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Marginal Man  作者: 志藤天音
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FST再び

 夏休みと言えば学園祭の準備。あれから一年。結構早かったな。またあのメンバーが再集結するんだ。


 「上田先生。今年のFSTのダンスはどの曲にしましょうか」

 塩谷くんが声をかけてきたのは新学期が始まってすぐのことだった。

 俺たちが去年披露したダンスがきっかけで、校内ではちょっとしたK-popブームが起こったのだ。あの時はK-popファンにしか知られていなかったグループも今や世界的に有名になってしまった。そんなグループのダンスを俺たちは練習して披露していたのだ。


 「もう最近出てるあの曲でいいんじゃないか? ヒットし過ぎて今年はどこの学校でも踊ってそうだけど」

 しかも今年は俺とにしやんが高三の担当だから、実際に舞台で踊らない。動画を撮ってスクリーンでの披露になる。だから何回もやり直しは出来るが、手を抜くことはない。

 本番で踊らない分、衣装にもこだわろうと提案される。


 「動画はどこで撮りましょうか。体育館でもいいですかね。衣装は、実際のミュージックビデオで着ているのに似せたりして用意しましょうか」

 「ああ、そしたら今年は塩谷くんに任せるよ。練習の段取りとか頼んだよ。日程が決まったらみんなに連絡してくれ。塩谷くんに合わせるから」

 こんな感じで意外にもやる気のある塩谷くんにお願いしてしまった。

 いつまでも俺が引っ張ってたらダメだもんな。いつかは塩谷くんたちも何かするのに後輩たちの手本になっていかなければならないもんな。俺がいるうちはいくらでも頼ってくれて構わないけど、こういうところから仕切っていってもらわないと。


 「そうですね、今年は上田先生たち受験生を担当してますもんね。井上とか大山たちと相談しながら進めます。決まったらまた連絡しますよ」

 「ああ、頼んだよ」


〜〜〜


 「シゲさん、俺たちFSTの活動も今年で最後かもしれませんよね」

 にしやんとマエちゃんと三人でカフェに寄った時にそんな話になった。

 「そうだなあ。ちょっといろいろ休まなきゃ……。今まで突っ走り過ぎたから……」


 ちょうど一年ぐらい前かな。去年の学園祭が終わった辺りで、俺とマツ先生の二人で理事長と校長に話をしに行ったんだ。

 そう。マージナルマンとして活動していたこと、そして本業にも支障が出るからバンドを解散しようと思っていること。全て話した。


 若者文化にそれほど詳しくない理事長たちに、マージナルマンの名前を出したところでピンと来てなかったようだけど、副業というイメージで伝わったんだと思う。

 顔出ししないでメディアに出ていたこと。日本のみならず海外でもライブツアーをしたこと。配信した曲がヒットして中高生を始めとした若者たちから支持されていることなど、ここ最近の活動報告もした。自分たちが思っていた以上の規模でファンが増えていったことにより、本業との両立が難しい状況だと説明した。


 「そうですか……とても残念ですが……」

 理事長がこう口を開いた時に、俺たちは職を失うのかと思った。

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