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18話 大将とラーメンを考える1


 それは数日前。


 大将が、大広場にて開催されるリオランガフェスに参加するお店の参加受付をしていた時の事だった。


「よぉ、久しいなバルド」

「その声は、ガンドル兄さんか!」


 参加受付を終え、列を離れた大将ことバルドへ声を掛けてきた、同じくオーガ族の男が居た。


 2人のオーガは対照的だった。


 まず赤銅(しゃくどう)色の肌の大将(バルド)に対して、ガンドルと呼ばれた男は薄い青い肌。


 服装もまた違った。

 麻の茶色いランニングシャツの上から花柄のエプロンをしているのが大将(バルド)

 まるで日本の板前のような白装束の恰好をしているのがガンドルだ。


「お前、親方のレシピを引き継いだそばを出しているそうじゃねぇか。最近、立派な店も出来て繁盛しているって聞いたぜ」

「そんな事より、兄さん! 親方は――」

「死んだんだろ? リオランガ料理番付の上位、席が空いてお前も嬉しいだろ」

「兄さんッ!」

「別にそんな話をしに来たんじゃねぇ――お前、カンナと祝言上げたんだってな」


 カンナとは親方の一人娘の名前。

 そば料理人であった親方の弟子あるガンドルと大将(バルド)、2人とも仲の良かった間柄だ。

 

「……親方からの遺言だ。俺に、全て託すと――兄さん!」

「……」

「なんで修行にあんなに一生懸命だった兄さんが、途中で投げ出すような真似を……元々、カンナも兄さんの婚約者で……」

「親方は、その志を曲げた。それが許せなかった……さらにアイツは後継者を弟弟子であるお前にすると。全てバルドに託すと……オレに直々言いやがったよ」

「――!」

「カンナも裏では、お前とデキてんのだって、とっくに知ってたんだよこっちはよぉ」

「それは――」

「とにかくだッ!」


 大将(バルド)が何かを言おうとするも、それを遮るように声を荒げるガンドル。

 

「古のオーガの決闘を知っているな」

「決して逃げられない檻の中で、どっちかが死ぬまで殴り合う……両社は互いに大切なモノを賭けて戦う……」

「そうだ。今では廃れた伝統だが、オーガの男は自分の尊厳(そんげん)と誇りを守る為、決闘を申し込まれたら必ず受けなければならない」

「もしかして兄さん」


 ガンドルは大将(バルド)を指差し、叫んだ。

 

「オレはお前に、オーガの決闘を申し込む! 賭け対象はカンナだ! 見届け人には、このお方が引き受けてくれた!」

「どうも、この決闘の見届け人としてご指名を承りました。リオランガフェス実行委員会のラビラビと申します」


 その愛らしい見た目に反し、渋い声と共に両者の間に現れた。

 白く短い毛並み、長い耳、赤い瞳。タキシードにモノクルクロームを付けた兎獣人の紳士。

 オーガが2m半くらいに対して150cmほどなので、より小さく見える。

 

「正直お二方の因縁(いんねん)痴情(ちじょう)のもつれなど、一切興味はありません」


 ハッキリと断言するラビラビだったが、モノクルがキラリと光る。

 

「しかぁし! かたや、この春頃より市場で大人気店のバルド氏。かたや冬頃より城下町を中心に店を構えたにも関わらず、今や複数の店舗を持つにまでなった大々人気店のガンドル氏――これは、フェスの大きな目玉になるでしょう。集客効果もバッチシです」


 大げさに両手を広げるラビラビ。

 周りにいる他の店主達も、徐々に集まりだした。

 

「そうだ。オレ達は一番客が多くなると予想される中央辺りに屋台を構える事になるだろう。そこで、どっちの屋台の売り上げが高いか勝負だッ!」

「フェスが盛り上がれば、国王様や王子様も満足間違い無し。せっかくですので、お二人の対決を宣伝してもよろしいですか?」

「もちろんだ。異論は無いな、バルド」

「お、おう……」


 いきなりの出来事に、生返事しか出来ない大将(バルド)であった――。


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