シーズン2 ―エピローグ―(後仕舞)
あの慌ただしい異世界での日々から、すぐ後。
年度末決算という現実の地獄を文字通り死ぬ気で乗り切り――。
「それでは。竹中部長の栄転を祝って、乾杯!」
『乾杯~!』
ここは会社最寄りの駅前にある居酒屋『神楽』である。
炭火焼きの焼き鳥をメインとして、各種定番メニューから変わり種まで置いてあるので、部署で飲み会をする時は大抵ここだ。
2階の大部屋には20人ほどが座っている。違う部署からも参加しているからか、少々多めだ。
「部長、お疲れ様でした」
「おー小田中君も。なんだかんだ世話になったなぁ」
部長の空いているグラスにビールを注ぎ、部長もまた俺のグラスにビールを注いでくれる。
「……ところで、次に来るのはどんな方がご存じですか?」
「ん? わたしの同期の鈴木だよ。最近まで地方の支社に居たんだが、ついにこっちに戻れる事になってね」
「そうですか」
心の中で胸を撫でおろす。
ちょっとだけ嫌な予感がしたのだが、よく考えなくとも彼女は俺よりも年下なのは間違いないだろうし――。
「あぁでも。鈴木と同じ支社から転属になる子も居てね。実は今日、来れる事になってるんだけど、ちょっと遅れるって連絡が――」
「お連れの方がご到着致しました」
店員さんに連れられて部屋にやってきたのは――、
「皆様。お疲れ様です」
一見すれば中学生にも見えるくらいの小柄な女性。
この春のトレンドを取り入れたカジュアルな格好をした彼女の名前は――。
「この4月より、鈴木部長と共に働かせていただく事になりました『大中もなか』と申します。以後、お見知りおきを」
『よろしくー!』
既に酒が入っているので割と軽いノリで歓迎するみんなと、
「……よろしく」
「はい、よろしくお願いします。小田中先輩♪」
にっこり顔をしながらも、何やら圧のある感じに挨拶をされる。
「おや、君達は知り合いだったかね?」
「はい。ちょっとした知り合いです」
「そうかそうか。小田中君も、彼女の事をよろしく頼むよ」
「は、はい……」
これからの事は考えず、ひとまず俺はグラスに注がれたビールを……一気飲みするのだった。
シーズン2 完
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