表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Marginal Man  作者: 志藤天音
68/105

ユウジの夢(3/4)

〜〜〜


 北京観光。まずは万里の長城へ。

 バスの車窓からは昨日に引き続き、漢字だらけの看板が目に入る。

 「ちょっと……ホントに面白すぎる……」

 生徒たちは笑って話が出来ないぐらい、ツボにハマってしまった。

 日本の企業の看板。ロゴと共に創業者の名前がデカデカと掲げられている。

 「石橋って……」

 有名なタイヤメーカーの看板を見た生徒たちがまた笑い転げている。本当に女子高生はよく笑う。


 そんなこんなで万里の長城に到着。

 写真でよく見る、青空の下に聳え立つイメージの万里の長城だったが、この日は雲の中だった。ガイドさんも、ここがこんなに曇ることなんてないのに、と驚いていた。

 何十年に一度の珍しい現象なんだろう。いつも前向きのにしやんは、こんな日に当たってラッキーだと生徒たちに話していた。


 山登りみたいに険しい道のりを歩いていたように思えた。でもそれは、制服にローファーだったからだ。何故ここを制服で歩かせるのかと生徒たちは文句を言いながら歩いていた。

 景色は見えないし寒いし。早く戻りたいという気持ちがだんだん大きくなり、最終的に一部の生徒たちは走り出してしまった。

 「危ないから! 走るな!」

 シゲが生徒たちを注意しながら追いかける。生徒たちに追いついて、他の生徒たちを一緒に待つことにした。


 「ホントに何も見えなかったね」「真っ白で一体どこに行ったんだかわかんなかった」「写真に何も写ってないよ」

 バスに戻った生徒たちは口々に話していた。


 次に向かったのは故宮博物院。かつて紫禁城と呼ばれた宮殿で、広大な面積を誇る世界遺産だ。

 「ラストエンペラーの話は去年マエちゃんの授業で習ったよね? 覚えてる?」

 「はい。なんか映画も観たような気がします。難しくて内容はよくわからなかったけど、この建物すごすぎる。映画の世界に入った感じ」

 授業の内容は覚えてなくても、実際に現地に行ってみてその場の空気に触れてみるだけでも違うはずだ。また、そこから興味を持って勉強し始める生徒もいるかもしれない。この修学旅行は、それを目的としているのだ。


 「シゲさんシゲさん! はい5.6.7.8!」

 いきなり走ってきて、急にカウントを取り始めて勝手に踊り出したにしやん。シゲはどうしていいかわからなかったが、とりあえずにしやんに合わせて踊った。

 「よし、いい感じですね。じゃあアングルはこんな感じで。音楽流しますから、それに合わせて一回踊ってみてください」

 「いきなりこんなところで?」

 「いいからいいから、サビだけで終わります」

 学園祭で披露する曲のサビ部分をかけて、シゲとにしやんは踊った。その様子をにしやんのクラスの生徒が撮影していた。

 ほんの数十秒の出来事だった。にしやんたちは撤収して、紫禁城の見学を続けた。

 「何だったんだ一体……」

 謎の時間に戸惑っていたシゲだった。


 その後は、あの有名な天安門広場に移動した。

 ここでは各自、自由に写真を撮って過ごしていた。

 そこでまた、にしやんと撮影係の生徒がシゲのところにやって来た。

 「シゲさん、今度はこの部分です」

 シゲとにしやんのソロパートをそれぞれ撮りたいという。

 とりあえず言われるがままに、音楽に合わせて踊っていたシゲ。

 「あ、わかった。編集するんだな。そうだとわかったら、もっと上手く踊ってたのに」

 「いいんです。それぐらい気を抜いてた方が、俺には都合がいい」

 どういう意味なんだと突っ込もうと思ったけど、にしやんを目立たせた方がいいかとそのまま言わせておいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ