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Marginal Man  作者: 志藤天音
63/105

track_8 Shout out

 新学期が始まってからのマエちゃんは元気が無かった。

 ナガちゃんが退職すると言い出したり、バンドの存続も危うくなったり、更には今年から軽音楽部の顧問も外れ、良いこと無しだ。

 「今年赴任してきた数学の塩谷くん。彼もずっとバンド活動してるんだって。だから彼が新しく軽音部の顧問になった。いいよなぁ、俺は今年から野球部の顧問になっちゃったし」

 「男子生徒が入ってきたから、部活も増えたよな。俺はバドミントン部からボクシング部になったよ。俺の場合はその方がよかった。経験者だから」

 「いいなぁ、にしやん。部活の顧問ってランダムに決められるから怖いよな。全くルールも知らない部活に当たっても拒否出来ないし」

 「シゲさんはずっとバスケ部だからいいですよね。そこはもう定着しちゃってるんですかね」

 「でも若い先生で経験者が入ってきたら、俺も他の部活に変わるんだろうな。俺の場合バスケ以外のことはわからないから、変わるとなったら厳しいだろうな」

 にしやん、マエちゃん、シゲの三人で話をしている。偶然にバンドの初期メンバーが職員室にいたのだ。


 「シゲさん、この前マツ先生と飲みに行ったんですか? 久々に俺たちも行きませんか?」

 「俺は構わないけど……お前たち、赤ちゃん生まれるのに大丈夫なのか? 奥さん大変だろ?」

 「俺たちの奥さん、揃って実家帰ってますから。今一人暮らしなんですよ。行きましょう!」


〜〜〜


 「……というわけさ。だから俺たちは、本業だってこんなに仕事の幅が広がってきたからさ、バンドは続けられない」

 「ですよね。俺が学生の時からやってる『レディオワン』だって、趣味の自己満だからここまで長く続けられたんですよね。好きでやってることとはいえ、それが仕事になっちゃうといろいろ負担が出てきちゃいますしね……」

 「良い夢見させてもらいましたよ。俺、昔からアイドルになりたいって思ってて、まさか大勢のファンの前で歌うようになるとは思ってもみなかったから。悔いはないです」


 「趣味というか、本当に内内でなら活動できるだろ? バンドとはまた別の話なんだが、君たちにも協力してもらいたいことがある」

 そう言ってシゲは、先日のスポーツフェスティバルで塩谷先生と井上先生に提案したことを改めて伝えた。


 学園祭の時に、先生たちでダンスを披露したいということだ。今、大人気のK-popアイドルのダンスをコピーするのはどうかとシゲが提案した。

 「うちの晴子が最近ハマっててね。練習動画っていうのも配信されてるんだよ。それを参考にして練習してみたらどうかな」

 「塩谷くんと井上くんと俺たちの五人ですか? それだと少なくないですか? せっかく教師枠を作るなら、もうちょっとまとまってやらないと」

 「そうなんだよ。だから、女性の先生たちにもそれとなく声かけてみたら、彼女たちはもう活動し始めててね。っていうか、女性教師だけのサークルがあったんだな」

 「そうですよ。うちの学年の本庄先生と大塚先生も入ってるらしいんですよね。毎年ギャラリーを借りて展示会もしてるらしいですよ。何て言ってましたっけ? ……デコ……なんとか」

 「デコパージュじゃなかった? 夏休みの自由研究ぐらいの感覚で一人一作品作るって聞いたよ。それを展示するんだって。だから俺たちも、部活で忙しいけど合間を縫って練習しよう」


 そして後日、塩谷先生たちに話をして了解を得た。メンバーを集めて回ったが、渋々引き受けてくれたのが数学の大山先生と、にしやんが無理矢理引っ張ってきた体育の浜田先生だった。

 この七人でダンスの特訓をする。


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