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サラリーマン、異世界で飯を食べる  作者: ゆめのマタグラ
シーズン3︰後輩と共に
127/153

29話 異世界への鍵を持つ者達18


 酒場の中は、過去一の盛り上がりを見せていた。


 巨大魔獣を倒した事により、逃げていた町の人達はここへ戻ってきていたのだ。

 逃げ出したところで帰る場所もない――マスターの言葉である。

 

「今日は俺の奢りだ。どんどん食べてくれ!」

「おぉー……ってカレーうどんかよ!」


 テーブルの上にはマスター得意のマモノカツ乗せカレーうどんや、備蓄してあったスナック菓子やレトルト食品などが並べられ、皆それをツマミにして自由気ままに酒を飲んでいる。

 

 ちなみに俺の姿は――元へと戻った。

 ただまぁその場で戻った訳なので――モナカには叫ばれ、アグリさんは目線を隠しながらスーツの切れ端を渡してくれた。

 ひとまず切れ端を腰に巻いていたのだが、この町に着いた時点で服を貸して貰った。

 カルロス少年もすぐにどこかへ飛んで行き――俺達はトラックに揺られ、あの本拠地である町へと戻って来たのだった。


「いやー。オレもどうなるかと思ってたけどオダナカ。いや、オダナカさんのおかげでなんとか命拾いしたみたいだな!」

「羽柴も――元気そうで何よりだな」

「あいつも捕まったけど……やっぱ死刑とかになったりするんだろうか」


 魔王を騙り魔獣をけしかけたり、捕虜を先導して破壊活動や強盗事件を行った主導者ともなれば――長い長い取り調べの後、投獄されその先は――。

 

「それは――」

「いや、言わなくていい。それもこれも全部、あいつの自業自得だからな」


 仲違いしたとはいえ、共に異世界へ来る事になり――短くない時間を共に過ごした元相棒だ。

 なんらかの思うところはあって当然だろう。


「このウナギって生き物、どうやって食えばいいだ!?」

「エビって奴も、これ食べて大丈夫なんです!?」

「おっ。ちょっと待ちな。オレがちょっと焼いてやるよ」


 ガンドルとアラン君が外で叫んでいるのを聞きつけ、羽柴は外へと出て行った。


「――私の対応が遅れて、申し訳ありませんでした」

「アグリさんは迅速に動いてくれました。そんな顔をしないでください」

「オダナカ殿……」

「というより、騎士団辞めて大丈夫だったんですか? お父さんのような立派な騎士になると、あれだけ言っていたのに」

「えぇ、それは大丈夫です――後でレオには怒られるでしょうけど……騎士団へは復職制度というのがあって――」


 ケガや病気、その他の都合などやむなく退職した騎士が、すぐにでも現職に復帰できるよう王子が作った制度らしい。

 その制度を使えば、色々と審査などに時間が掛かるが――1か月後くらいには復帰できるようだ。

 もちろん元の役職へは戻れないだろう――ここの捕虜達を助ける為とはいえ、無茶な事をやらせてしまいこちらとしても申し訳ない。


「騎士団長、だったんですね」

「言ってなかったですよね……まぁもう元団長ですけど」

「アグリさん――その、今回は本当に申し訳……」

「……」

「……ありがとうございました」

「いえ――ちゃんと約束通り、今度は私に付き合って町の料理屋さん、食べに行きましょうね!」

 

 あの手帳には、ここには魔王国との戦争で捕まっている捕虜達の町がある事。その捕虜が扇動され、魔王国で強盗行為などをやらされている事。

 あと、今回の一件が片付いたら、俺はアグリさんの言う事をなんでも聞く――そう書いておいたのだ。

 やはり彼女は騎士という立場から、ここの捕虜を見捨てるという事は出来なかったのだ――彼女の良心を利用したみたいで心苦しい。

 なので、こうして俺に出来る範囲でならなんでもやるつもりだ。


「もちろん。あっ、なんならみんなで――」

「……」

「じゃあモナカと――」

「……」

「――いえ、2人で食べに行きましょうか」

「はいっ!」


 先ほどからたまに無言の圧力を掛けてくるのだが、なんなんだろうか――。


 その疑問も――彼女が美味しそうにカレーを食べている姿を見ると、不思議と消えてなくなっていったのだった。


「よーし! ウナギの蒲焼っぽいものできたから、みんな取りに来てくれー!」

「モナカの姐さん! このエビってやつの汁、すげー美味いっすよ!」

 

 俺は“羽柴”との約束通り――ウナギなどの海産物を、たらふく食うのであった。


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