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13話 冒険者とダンジョン鍋を食べる3

 

 宝箱と各種素材などを回収し、一同はダンジョンのキャンプ地へと戻ってきていた。

 

「ふんふんふーん」


 鼻歌を歌いながら、リーエンは砕いた石像の魔物(ガーゴイル)で即席カマドを作り、その上に鍋代わりのモズクカニの甲羅を乗せ、魔法で水を出して火にかける。

 さらに俺が持って来ていた紙パック入りの日本酒も中身を鍋へ投入する。

 日本酒は旨味のある調味料として優秀で、スープの出汁として使う。


 次に具材の準備。


 ダンジョン内に生えていた木の根の皮を剥き、一口大に切る。

 水筒に入れてあったスライムの亡骸を絞り、水分とゼラチン質の肉体に分ける。肉体の方は細切りにして鍋に入れる。

 人食い草の濃い緑色の葉を刻む。これが若い色だと生で食べられるらしい。


 レイゼンは事前にコカトリスを逆さに吊るして首と斬り、血抜きをしていたモノを捌く。

 尻尾の蛇も切り取ったら、頭を落として皮を剥ぎ、内臓を抜くと適当な大きさに切る。

 捌いて鳥肉の形になったら1口サイズに切る。

 モズクカニの脚を食べやすい大きさに切り――これらの具材を鍋へ投入する。


 カニの上半分の甲羅をフタ代わりにして乗せ、しばらく煮えるのを待ち――。


「ダンジョン鍋、完成したヨ!」


 リーエンが甲羅を取ると――様々な香りが渾然一体となった湯気と匂いが辺りに解き放たれる。


 くぅぅ――。


 扉の近くで警戒していたレイゼンの可愛らしい腹の虫が鳴る。


「で、出来たようね」

「いっぱいあるから、いっぱい食べるネ」

 

 レイゼンは少し恥ずかしそうにこちらへ来る。

 リーエンがお玉で鍋の中身をすくい、器へ取り分けてくれる。


「あっ、すいません」


 全員に行き渡った所で、リーエンが掛け声をする。


「よしそれじゃあ――」

「いただきます」

「頂くわ」


 大き目の器の中には、赤くなったカニの身、細切りになったスライム、色が抜けて白菜のようになった葉っぱや鳥肉などが具だくさんに入っている。

 これにスライムの水分の部分を少し入れる――柑橘系に近い香りがする。なるほど。だから※ス()()()なのか。(※所説あります)


「ズズッ――」


 まずはスープを飲む。

 カニの甲羅や身で煮たので、出汁の味は完璧だ。

 カニそのものはダンジョン住みの影響か磯のような匂いはせず、どっちかと言えばウリなどの匂いに近い気がするので不思議な感覚だ。

 

「さて、カニの身を解して……」


 口の中に入れた赤白い身は、割としっかり煮たにも関わらず、しっかりと味が残っていた。

 ゴボウみたいな木の根もよく煮えてホクホクとしている。

 カニ、ゴボウ、葉っぱも特有の苦みなどがあまり無いのは、一緒に煮たスライムの影響だろうか。

 気付けば器の中身を全て食べ切り、顔を上げた。

 

「嗚呼――美味い」

「これホントに美味いネ! こういうダンジョン鍋は攻略者の特権ヨ!」

「ふー、ふー……はむ……うん、美味しい」

 

 レイゼンは1口毎に冷まして食べているが、鳥肉を頬張る顔は本当に美味しそうだ。


 「……猫舌なのよ」


 特に何も言っては無いのだが、恥ずかしそうに顔を背けて食べている。


「さぁ、まだまだお代わりはたくさんあるネー!」


    ■◇■◇■◇■◇■◇■◇■ 



「ふぅ――さすがにお腹いっぱいです」

「私も……こんなに食べたのいつぶりかしら」

「後片付けも終わったし、しばらく休んだら帰り支度するネ」


 荷物をまとめているリーエンには聞こえないよう、レイゼンが近くに寄ってきた。


「今日の事はお礼を言っておくけど……リーエンの事は渡さないから」


 それだけ言うと、荷物をまとめているリーエンを手伝うべく、彼女の下へと寄って行った。


「……なんの話だ」


「そういえば宝箱の中身、アレなんだったの」

「この“お玉”ネー。古代ドワーフが造ったとされるアダマンタイト製ヨ。これでフライパンを叩けば、眠ってる者なら死者だろうが目覚めるという逸話があるネ」

「そうなんだ」

 

 嬉しそうにしているリーエンと、それを微笑みながら聞いていりレイゼンを見て――俺は首を傾げていた。


※レーザーポインターを目に当てる行為は非常に危険です。絶対行ってはいけませんのでご注意ください。


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