48 行方不明
次の日の朝になってもヒルは帰って来なかった。パーティーで浮かれて夜更かしして、まだ寝てるのだろうか?そんな風に考えて朝食を食べていると、エレンさんが少し慌てた感じで僕らの所にやって来た。
「アレンがまだ帰って来てないのよ!何かあったんじゃないかしら?!」
アレンさんは夜勤明けに寄り道をして帰って来たことは今までないらしかった。確かに心配だが、昨日魔物が街に入り込んだ事件があったので、その対応で忙しいのかもしれない。もう少し待ったほうが良いと僕とサエでなだめた。
だが、昼になってもヒルとアレンさんが帰ってこないので、さすがにみんな心配になった。この世界には電話などの通信手段がないので、忙しくても状況を伝える方法がない。エレンさんに留守番を任せて、僕とサエとタロトでウェスティン邸に様子をうかがいに行くことにした。どうせ酔っぱらって寝てるんだろ、とか言いながら向かったが、なんとなく僕らは嫌な予感を感じていて、軽口を叩いてないと不安に負けそうで居心地が悪かった。
ウェスティン邸に着くと身分の高そうな女性が門の前でオロオロしていた。ウェスティン夫人に違いない。落ち着かせるようにサエが声を掛けた。
「どうしましたか?私達でお役に立てる事があれば言って下さいね。その、私達はアレンさんと、ヒルデガルドを迎えに来たのですが、2人がこの中にいるかご存知ありませんか?」
ウェスティン夫人と思わしき人は神経質そうに早口で状況を教えてくれた。
「何もかもなくなったのよ。警備とメイドが10人以上いっぺんにいなくなるし、娘に用意した誕生日ケーキもなくなったし、ヒルデガルドも約束の時間に来ないし、訳がわからないわ。今は夫が王国騎士団に救援を要請しに行ってるところよ。あなた、クラーケンを倒した異世界人でしょ?サエさんだっけ?お願いよ、この訳の分からない状況を解決して下さらない?」
最後の方は疲れたような声だった。サエは優しく微笑みかけて応えた。
「ええ、任して下さい。大変でしたね、落ち着かないでしょうけど、娘さんは無事なんでしょう?一緒にいて安心させて上げて下さいね。」
こんな先の見えない状況で、迷いなく任せて下さいと言えるところがサエのスゴイところだと思う。僕から見ればまさにヒーローだ。でも、本当にどうしよう。僕らで手に負えるような状況じゃないと思うんだけど。




