何故かマージナルマン
イギリス短期留学に同行しているにしやん。この時期はバンド活動も本腰を入れているのに、メンバーとは別行動になってしまった。
テレビやラジオの出演は、事前収録で対応してきた。問題は生放送やライブ中継。
夏ほどではないが、年度が変わるタイミングだったり、学生が休みの間はライブが多く開催される。いくつかのフェスにエントリーしてしまっているマージナルマンの出演はどうなってしまうのか。
イギリスに着いて、ロンドンのホテルの部屋に入ってから、にしやんはどこかにメールをしていた。また夕食後、各自解散になってからも誰かと連絡を取っていた。
翌日はロンドン観光の予定だ。にしやんはちょっと寝不足だが、時差ぼけということにしておいた。バンドのことは忘れて、ロンドンを満喫しようとしっかり切り替えた。
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学園祭の時のインドの民族衣装がやたら似合っていたにしやんだったが、多国籍の人が集まるロンドンの地でも、地元の人の中に溶け込んでいた。
「にしやん、あの人と何話してたの?」
「道聞かれた。けどよくわからなくて、謝っちゃったよ」
「いい感じで喋ってたから知り合いかと思った」
「俺、外国でよく道聞かれるんだよな。この顔のせいで。地元の人だと思われちゃうみたい」
外国人と親しげに話していたにしやんを見て、貴子が何を話していたのか尋ねた。
今後、こういう場面に何回か遭遇することになる。
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ロンドン観光をガールズと楽しむ。何度も写真を撮っているガールズに紛れて写真に写ってみたり、ガールズと一緒に博物館を回ったりした。
時には通訳になって、外国人に話しかけられているガールズの間に入ることもあった。
ランチはフィッシュ&チップスを食べに行く。地元では有名なチェーン店らしいが、外観からもちょっと良いレストランという感じがする。
各自席で飲み物を注文して待つ。自分のクラスの軽音楽部のガールズのテーブルに同席する。
「サーブされたらお礼を言うんだぞ」
店員さんがこの学生の団体に対して忙しなく動いてくれてるのを見て、ガールズに声をかける。
このテーブルには若くて爽やかなイケメンが担当してくれているからか、一生懸命挨拶しているガールズ。一言お礼するだけで盛り上がる。さすが女子高生だ。
「エミーとゆかりん、早く食べないと下げられちゃうぞ」
特に盛り上がってる二人に注意する。イケメン店員と一瞬目が合って苦笑いされたからだ。
「ガールズが興奮してしまって、騒がしくてすみません。とても美味しいですね」
愛想笑いを浮かべながらイケメンに声をかけた。
「いや、可愛いガールズだね。楽しいランチタイムを」
さっきのは苦笑いではなくて、微笑みだったのか。今回はとびきりの笑顔で答えてくれた。嫌な感じではなかったようだ。彼は性格までイケメンだな。
さらにはデザートのバニラアイスに、我々のテーブルだけチョコがトッピングされていた。
「おお、このテーブルだけじゃん。サンキュー言いまくってたからサービスされたんだな」
そう声をかけると、ガールズは更に大きな声でイケメンにサンキューを言っていた。自分もお礼を言うと、「楽しい時間をありがとう。良い旅を」と俺にウインクした。
あんなに大騒ぎして迷惑ではなかったのか、それとも大人の対応をしてくれたのか。いずれにせよ、とても良い時間を過ごせた。ガールズにも将来こんなふうにスマートに対応出来る大人になってもらいたいな。




