52 サエ視点〜レイリとヒル交代直後〜
レイリが場所を交代する呪文を唱えると、レイリのいた場所にヒルが現れてドサリと倒れた。急いでヒルに駆け寄る。ひどい目に遭っていたのかもしれない、交代したレイリも心配だ。
「ヒル!大丈夫?!何があったの?」
ゆするとヒルはすぐに目を開けた。良かった、ぱっと見たところケガは無いみたいだ。
「あれ、サエさんじゃないか。それにタロト君も。レイリ君はどうしたんだい?」
状況がよく分からない、という感じでヒルはキョロキョロと周りを見渡していた。
「スフエクでレイリとヒルの場所を交代したんだ。このあとレイリとサエが交代する予定になってる。時間がないから向こうの状況を教えろよ。ヒルが今まで居たとこは何処だ?サエが簡単に帰って来れるような状況か?」
タロトは倒れてるヒルの手を引き、起こしてやった。地面に座り込んでいるヒルの前で、私とタロトはかがんで目線の高さをヒルと合わせ、返事を待った。ヒルは私達から目線を反らし、気まずそうにする。連れ去られた先で、何か思い出したくないほどショックな経験をしたのだろうか?話すのが辛いかもしれないが、レイリが無事なのか知りたいし、私が交代したあとに切り抜けるヒントも欲しい。何とか話してもらわないと。
「ヒル、話しにくいことがあったのかもしれないけど、教えて欲しい!レイリと私が無事に帰って来られるかは、ヒルの情報にかかってるの!」
私はヒルの肩を掴み、じっとヒルを見つめた。目はまだ合わしてくれないが、どの角度から見てもヒルはイケメンで、心を持っていかれそうになる。さすがのチート能力だ。今はヒルの外見にドキドキしている場合じゃないと、自分に言い聞かせた。
「非常に言いにくいのだけど・・・」
眉間にシワをよせて、苦悩の表情でヒルが話し始める。私とタロトは緊張して、静かに次の言葉を待った。
「ウェスティン邸で家の人に見つかりそうになったから、ケーキの中に隠れたんだ。その後ケーキごと何処かに運ばれたんだけど、何処かは分からない。誰に連れて行かれたかも分からないんだ。」
ヒルは悔しそうに顔をゆがめた。
「何か状況を理解するヒントになるような会話は無かったか?周りに何人ぐらい居るかとか。」
タロトはヒルから情報が得られずにガッカリした様子だったが、どんな些細な情報も漏らさず活用しようとしているようだった。
「それが、僕は狭くて暗い所が苦手で、ケーキの中にいるのを意識すると息苦しくなるから、眠ってたんだ。」
「え?寝てたの?連れ去られながら?びっくりするぐらいの神経の図太さね。」
思わず感心してしまった。レイリなら不安でとても落ち着かないだろうし、私でもその状況では緊張してしまう。眠るなんて到底出来ない。まぁ、すごいとは思うが役には立ってない。寝てたかぁ、状況が全くわかんないじゃん。困ったなぁ。




