4 酒場の情報収集は無理ゲーです
ネックレスを付けてみたが、僕には変化が分からなかった。騙されたのだろうか?サエの全財産がガラクタに消えたんじゃないかと思って不安になった。
サエはネックレスの力を疑わず、安心して僕を連れて街に入った。初めて入る街なのに妙に堂々としていた。魔王軍が怖いので、僕は小さくなってサエの後ろに隠れながら、よそ者感丸だしでキョロキョロしていた。
サエは迷いなく酒場に入った。未成年だし、酔っぱらいは怖いし、必要な費用もわからないし、この世界の習慣もわからないのに、なぜ躊躇なく入れるのか理解に苦しむ…僕は気が進まなかったが、サエと離れて街を歩く勇気も無かったので、結局ついて入った。
「これで食事したいんだけど。」
サエは魔物を倒して手に入れたと言っていた石を店員に見せて言った。
「Dクラスの魔石か、まぁいいぜ。空いてる席に座りな。何が食いたいんだ?」
「まかせるわ。2人分、なるべく量多めで。」
常連か!初めて入ったんだよね?何で魔石で支払い出来るって分かったの?料理を任せるのも度胸がありすぎる!写真付きのメニューが欲しい、使用している食材も知りたい。異世界人には毒かも知れないから、まずはスプーン一杯食べてみて、翌日まで体がなんともないか様子をみようよ!いきなりお腹一杯食べるとか、正気の沙汰とは思えない。
僕がドギマギしてる間に、サエはさっさと席について周りを見回していた。近くに人だかりが出来ている席があった。集まってるのは女の人ばかりだった。聞こえてくる声から判断すると、どうやらすごいイケメンが来てるらしい。
サエも興味を持ったらしく、人だかりをかき分け見に行って、感心して席に戻ってきた。
「不自然なぐらいキレイな男の人だわ。女の子が群がるのも無理ないと思う。」
サエはイケメンを見てテンションが上がるタイプじゃないと思ってたので、興味を持って見に行ったのは意外だった。
「好きなタイプだった?」
「わかんない。美術品って感じかな?見るのは楽しいけど、家に飾りたいとは思わない、みたいな?」
そんなよくわからない感想を言ってると、本人が近づいてきた。周りにいた女性たちが残念そうに見送っていた。
「やぁ、そっちの女の子は僕を見ても冷静だね。君たちも転生者だろ?隕石が落ちてきた時に近くにいた中学生じゃないかい?」
おっと、まさかの転生者だった。
「あなたも転生者だったの?!もしかして、そのイケメンはチート能力?」
サエがおかしな質問をした。平和な世界ならイケメンになるのも悪くないだろうが、異世界での生活を前にして、1つしかもらえないチート能力にイケメンを選ぶわけがない。そんな無駄遣いをするのはサエだけだ。
「そうだよ。」
そうなの?!チート能力がゴミの知り合いが増えた。
「イケメンなら女の人にご馳走してもらえると思ってたんだけど、この世界の女性は男におごってもらうのが常識だったんだ。この店の支払いがすでに出来ないんだけど、助けてくれないか?」
なんてこった、思った以上のポンコツだった!チート能力が役に立たない仲間が2人と、使い方も分からない魔力をもって、僕は完全に途方に暮れた。