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9話 日本でカツ丼を食べる1

 

 路地裏に通じていた扉から出て、少し周りを見渡す。

 一応警戒はしていたが、いきなり刺客の集団に襲われるような事は無いようだ。

 

「ここがニホンと言う人類種の国か」


 魔法で生み出した姿見(すがたみ)で己の姿を確認する。

 牙やツノなどは目立つということで、変化魔法で人と変わらない姿にしてある。

 鎧も外してきた。今は魔獣の皮で出来た軽装な服にしてある。


「……確かに魔力が拡散するな」


 油断すれば体内にある魔力が外へ漏れ出ていく。

 どうやらこの世界には空気中はもちろん生物、《《食べ物》》にすら魔力が存在しないらしく、消耗してしまえば補給する手段が無いらしい。

 だから事前に服へ簡易的な結界を施してある。漏れ出る量を格段に減らせるというのはあのオーヤの言葉だ。

 帰る際には、この金色の鍵を使えばいいらしい。


「では少し、見て回るか」


 路地から出た俺は、まずその建物の大きさに感嘆をした。

 どれも砦クラスの大きさ。モノによれば城クラスもある。それに色合いは違うが同じ四角い建物、窓の大きさも均一。それがズラっと並んでいるのではないか。

 目の前の道もどうだ。我が魔王国では街道と城へ続く道のみ石畳で整備されているが、この国は違う。

 人が通る道には石畳を。それ以外の乗り物が通っている道には、なにか分からんが黒いモノで敷き詰めてある。

 さらに自然が乏しいのを補う為か、道と道の間には木が植えてある。こちらでも紅葉の季節なのか、赤茶けた木々が等間隔で並んでいる。

 

「なるほど。町造りの技術レベルでは、我が魔王国を大きく上回るというのか」


 魔族と人類種との戦いは長きに渡る。

 最早どういった経緯で始まった戦争なのかを説明できる者は殆ど死に、歴史書でのみ知る事ができる。

 しかしどの本でも、人間は無知で、愚かで、愚鈍で、魔族と比べて圧倒的に劣る下等種である――大概そう始まっている。

 その傲慢としか思えない魔族側の無配慮な言動や行動が、あるいは原因なのかもしれない。


「俺は、人間を知るべきだ」


 そう思い悩んでいた所に、オーヤがやってきたのだ。

 彼女の薦めで、この願いの鍵を受け取った。

 これは使用者の“願い”を昇華できる場所へ繋げる魔法の鍵だという。

 正直そういった魔法は、魔王である俺でさえ聞いた事が無い。彼女はどうやってこの鍵を手に入れたのだろうか。

 しかし、彼女について詮索するのは後にするとしよう。


「少し腹が空いたな」


 朝から夕方までずっと執務室で仕事をして、休憩中であったのだ。

 オーヤから渡されたもう1枚の紙――これがこの国で言う貨幣らしい。

 金貨や銀貨と違い、これなら持ち歩いてもかさばらないが……ただの紙切れだというのに、貨幣価値はどうなっているのか興味が尽きない。

 しかも空に掲げると、人物の顔が浮いてくるではないか。他にも幾何学模様が入っている。これを国内で流通させるほど大量生産するには手先が器用な種族……例えばドワーフを1000人集めても足りないだろう。



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