シーズン2 ープロローグー(前準備)
”願い”の鍵、その本当の名は「欲望の鍵」と言います。
人は誰しも、心の奥底には欲望で溢れているのです。
欲望――という言葉でマイナスなイメージがあるかもしませんが、それは誤解です。
友人に会いたい、美味しいモノを食べたい、誰かを助けたい――。
それもまた欲望の1つの形。
その欲望を叶える手助けが、私の仕事です。
「ふーん。で、この白い鍵を使えば、わたしの欲望。つまり願いが叶うって事なの?」
小柄な女性は“白い鍵”を摘まみながら、魔女のコスプレをした女に問いかける。
「はい。この鍵を使えば出来うる限り、最良の方法で願いを叶える事ができます」
その話を聞いて、疑いの目を魔女へ向ける。
「……それ、アンタになんのメリットがあるの? というか仕事って、誰に報酬貰ってんのさ」
「それは禁則事項ですのでお答えかねます――試してみて、合わなければ捨てて貰っても構いませんので」
少しの沈黙の後、彼女はこう聞いた。
「……使ったら100万円請求来たりしない?」
「しません」
「クレジットカードの情報、ぶっこ抜かれたりしない?」
「しません」
キッパリと断言する魔女に、女性も少し鍵の事が気になりだした。
「……じゃあ、まぁ最初の1回だけ、ね」
「ありがとうございます。あ、この地域の担当が『メゾン=フローラル』というアパートの103号室に住んでいますので、何かお困りの点がありましたら、こちらの電話番号に御掛け下さい。サポートも行っておりますので」
丁寧に電話番号の書いた名刺のようなカードを差し出してくる。
それを受け取り、女性は再度問いかける。
「――で、アンタ達は結局なんなのさ」
「それも、禁則事項です」
魔女はニッコリと微笑みながら、人差し指を口元に当てるのであった。
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