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2話 異世界で喫茶店へ行く4

 

 俺達はパスタを食べ終わり、少し他愛のない雑談をした後――俺は店を後にした。

 クリームサンデーとパンケーキと、ラムステーキにパスタは少し食べ過ぎだったかもしれない。


「気温も少し、和らいで来たな」


 気付けば太陽も砂漠の地平線の向こうに沈もうとしていた。

 そして――俺は迷子になった。


「……帰りの扉、どこだっけな」


 黒の鍵も白の鍵も、入ってきた扉からしか帰ることはできない。

 例外は金の鍵のみ――しかし購入した金額を考えたら、ギリギリまで粘りたい。


「確かこの通りを歩いてきたはずなんだけど」


 正直どの建物も似たような形だ。日中は暑さに気を取られて、すっかり帰りの事を失念していた。


「……少し寒くなってきた」


 砂漠の夜は日中とは比べ物にならないくらい寒くなるという事を思い出した。

 場合によっては氷点下まで下がるという。

 そうやって路地をウロウロしていたら、後ろから声を掛けられる。


「あれ、さっきの……えっと――オダナカさんニャ」

「あっ。先ほどはどうも……」


 さっきの店で会った若い方の猫獣人の――タマだ。

 昼間のフリル付きのドレスから一変して、ダンサーのような少し露出の多いエジプト風の民族衣装を着ている。露出が多いと言っても見えている部分は毛皮に覆われているが。

 口元を薄手の布で覆い、メイクもアイシャドウと口紅をしている。昼間の騒がしい雰囲気とは違って少し大人びて見える。

 

「こんな所でどうしたのニャ。少し寒そうだし」

「いやちょっと迷ってしまって……」

「あー。アタシ達は夜目が効くけど、人種族の人にはちょっと暗いかもしれないニャ」


 ちょっと違うがその勘違いを正している暇は無い。


「では、これで……」

「まぁまぁ。こんな所で立ち話もニャんだし、今日はサービスしとくニャ」

「いや、その――」


 身体が冷えているのもあって少しだけ迷ってしまい、強く断れなかった――それが良くなかった。

 店内はエキゾチックな雰囲気と言えばいいのか。お香を焚いているのかスッキリとした甘い香りが漂い、さっきの喫茶店のように少し薄暗い。

 恰好からしてキャバクラというよりダンスショーでもやっているのだろうか。

 お酒は好きだけど、そういうのは小料理屋や寿司屋、居酒屋で1人で飲むからいいのであって――。


「ここで待っているニャ」


 通されたのはそこそこ広い個室だ。

 窓は無く、この部屋の中にはベッドと棚に置いてある水差しとグラスのみ。

 ドアから少し外を覗くと、半裸の猫獣人と、虎柄の筋肉質の猫獣人が部屋から出ていくのが見えたのでそっとドアを閉じる。

 ここで俺は、この店の”売り”に気付いた。


 コンコン――。

 

「オダナカさん、入り――」

「緊急脱出!」

 

 俺は迷わず金の鍵を床に突き刺し、回す。

 床がパカっと開き、そのまま俺は扉の中へと吸い込まれ――気付けば、自室のベッドで横になっていた。

 見慣れた自室の天井を眺めながら、しばらくそのままで居た。


「危い扉を開けてしまうところだった……」


 少し悪い事をしてしまったと思いはするが、それも疲労感に包まれて横になっている内に――消え失せ、寝ていた。


 次はちゃんと地図を用意しよう――。



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