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Marginal Man  作者: 志藤天音
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NAOの理想

 「ナガちゃん、就職活動の方はどうだ? 順調?」

 「いやー、マイペースにやってますよ。一度決まってたところが流れてしまって……まあ、他にもツテはあるんで。ちょっと休みたいっていうのもありましたんで、ゆっくりやりますよ」

 「そうだな。最後の担当の生徒たちが卒業するまでは頑張って、それ以降はちょっと休んだ方がいいな。体調崩したら意味ないし……無理しないでゆっくりやりな」

 

 俺は今年度で退職するナガちゃんのことが心配だった。

 今まで一緒に活動を共にしてきた仲間が、一人で責任を負ってバンドを脱退し、退職までしてしまうのだから。

 ナガちゃんは本当にバンド活動に命をかけてきたんだ、というと言い過ぎかな。とにかく本気でやってきたんだということが、ナガちゃんの行動を見ているとわかる。


 ナガちゃん一人が抜けたからといって、新たにメンバーを加入させてまでバンドを続けることはないと俺たちは考えた。だから、バンドは解散する。俺たちは本業の教師に戻る。それだけだ。

 誰が欠けてもいけない。俺たち五人がマージナルマンなんだという信念をみんなが持っていたからね。


 でも、ナガちゃんがバンドにも渋学にも残ると言ってたらどうなっていたかな。

 例えば俺たちが定年退職した後も、バンド活動は続けていたかな。

 いや、結局どこかのタイミングでバンドは解散していただろうし、結局みんな教師として教壇に立っていただろう。

 以前シゲさんと飲みに行った時にそんな話をしたことがある。

 たぶん今のように両方とも本気でやってたら、体力が持たない。そんな話になったような気がする。まあ理由はどうであれ、遅かれ早かれバンドは解散していたんだと思う。


 シゲさんはあれからダンスグループを作って学園祭で踊ってる。にしやんとマエちゃんも参加して、特訓してた。まさか2年連続でやるとは思わなかったよ。今年はさすがにステージでは踊らなかったけど、この活動はいつまで続くんだろうか。

 リーダーの座は若手の先生に譲ったみたいだから、いずれ抜けるのかな。それともどんどんメンバーを増やしていって順番にリーダーを回していくのか? 

 割とこのグループの活動も評判が良いからな。もしかしたらこの先人数も増えて、これからもずっと踊り続けるかもしれないな。


 人の活動のことを気にしてるけど、俺はダンスグループに参加するつもりはないよ。まず、俺が踊れると思うか? 

 バンドでドラムを叩いているけど、俺はリズム感がない。本当に集中しないと演奏出来ないんだ。歌って踊ってステージを飛び回るにしやんは本当に凄いと思うよ。


 それで言うと、ナガちゃんは俺と似ているタイプだよな。ただ単にあまり人と関わらないっていうだけかもしれないけど、シゲさんやマエちゃんにしやんの三人はいつも一緒に行動するのに、俺とナガちゃんはそれぞれ単独行動だ。

 俺たちリズム隊の二人が静で、あとの三人が動だ。それほど性格が正反対なメンバーが今まで上手くやってきたのは、ある意味この性格の違いで調和が取れていたからだろうか。良い意味で化学反応が起きていたのかもしれないな。

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