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7話 異世界で屋台飯を食べる2



「おっ、兄ちゃん見ない顔だね」

「私ですか?」


 祭りに混ざってみようと入口にある鳥居にもよく似た門に来た所で、門の側にあった屋台の店主に呼び止められた。

 自分よりそれなりに年上の恰幅(かっぷく)の良い男だ。

 この屋台は、色々なお面を売っているようだ。


「当然よ。ここの祭りに参加したかったら、これ付けてないといかんからな」


 店主は後ろに釣るしてあるお面を指差した。


 お面は色々と種類がある。列によって区分されているようだ。

 犬、猫、キツネなどの動物もの。

 ゴブリン、オーク、オーガ、獣人(動物ものとの違いが分からない)の亜人種もの。

 あと知らない人物のお面などもあるが、有名人なのだろうか。

 

 買う事を渋る訳ではないが、興味本位で聞いてみる。


「そういう決まりなんですか?」

「おうよ。みんな自分の家で作って来るんだが、兄ちゃんみたいに外から来た人がたまーに何も知らずに参加しようとするから、オレっちが親切に声を掛けてやっている訳だ」

 

 へへっと笑う店主はどこかちょっと子供っぽくもあった。

 お面を被る祭り。外国なら仮面舞踏会のようなものだろうか。

 あれは個人や身分を隠して行う貴族の嗜み(たしな)みたいなものだが――。


「……例えば、お面をせずに参加したらどうなるんですか?」

「神に(さら)われる――」


 今までのおちゃらけた物言いとは裏腹に、低めのトーンの店主に思わず息を飲む。

 しかしその雰囲気も一瞬だけで、


「――という言い伝えがあるってだけさ。まぁ折角なんで兄ちゃんもこれ付けて参加していきなよ」

「では……」


 俺は適当に犬のお面を買うと、顔に被ってから門をくぐり、中へと入る。


「兄ちゃん、最後にひとつだけ――子供に敷地の外へ誘われても、絶対行っちゃならねぇぞ」

「あっ、はい……」


 その店主の言葉に引っ掛かりを覚えるが、折角来たのだから飯を楽しみたいので、すぐ記憶の奥へと追いやったのだった。


 ◇◆◇


「日本のと、やはりどこか似ているな」


 例えば参拝客の多い神社には、簡易的なテントだけでなくプレハブ小屋みたいな屋台が並ぶ。

 ここも木と板を組み合わせた即席小屋みたいな屋台が並んでいた。

 歩いていると、カラフルな暖簾(のれん)やのぼりに料理名が書かれている。


 マンドレイク汁、焼きテンタクルス、禁断の木の実飴、雲菓子、スライム釣りなど――商品はともかく雰囲気は日本のものによく似ている気がする。


「じゃあひとまず――この焼きテンタクルス下さい」


 食べたいモノが無い状態でも腹は空く。

 祭りだとどこか気分が高揚し、何かを試したくなるのは何故だろうか。


「はいよ。美味しくてほっぺ落としちゃわないようにな」

「どうも」


 ゴブリンのお面を付けた店主に、お金と引き換えに商品を渡される。

 薄い木の皿には、蛇行するように串に刺さった薄茶色の、バナナくらいの太さの触手のようなモノがこんがりと焼かれているものが乗っている。


「聞いた事のない食材だが――ふむ」


 先から食べてみるが、水分の多い焼き芋のような味わいだ。

 表面はカリカリとしているが中はねっとりとした感触で、甘さと少しの酸っぱさが同居している。


「なるほど。次行ってみましょうか」


 他にもいくつか屋台を回る。


 気になるモノを適当に買ってはトレイに載せていく。

 トレイの上にいくつかの商品が並んだので、最後に麦酒を買い、飲食できるスペースは無いかと少しウロついてみる――。


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