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3話 異世界の魚料理と日本酒1


「いやぁ。長々とお話してしまいましたな」

「いえいえ。大変ためになるお話でした」

「またそちらの社長さんによろしく言っといて下さい」

「はい。かしこまりました」


 俺は市内でも有名な高級住宅街の一画にある、とある大企業の引退した元社長の宅に営業で来ていた。

 最初の30分で既に取引は完了していたのだが、そこからが長かった。

 

 家族の話、好きなスポーツの話、若い頃にやっていた釣りの話――。


 特に釣りは今でもやっているらしく、魚拓やアルバムなんかも見せられた。

 約3時間ほどの長話を、ずっと適度なヨイショを交えながらしっかりと応対していくのも仕事だと思っても、辛いものがあった。


「まっ。お土産貰ったし、今日はこれで一杯やるか」


 この社長はお酒。その中でも赤ワインが好きらしいのだが、日本酒も友人知人などからよく貰うらしい。

 自分はあまり飲まないからと、高そうな日本酒を3本ほど頂いた。

 背中のリュックに入っていて、肩にずっしりとした重みが掛かる。


「……釣りの話を聞いていたら、魚が食べたくなってきたな」


 呼んでおいたタクシーに乗り、駅までの移動の道中――晩飯の事を考えていた。


(近所のスーパーで半額になった刺身は……若干生臭いんだよな。寿司屋で持ち帰りでも頼むか――)


 まず繁華街に行ってから駅で電車に乗り、駅で降りてさらにバスに乗って自宅のあるアパートまで帰るとなると……もう梅雨も真っ只中というのに雨も降らず、カンカン照りの外を見て、少し不安になる。


(……鍵使えば買ってから即家に帰れれるよな)


 そう考え着くと、あとは早かった。

 まず駅から電車に乗り、会社に戻る。

 今日の報告書の作成や部長へ報告を済まし、定時に退社する。

 会社から少し離れた路地に入ると、白い鍵を適当な扉に差し込む。


「新鮮な魚が食べたい」


 別に言わなくてもイメージすればいいらしいが、気分的に言ってしまう。

 鍵を回し、扉から中へ入ると――まず海が見えた。

 なんか足元は揺れているし、見上げればドクロマークのイラストが描かれている帆が見える。


 揺れている理由は簡単だ。これが木製の帆船で、海の上にいるからだ。

 ドクロマークの帆は実物を見るのは初めてだが、国民的な漫画などでもよく登場するある船の特徴だ。

 

「……これって海賊せ――」

「誰だおめぇ!?」


 冷静に分析している場合じゃなかった。

 ドクロが描かれた青いバンダナを巻いた大男がこちらへ走ってきた。その太い二の腕にもご丁寧にドクロマークの入れ墨が入っている。

 俺も身長は175cmほどあるが、その男は頭1つ分大きかった。


「どこから入って来やがった!?」

「えーっと、そのぉ……」


 確かに新鮮な魚が食べたいとは言ったけれど、漁船ならともかく海賊船にダイレクトに乗せるやつがいるか。

 この場は適当にごまかして、どこかに隠れて金の鍵で即離脱するしかない。


「の、乗る船間違えたみたいなんで帰ります……」

「おい待て!」


 振り返ろうとする俺の腕を一瞬で掴む大男。

 掴まれた所の力強さから分かる。絶対逃げられない。


「昨日寄った村の奴か? ちょっとこっち来い」

「痛っ、痛いですって。逃げたりしませんので!」


 俺はどこかの部屋に乱暴に投げ込まれる。

 他にはロープや木箱、樽などの荷物が所狭しと置かれている。船倉だろうか。


「今日の夕方には町へ着く。それまで大人しくしてろ!」

「は、はい……」

「それと……これは預からせて貰うぞ」


 俺のビジネスカバンとリュックを片手で持ち、乱暴にドアを閉められる。


(しまった……鍵はあの中だ)


 さっき咄嗟にカバンへ鍵を仕舞ってしまったのを思い出す。

 さらに外から鍵を掛けられ、後はもうどうする事も出来ない。

 船倉の壁には窓もなく、ただ揺られ――時間が過ぎるのを待つしかなかった。

 

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