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22話 異世界のローストビーフを食べに行く3


 そして、リーエンの言っていた帰宅予定日の夜――。


 俺は様子を見る為に再び異世界へやってきた。

 隣には、食いっぱぐれた肉料理を食べる為に、勝手に着いてきたモナカ。


「……レイゼンって、もしかして毎日あそこの定食屋で飲んだくれてるのかな……」

「さすがにそこまでじゃないと思いますけど……」


 気を取り直して再びあの町の、あの定食屋へとやってきた俺とモナカ。

 もうすぐ到着――その時だった。


「リーエン!」

「ただいま――わっぷ、いきなり飛びかからないでヨ」

「もう! 2週間も帰らないから、本当心配したんだからね……ケガとかしてない? 大丈夫?」

「全然大丈夫ヨ!」


 大きな革袋を背負ったリーエンに抱き着いているレイゼンを発見する。

 こちらが先に声を掛ける前に、リーエンの方が先に気付いたようだ。


「おっ! オダナカさん、こんばんヨ!」

「えぇ、こんばんは」

「今度も別の人と一緒に居るアルネー……もしかして、彼女さんカ?」


『いや全く全然』


 2人して声がハモる。


「初めましてリーエンさん。ワタシ、オダナカ先輩のお手伝いをしております『大中もなか』と申します。以後、お見知りおきを」

「モナカさんネ! 希少食材料理家のリーエンっていうヨ。よろしくね――で、ワタシの隣に居るのが」

「冒険者のレイゼンよ。初めまして、よろしくね」

 

 この間も席に着く前にモナカが自己紹介をしていたのを聞いていたはずだが――もしかしてこの間の事は、酒で一切覚えていないのか?

 レイゼンにそう言われ、若干脱力しながらも隣のモナカは返事をする。


「よ、よろしく――」

「そういえばこの間は聞かなかったけど、オダナカさん達はなんでこの町に来たんだヨ」

「いえ、実はこのお店で美味しい肉料理が食べられると聞いたんですが――」

「うーん? ここの定食屋さんの料理、美味しいは美味しいケド……そこまで突出するほどでもないようナ」


 特に名物料理などは無いという事か。

 それはそれで楽しみ方はあるのだが――。


「そんな事より、リーエン。2週間も樹海でなにしてたのよ」


 もうレイゼンにはリーエンしか見えていないようだ。


「ふふふ……それは、これを食べてからのお楽しみヨ!」


 彼女は自慢げに背負っていた大きな革袋を叩いた。



 

「まずお鍋に聖水をたっぷり入れて、火にかけるね」


 リーエンは定食屋の主人とは顔見知りなのか、営業終了後に厨房を貸して貰えた。

 早速、彼女の調理がスタートした――ちなみに俺とモナカは興味本位で覗きに来たのだった。

 

 水を張った鍋を、平らに加工された赤い魔石を上に乗せ、魔力を注ぐ――らしい。手から目に見えるようなモノは何も出ていないが、実際にそれで魔石が熱を帯びるのだ。

 

「司祭様に祈って貰った塩、薬草、アマイモの搾り汁を適量入れて……少し緑の魔石を削って混ぜるネ」

「その緑の魔石ってなんですか?」

「本来は風を発生させる石だけど……土の魔力を中和する作用もあるヨ」


 今から何を作るのか全く分からない。

 

「そしてこの具材を、食べる分だけ入れるネ」

「ちょ、ちょいリーエンさん」

「なんだヨ?」

「アタシの目が間違ってなけりゃそれ――“石”だよな?」

「石ダヨ?」


 そう。彼女が今入れた具材はブロック状の石だ。それを2つ、鍋の中へと投入した。

 

「……熱した石の上で肉を焼く的なやつとか?」

「茹でた石の上に置いてもしょうがないと思いますけど……」

「フタをしてしばらく待ちマス。その間に人食い草を刻んで、塩で揉んでおくネ」

「……人食い草?」

「美味しいですよ」

「……食った事あんの?」

「フライパンに赤いワインを入れて香味野菜、ダムールの実を刻んだモノを入れて煮込むヨ……これがソースになるネ」

 

 どこからか良い匂いが漂ってくる。

 それはフライパンからではない――そうだ。この石を煮込んでいた鍋からだ。


「そろそろネ」


 リーエンが鍋のフタを開けると――煮だった石が現れた。


「やっぱ石じゃん!」

「いやでも……」


 この鍋からは――確かな肉の匂いがする。


「イイ感じあるネ。それじゃ、これをムーンリーフと呼ばれている葉っぱで包むね」


 大きな三日月の形をした葉っぱを何枚か使って石を包みヒモで縛り、鉄板の上に乗せて、熱しておいたかまどへと入れる――。


「ムーンツリーって夜に月明りの魔力を吸って成長する、夜行性の木から取れる葉っぱネ。古代では魔除けとして使われていた葉っぱヨ」

「この間のお守りも、もしかして……」

「さぁ。2人ともレイゼンの所に行ってるネ」


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