39 魔仙桃
帰ってきたステラさんは箱に入った小さな桃のようなものをヒルに手渡した。
「これは魔仙桃と呼ばれています。少しの時間ですが攻撃魔法の威力を爆アゲする超絶激レアアイテムですわ!」
「魔仙桃だと?!俺も見るのは初めてだぜ!どうやって手に入れたんだ?」
タロトが興奮してステラさんに詰め寄ったが、ステラさんは涼しい顔で「秘密よ」とだけ返した。
「実際の効果を見てみましょう!私も初めて試すから楽しみです!」
ステラさんもウキウキして家の裏庭に皆を連れ出した。
「食べる前にまず的に向かって初級魔法を使ってみて下さい。」
「やってみるよ。エル、タドラ、フレイズ!」
ヒルが前に突き出した手から野球ボールぐらいの火の玉が飛び出して、木の的に当たって消えた。少し焦げ跡がついたぐらいだ。
「一発で的に当てるなんて才能がありますわ!では魔仙桃を食べて、同じ魔法を使って下さい。」
「これ、美味しいね!よし、エル、タドラ、フレイズ。」
ヒルはゆるい感じで唱えたが、直径がヒルの身長ぐらいある炎が地面をガリガリ削りながらものすごいスピードで飛んで行って、的を消し炭にし、後ろの林を200mぐらいえぐってから大爆発した。いや、威力上がりすぎ!タロトは口をあんぐり開けて固まって、ステラさんも微笑んだまま言葉を失っていた。ヒルもキョトンとしている。ヒルニャンはビックリしてステラさんの腕から逃げ出した。
「なんだそりゃ!初級魔法で魔人と戦えるレベルじゃねーか!!」
我に返ったタロトが叫んだ。ステラさんは何でもないことのように振る舞った。
「ま、まぁこんなものでしょ。ヒルデガルド様、これから毎日ラン、フード、ギャブルを使って、魔仙桃が出たら譲って下さいな。30日に一度魔仙桃が手に入れば、大儲けですわ!あと、ついでにコレも食べて頂けます?」
「師匠!それは僕がお小遣いを貯めてやっと買った万能薬です!」
「まぁいいじゃない、すぐ使うわけじゃないでしょ?これもラン、フード、ギャブルで出たら1つ返してもらえますか?その名の通り生命力も魔力も全て回復するお薬です。苦いのでお気をつけて。」
ステラさんが緑色の団子をヒルに渡す。
「よく味わえよ?」
とタロトはニヤニヤと悪い笑い方をしていた。食べたことがあるのだろう。
ヒルは平気な顔で受け取った。
「心配無用さ、僕はコーヒーもミルクしか入れないからね。」
ブラックじゃないんかい!
「ぐわっ、苦い!!」
期待を裏切らない!!ヒルは一口齧ったのを吐き出して残りを地面に落とした。ヒルニャンが落とした万能薬をパクっと食べて「にゃ〜」と幸せそうに鳴いた。
「うわー!!僕の万能薬!!ヒルニャーン!」
ステラさんの弟子が涙目で訴える。ステラさんが肩に手をポンと置いて、
「またお小遣いを貯めなさい。」
と無慈悲な事を告げた。
タロトは幸せそうにしているヒルニャンを見て、
「万能薬が好物なのか?変わった奴だな、まるで俺の昔のダチみたいな…ん?そういうことか?」
と独り言をつぶやいていた。ヒルニャンの生まれ変わる前と知り合いなのだろうか。まぁ今は深く関わらないでおこう。
次はいよいよ僕の魔法の番だ!!




