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7話 異世界で屋台飯を食べる1


 9月中旬――。


 まだまだ残暑はキツく、日が暮れてもそこまで気温の下がらない日々が続く。

 

「秋祭り、ですか」

「小学校のこじんまりとしたやつだけどね。PTAから屋台をやってくれないかと頼まれちゃってて……」


 今日は同僚と一緒に外回りをやった帰りだ。

 俺は今、人のまばらな駅のホームで樹脂製の椅子に腰掛けて、世間話をしている。


「かき氷とか、焼きそばとかです?」

「わたあめの機械をレンタルしたから、それをやって欲しいってさ。実はというと、昔からアレやってみたかったんだよな」

「たまに食べ放題のお店とかで、子供向けにやっている所ありますよね」

「そうそう。さすがに子供達に混じってやる訳にもいかないし……いや、でも練習しといた方がいいよな」


『7番ホームに列車が参ります。黄色い線の内側まで――』


 もう夕方に近い時間帯のせいで電車の中は、かなり人が多く話もそこまでになった。

 会社へ戻り、上司に報告して少しの事務仕事を終わらせると――すっかり日も暮れている。

 だがアスファルトに残った熱のせいか、少しも涼しさを感じない。

 

「……さて」


 後は帰るだけなのだが、今日は特に食べたい物が決まっていない。

 通りにある店もいくつか前を通って見るのだが、これといってピンと来ない。


(飯迷子状態か……)


 こういう時はたまにある。

 何か食べたいのに具体的なモノは浮かばない。

 かと言って、行った事の無い店にチャレンジしたいかと言われたら微妙だ。

 具体的に食べたい料理があるならそういう店に行くのもアリではある。しかし、今はそれすらも見つからない状態だ。


 故に、飯迷子状態。

 

「こういう気分の時に白い鍵を使うとどこへ出るんだろうか」


 少し試したくなったので、俺はいつものように路地に入り――扉に白い鍵を差し込む。

 扉を開けるとそこは、小高い丘の上だった。


「これは凄い」


 その小高い丘から見下ろせる所で、祭りをやっているようだ。

 開けた広い土地に、まるで迷路のように屋台の小屋が並び、人も多く溢れている。

 俺はその丘の近くの林に置いてある、物置小屋の扉から出てきたようだ。

 

「なんの祭りなんだろうか」


 さっき同僚と話した祭りが印象に強く残っていたのだろうか。

 ひとまず丘を下り、あの賑やかな場所へ行ってみる事にする。


 あるいは、飯迷子の解決の糸口になるかもしれない。


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