマンを倒したニンゲンの名は聞けたでありんすか?」
女の魔人がサロムに問いかけた。リザードマンを倒したって僕とサエのことだよね?名前を聞けたかってなんだろう?タロトが簡単に名前を教えるなって言ってたっけ?名前を知ってると何ができるんだろう?いろいろ想像して怖くなってきた。ドキドキして息が速くなる。音を立てないようにしてるから余計に苦しい。
「なんだ?ニンゲンの名前なんて今さら何に使うんだよ?」
ムキムキ魔人が首をかしげた。ナイス!僕もそれが知りたい!
「作戦聞いてなかったでありんすね?」
女の魔人が呆れたようにため息をついた。
「グラニスが作戦なんて聞いてるはずがないでしょう。聞いていても忘れるから一緒のことですが。」
ヒョロ魔人がバカにしたように鼻で笑う。
「よし、お前は後で滅ぼしてやるから待っとけ。」
「それまで憶えていられたら、ですけどね。」
「・・・分かった。今すぐ滅ぼしてやる!」
「遊んでてこれ以上遅れたら全員ジークスに滅ぼされるでありんす。さっさとおさらいして、ゴーヨク邸に行くでありんすよ。じゃぁラストス、説明よろしくでありんす。」
「そうやっていつも私に押しつけますね。」
女の魔人は興味を無くしたように髪をいじり始めた。ヒョロ魔人はあきらめてこの街に来た理由を話し始める。僕は緊張して話の続きを待った。




