28 クラーケン戦-1
クラーケンをサエが足留めしてる間に、ヒルを吊ったクレーンと、クレーンを押した女性達は僕がいるところまで避難してきた。僕はヒルをクレーンから降ろすのを手伝った。
「陸におびき寄せるのは成功だね、後は海に逃げられないように倒せるといいけど。」
ヒルは倒せるのが前提で言ってるが、クラーケンは思ったよりデカくて速い。本当に倒せるだろうか?体は4階建ての家ぐらいの高さがあるし、足も丸太のように太かった。六本の足をうまく使って地面に立ち、残りの4本の足でサエを攻撃していた。エサ(ヒル)を食べるのを邪魔されて怒っているみたいだった。
4本の足で狙われながら、サエは剣で全てを弾き、少しづつ海から離れるように誘導していた。サエも海に逃げられるのを警戒しているようだ。焦らず冷静にさばいているように見えた。
クラーケンを見て遠巻きに怯えていた観客も、なんか勝てそうだぞと近くで見ようと集まってきた。僕とヒルは観客が近づき過ぎないように下がらせた。基本ヒルが声をかければ女性は素直に聞いてくれるし、男は女性達の動きに釣られて下がってくれた。
そんな中、観客から飛び出していく白髪の戦士がいた。カルビンだ!サエに向かって叫んだ。
「お前らに負けて仲間から見捨てられたからな、1から出直しだ!クラーケン討伐に参加して名をあげさせてもらうぜ!!」
そんなカルビンを応援する声が上がった。
「カルビン様!頑張って下さい!」
サエとカルビンの決闘の前日に毒入りクッキーを差し入れしてきたカメ女だった。ヒルが気付いて声をかけた。
「あれ、君はカメ女じゃないか?こんなところでどうしたんだい?」
「はわわ、イケメンと絶望がいる!私はカルビン様の応援です!」
カメ女は当然とばかりに胸を張った。それより、‘’絶望‘’って僕のこと?嫌なあだ名が付いてた。
「あれ?召使いからは解放されたんでしょ?まだカルビンのところにいるの?」
僕が尋ねるとカメ女はちょっと怒ったように返してきた。
「マハーフ人を雇ってくれるところなんて他にありません!もう一度雇ってもらいました!」
サエがしたことはカメ女には喜ばれなかったらしい。もっとこの世界の情報を得ないと、正義の味方も難しそうだ。
「カルビン様は口が乱暴で弱いものいじめをする困った人ですが、人の騙し方や毒入りクッキーの作り方を教えてくれるようなところもあるのです!」
良いところもある、みたいな言い方だったけど、悪いとこしか無かった。その時ヒルが思いついたようにカメ女に話しかけた。
「今の話を聞いていて気づいたんだが、君はサエさんに助けられたカメじゃ無かったってことだね!?」
え、まだカメの恩返しだと思ってたの?僕はヒルのにぶさに絶望を感じた。




