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49 ヒルデガルド視点

やぁ、僕はヒルデガルド。今、非常に困っている。


ウェスティン夫人に呼ばれてこっそり部屋まで行こうとしたんだけど、門のところでアレンさんに見つかった。あちゃーと思ってたら親切なアレンさんが僕を案内してくれると言って、ラッキーとなったんだけど、途中で語尾が『ありんす』の不思議なメイドと会話したと思ったらアレンさんの様子がおかしくなって、僕を置いてどこかに行ってしまった。


ウェスティン夫人の部屋は階段を上がって一番奥らしい。ここからは自分の力で、誰にも見つからずにたどり着くしかない!


「おい、見かけないヤツだな、誰だお前?」


さっそく見つかってしまった、どうしよう。

仕方ない、堂々として立っていよう。イケメンにはオドオドした態度は似合わないからね!僕が何も答えず、堂々と見つめていると、相手のほうが気まずくなったようで勝手に答えを探し出した。


「あ、そうか、今日は厨房が忙しいから応援を雇ったんだな?ほれ、厨房はそっちだ。頑張れよ!」


僕は手を振って感謝を伝えると厨房に向かった。まぁ本当に行きたいのは二階だが仕方ない。いったんこの人から離れよう。


厨房に入るとバカでかいケーキがあった。宝石でキラキラに飾り付けられていて、『ヒラリー誕生日おめでとう』というプレートがのっている。半分に開いた状態で、なぜか中央がくり抜いてあって、2つ合わせると中に人が1人隠れられるぐらいのスペースが作ってあった。珍しくて観察していると、なんだか大勢の人が近づいてくる気配があったので、思わずケーキの中に隠れた。するとやってきた警備のメンバーらしき人達が、僕ごとケーキを屋敷の外に持ち出した!しかもみんな様子がおかしい。メイドに声をかけられたアレンさんもだったが、ボーッとしていて魂が抜けたように見える。嫌な予感がしたのでケーキの中に隠れたまま、おとなしく連れ去られて行った。


ケーキの中は狭くて、嫌な記憶が蘇ってきた。この世界に来る前の記憶だ。僕は小さい頃かくれんぼで、捨てられていた冷蔵庫の中に隠れ、友達が見つけるのをあきらめて帰ってしまったことがある。両親が心配して探しに来て、泣き声を聞きつけて助けてくれたのだが、僕はその時から狭い場所が怖くなった。


かくれんぼの次の日、僕は友達にものすごい勢いで怒った。僕にとってはトラウマになるぐらいの経験だったのだから当然だが、友達は僕があまりに怒るから面倒になって離れていった。


友達を失って寂しくなった僕は、ちょっと怒り過ぎたと反省した。しばらく経って、クラスメイトが教室でふざけて投げた黒板消しが僕の顔に直撃して鼻血が出た時、面倒な奴に当ててしまったと青ざめるクラスメイトの顔を見て、寛容さを見せて友達を作るチャンスと思い『気にしないでくれたまえ』と微笑んだら、気持ち悪いと引かれた。それでもう僕には何が正解なのか分からなくなって、居場所を得るのをあきらめた。


そこから中学、高校と1人で過ごしながら、周りを監察していた。僕と同じように空気を読めなくても、チヤホヤ親切にされている男を見て、自分もイケメンなら良かった、生まれ変わったらイケメンになろうと思った。そのイケメンは『誰も僕の中身は見てくれない』とか嘆いていたが、外見で予選落ちする僕には贅沢な悩みに思えた。


転生隕石に巻き込まれた時、願いが叶ったと僕は大喜びした。これからはイケメンとしてチヤホヤされる人生が待っていると。実際にチヤホヤされたし、今のイケメンの姿は気に入っている。予想外だったのは、チヤホヤされているより、サエさんやレイリくんといる方が楽しい事だった。2人が僕を受け入れてくれるのは外見の為ではないと思える。今は『僕の中身は見てくれない』の寂しさに共感できる。僕はイケメンにも簡単には手に入れられないものを、異世界で得た。


狭いところはまだ怖いけど、子供の時冷蔵庫の中で感じた心細さは今は感じない。正義の味方だけど詰めの甘いサエさんと、ビビリだけど最後は頼りになるレイリ君が、きっと僕を見つけてくれる。そう確信していたから、ちょっと寝て待つことにした。





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