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Marginal Man  作者: 志藤天音
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ラストライブ(3/4)

 次はHIRO作詞の『songbird』『Sunday morning』をユウジは伸びのある声で歌った。

 その次は、『To be with you』と『live together』を続けて歌った。


シゲ

 「俺たちが知られるようになったのは、おそらく若者に共感されるような熱いメッセージが込められたような曲を発表してからだと思う。だけど、こんな愛のメッセージを歌うこともあるんだ」

NAO

 「俺たちは解散してしまうけど、俺たちが作った曲はずっと残るから。最近俺たちを知ったっていう人たちも、ずっと応援してきてくれた人たちも、これからも曲を聴き続けてくれ」


シゲ

 「じゃ、俺たちといえばこの曲かな」

 そう言って『FIRE』と『wake up』を続けて演奏した。

 会場は一気に盛り上がり、大合唱となった。


シゲ

 「俺たちは……教師をしながらバンド活動をしてきた。本当にただの趣味で、人に聴かせるなんてことも考えてなかった。だけど、一度だけ配信してみようと試しにこの次にやる曲を上げたら、見てくれる人がたくさんいたんだ。それで、次も、また次もって続けていたら、こんなにたくさんの観客を呼べるバンドになった」

NAO

 「俺たちの音楽を聴いてくれる人たちの中で一番多いのが、中高生の層だ。これは、俺たちが教師として中高生と接しているからだと思う。いつも生徒たちに寄り添ってきて良かったと心から思うよ。辛いことも多いけど、教師になって良かった」

 そして演奏したのが、配信で初めて世の中に出した『マイホームタウン』という曲。シゲの生まれ故郷のことを思って書いた曲だ。高校生までそこで暮らしていたこと、あの時抱いていた夢、大人になってから地元の仲間たちに再会した時のことが綴られている。

 その次は、『ロックスター』を披露した。もしも自分がロックスターだったらという妄想を書いた曲だ。


 「今日だけは俺たちをロックスターにしてくれー!」

 シゲがそう叫ぶと会場から割れんばかりの歓声や拍手が響いた。


NAO

 「とうとうこのライブも終わりが近づいてきている。まだ喋ってないメンバーもいるから、一人ずつ挨拶しよう」

 

サトル

 「まだ夢の中にいるみたいです。今俺たちが立っている場所も、ここから見える景色も。信じられないぐらい綺麗だ。俺、生きてるよな? 天国じゃないよな? 俺はこの景色を一生忘れません。最高の景色をありがとう」

HIRO

 「俺は……俺は……」

シゲ

 「泣いてんのか、HIRO。おい、泣いてるぞ。一番クールなHIROが」

HIRO

 「いろんなことがあったから……、辛いことも……。本当は続けたいよ俺だって。だけど、この方法が俺たちにはベストなんだって決めたから……。みんな、今まで本当にありがとう。俺も今日のことは忘れない。みんなも今日のこと、一生の思い出にして欲しい」

ユウジ

 「……ぐすっ……あー、やばい……。もらい泣きしちゃったじゃんかよー。……えー……、俺は昔からアイドルになりたかった。だけど、まあいろいろあって結局は教師になったんだ。意外なことに、アイドルの夢は学園祭で踊ったことで少し叶ったかな。本当にやりたいことと、実際出来ることが一致する人はごく少数だと思う。だけど、今いる場所で何が出来るか判断して動けば、ちょっと夢に近づけるかな。だって俺はアイドルにも教師にも、そしてドーム公演出来るバンドマンにもなれたんだ。本当に、今まで応援してくれてありがとう。みんなの夢も叶うように、俺も応援してるよ」

シゲ

 「ユウジが長いこと話してくれたから、俺はもう短めに。……みんな、ありがとう!」

NAO

 「おー、シゲさんも声量が……。えー、俺たちは普段、スーツを着て生徒たちの前で担当教科を指導してます。本当にここまで大きなバンドに育ててくれたみんなには、感謝の気持ちでいっぱいです。だけど、これ以上大きな活動は今後出来ない。そう判断して俺たちはこれから普通の教師に戻ることにした。だから今日は、今日だけは、最後まで俺たちを最高のバンドマンとして見ていて欲しい。本当にみんな、ありがとう」


 そして、『Marginal Man』を演奏して舞台を降りた。


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