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21話 異世界のタケノコを食べに行く1


 4月とは始まりである。


 入学式、入所式、新年度――色々な始まるイベントが全国各地で発生しているだろう。


 俺の所属するこの部署でもそうだ。


 俺と村上の2人は、新しく配属となった鈴木部長に呼ばれていた。

 部長の隣には、一見すると中学生にも見えるスーツ姿の女性が立っている。


「もう竹中部長の壮行会で会ってるんだっけ? 彼女は『大中もなか』さんだ。こちらの仕事に慣れるしばらくの間、小田中君と村上君と一緒について仕事をお願いするね」

「先輩方、よろしくお願いします」


 これが普段の外向けのキャラなのだろう。

 丁寧にお辞儀する彼女に、若干の違和感を覚える。

 

「よろしくね」

「……よろしく」

 

 物腰の柔らかい白髪の多いおじさん――新しく来た鈴木部長の第一印象だ。

 部長の同期だとは聞いていたが、こちらの方がいささか老けて見える。部長は髪が黒々としていたからか。

 俺らが自分の席へと戻るタイミングで、

 

「……ちなみに竹中部長ってヅラ疑惑あったんですよね」

「えっ、マジか」


 ボソっと村上が教えてくれる。


 席は俺から見て右に村上、そしてモナカの席だ。

 早速、後輩が出来た村上が若干嬉しそうにモナカに仕事を教えている。

 彼女は「ありがとうございます♪」などと外向けの後輩キャラを作って対応しているようだ。

 

(……面倒にならなきゃいいけどなぁ)


 そんな俺の心情とは裏腹に、窓の外を見ると――思わず陽気に当てられて飛び出しそうなくらいの春の快晴であった。


 ◇◆◇


 しかしそれは杞憂だったのか、それからは特に問題もなく1日が過ぎていった。

 部署内の細かいルールや、仕事の内容、次に動く案件などなど――。

 彼女も熱心に聞いていたし、休憩中も異世界の事などはもちろん、特に会話もなかった。


「それでは失礼します」

「お疲れ様です、小田中さん」


 まだ書類を作っている村上を置いて、俺は先に上がる事にした。

 ちなみにモナカは初日という事もあり、定時で帰宅している。


「……気にしすぎか」


 だが、これは俺の油断であった――。


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